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 次の日。スッキリした虎太郎とは裏腹に、蓮は寝不足のようだ。朝から眠そうに何度も欠伸をしている。
「寝れなかったんですか?」と聞いた虎太郎に対して、「今日の夜、話がある」と蓮が返してきた。結局、寝不足なのかどうかの返事は貰えなかった。

 今日の講義は2限目からだったが、レポートを仕上げたかったため1限目の時間に図書館に行くことにした。授業中なこともあり、比較的空いている。虎太郎は端のほうの席に座りノートパソコンを取り出した。レポートを書いていると、虎太郎の後ろ側に座っていた人達の話し声が聞こえてきた。

「彼氏から話があるって言われて、聞きに行ったら別れようって――」
「えー、急に!?」
「うん。ショック……」
「理由は? 聞いたの?」
「教えてくれなかったんだけど、たぶん別に好きな人が出来たんだと思う。この前、別の子と2人で歩いているの見かけたし――」

 どうやら女の子2人組のようだ。片方が彼氏に振られてしまった話をしている。盗み聞きは良くないと思いつつ、虎太郎はキーボードを打つ手を止めて聞いてしまった。

『話がある』と今朝、蓮に言われた。

 思い返すと、真剣な顔をしていたような気もする。それに寝不足なのか欠伸をしていた。色々考えて昨夜眠れなかったのかもしれない。昨日いい雰囲気の時に笑ってしまったことがそんなに嫌なことだったのか、と虎太郎は絶望に包まれた。
 いや、この前も虎太郎が勝手に勘違いして、突っ走ってしまったことがあった。一度落ち着くために目を閉じて深呼吸する。

 昨夜、蓮は『もう少し進もうか』と言っていた。
 進むとは、大人なキスの先に進むということだろう。お互いのアレを一緒に合わせて擦ったのがその先だと思っていたが、もしかしたらその他にあったのだろうか。昨日のことを思い出してしまい、赤面してしまった虎太郎は振り払うように首を振った。

 もしかしたら、お尻を舐めあうことだったのかもしれない。
 虎太郎が知らなかっただけで、人も犬と同じように舐めあって気持ちを確かめあうことがあるのだろうか。過去に経験がない虎太郎は推測しかできずに唸っていた。そんな虎太郎の目に、開きっぱなしのノートパソコンが目に入る。

――そうだ、調べればいいのだ

 早速ブラウザを立ち上げて、『男同士 恋人 キスの先』と入力して検索をかける。表示されたものを上から開いて読んでいった。

 しばらく読み進めていた虎太郎は、慌ててパソコンを閉じた。深く息を吸って、吐いてを繰り返す。驚きで声が出るかと思った。
 このまま読み続けていくと、動揺してこの場でポメラニアンになってしまうかもしれない。そのため、帰ってから読もうと決めた。
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