【完結】あなたともう一度会えるまで

結城れい

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07 願い

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「んっ、あっ」
「アルコールのせいか、中も熱いね。いつもよりいいよ」
「ひっ……」

 お尻にペニスをいれられ、揺さぶられるまではいつもと同じだった。
 ただ、酔っているからなのか、2人で来ているからなのか、いつもと違うことをしたくなったようで、だんだんと過激なものになっていった。

「もう少しお酒飲ませようか」
「そうだね。はい飲んでー。上がダメなら下から飲ませようかなー」
「ま、まってくださ……」

 ドクドクと口の中にお酒を注がれ、香月は必死に飲み干す。

「そういえば、一番しまるって噂のやつ試してみたかったんだよねー」

 そう言った後、男は香月の首に両手を添えて少しずつ絞めてきた。

「な、に」

 呼吸が苦しくなり、心臓がドクドクと激しく動く。
 まるで、耳元で鼓動が鳴り響いているようだ。

「――っ」

 首を絞めている男の手を引きはがそうと、両手で腕をつかみ必死にもがくが、香月の力ではビクともしない。
 どうしようもなく蹴とばそうとするが、足の間に体を入れられているため、うまく力が入らない。
 
「いやー、しまるね。いい感じ」

 涙で前がよく見えなくなる。
 こめかみが熱くなり、頭がボーっとして手足にまったく力が入らない。

 僕、死んじゃう。嫌だ。えい君――


 ――死を覚悟した次の瞬間、男の手が首から外され空気が入ってきた。
 慌てて空気を吸おうとしたせいで失敗し、香月は咳き込んだ。うまく呼吸ができない。

「――はっ、はっ、げほ、うっ」
「ははは。もう一回いこうか」
「俺もしたい。変わってくれ」


 たすけて――――
 

 2人が満足して帰るころ、香月は指一本動かせないほど疲れ切っていた。
 床に倒れた状態で、窓の外を見ると大きな月が見えた。どこも欠けていない大きな満月だ。
 死を感じるほどの体験をしたことで、香月の中で何かが固まった。
 
 ――彼に会いたい。たとえ拒絶されたとしても、一目見てから死にたい。

 今まで自分の心を支え続けてくれた彼に、想像ではなく本物の彼に会いたかった。
 どうやって会えばいいのかも分からない。調べる方法すら香月は持ち合わせていない。名前で呼んでいたから、苗字も曖昧だ。それでも会いたかった。

 窓の外に浮かぶ満月に心の中で必死に祈る。
 
 ――どうか、彼に会わせてください
 
 それしか今の香月にできることはなかった。

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