【完結】虎太郎君はポメラニアン!

結城れい

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55 楽しいプール?

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 ドッグランにやってきた虎太郎は驚いた。

「ワン!(プールだ!)」

 今日は気温が高い。どうやらプールが開放されているようで、たくさんの犬が入って遊んでいる。虎太郎も早く入りたくて、リードを引いている蓮をグイグイとプールの方へ引っ張る。

「ちょっと待て、タオル持って来てないな」

 虎太郎は勢いよく蓮を振り返った。確かに、プールに入れるなんてドッグランに来るまで知らなかった。当然何も準備してきていない。今から家まで戻ってタオルを持ってこないといけないことは頭では分かっているが、目の前で次々とプールに入っていく犬たちを見た虎太郎は我慢できずに、その場でチャチャッと足踏みをしてクルクルと回る。

「落ち着け。あそこの売店で購入できそうだから行くぞ」

 落ち着きがなくなった虎太郎を抱き上げた蓮は、奥のほうに設置されていた売店まで行き、タオルを購入した。その間、虎太郎はプールが気になりすぎて目線でずっと追っていた。

「よし! いいぞ」

 許可が出た瞬間、虎太郎はプールへ向かって走り出した。メインのプールには片側に枠がなく、海のように少しずつ水に入っていくことができる。水際まで来た虎太郎は一度止まり、恐る恐る前足で水を触る。冷たくて、気持ちがいい。
 一度後ろを振り返り、蓮のいる場所を確認した虎太郎は、プールに入っていった。

 水を蹴とばしながら駆ける。お腹の毛が濡れる深さまで進み、虎太郎は近くにいたチワワに突撃していった。挨拶をして、お尻の匂いをフンフンとお互いに嗅ぎ合う。そのまま、水深が浅い場所で追いかけっこを始めた。

 近くにいた他の小型犬とも、フンフンとお互いの匂いを嗅ぎあって、遊んでいく。
 しばらく遊んだ後、大型犬たちがプールの奥に設置されている飛び込み台のようになっている場所から、勢いよくプールに飛び込んで泳いでいるのが見えた。
 気になった虎太郎は一度プールから出て、体についた水をプルプルと振って吹き飛ばす。その後、プールの外側を回って飛び込み台のほうへと向かった。

 少し高くなっている場所から、次々と犬たちが飛び込んでいく。水しぶきが高く上がる。楽しそうに見えて、虎太郎はみんなの後に続いてプールに飛び込んだ。

「ワフー(わーい)」

 水しぶきを上げて虎太郎の体がプールに沈む。奥のほうは深くなっていたようで、虎太郎の足はプールの底につかない。
 泳ごうとした虎太郎は、そこでとんでもないことに気がついた。
 犬ってどうやって泳ぐんだろう――

 虎太郎は今までポメラニアンの姿で泳いだことがなかった。もちろん、人の姿では泳いだことがあるし、泳ぎは得意なほうだ。ただ、今の体ではクロールや平泳ぎなんてできるはずもない。足の向き的にバタ足だってできない。
 虎太郎は慌てて、四つ足で懸命に水を蹴った。何とか水面まで浮かんでこれたが、前に進むことができない。どちらの方向に進めばいいかも分からない。このままでは、力尽きて溺れてしまう。

「キュ、ワッ(た、だずげで)」

 助けを呼ぶために吠えようとしたが、水を飲んでしまった。パニックになった虎太郎は四つ足をバタバタと必死に動かす。
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