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51 でぃーぷきす!

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「虎太郎、そろそろ寝るぞ」
「はーい」

 最近では虎太郎も慣れてきたので、寝るときには人の姿のままだ。一緒に寝ると、お互いに抱き合うことができる。虎太郎は、ドキドキするが安心できるこの寝方がとても好きだ。

 今日もいつものように一緒にベッドに上がり、横になる。
 だた、1つだけいつもと違うことがあった。寝る前にはおやすみのキスをするが、そのキスがいつもと違ったのだ。

 唇と唇が合わさった後、虎太郎がいつものように離れようとすると、蓮が虎太郎の後頭部を押さえて、そのまま続けてきた。

「――んんっ」

 虎太郎が驚いているうちに、蓮の舌が虎太郎の唇を割って口の中まで入ってくる。そのまま蓮の舌が虎太郎の口内を探ってきた。虎太郎は必死に蓮の服を掴み耐える。今まで感じたことのない感触に、自分の舌をどうすればいいのか分からなかった虎太郎は固まるしかなかった。
 しばらくの間固まっていたが、息が苦しくなってきたため虎太郎は蓮の胸を叩いて伝える。

 虎太郎の訴えに蓮が、ようやく舌の動きを止めた。最後に虎太郎の下唇を軽く噛んで離れていく。

「――はっ、い、息が」

 ようやく呼吸ができた虎太郎は大きく息を吸った。まるで運動をした後のように心臓がバクバクと音を立てている。

「鼻で息をするんだよ」

 息を乱していない蓮が、虎太郎の鼻をつまみながら教えてくるが、虎太郎は息を整えることに必死でそれどころではなかった。
 蓮は虎太郎の頭をなでた後、「先に寝てな」と虎太郎に布団をかけなおして寝室から出て行った。

 キスにこんなに激しいものがあったなんて。落ち着いてきた虎太郎は、今さらながら恥ずかしくなった。蓮の舌が虎太郎の口の中で好き勝手に動いていた。まるで虎太郎の口内の形を探っているかのようだった。
 虎太郎も蓮に対して同じようにしなければならなかったのだろうか。思い返してみても、どんな風にされていたのか、よく覚えていない。口を両手で抑えた虎太郎は、先程蓮に教えてもらったように鼻で息をした。蓮の顔があれほど近くにあると、虎太郎の鼻息がかかってしまうかもしれない、そう思った虎太郎は少しずつ鼻で息を吸って少しずつ出す練習を開始した。

 布団を被って練習をしていると寝室のドアが開く音がしたため、虎太郎は急いで布団から頭を出した。

「起きてたか」

 虎太郎が布団の端をめくると、隣に蓮が入ってくる。

「さっきの凄かったですね」
「ああ、ディープキスな」
「でぃーぷきす。僕、全然上手くできませんでした」
「練習すれば、そのうち慣れるさ」
「はい」

 抱きしめられた虎太郎は、蓮の胸元に顔を埋めて寝る体勢に落ち着いた。

「……なあ」
「なんですか?」
「お前って、自慰とかしたことあるのか?」
「――え、もちろんありますよ! 僕だって男ですから」
「そっか」
「え、なんでですか?」
「いや、確認しときたかっただけだ」

 一体蓮が何を確認したかったのか、よく分からなかった。ただ、何か考え込んでいる様子だったため、虎太郎は蓮の腕の中で大人しく眠った。
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