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40 犬の散歩でお話大作戦!
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今日は名付けて『犬の散歩でお話大作戦』の決行日だ。
作戦の内容はとても簡単だ。蓮にポメラニアンになった虎太郎を連れて散歩してもらい、その途中であった人と話をしていくというものだ。
今日の作戦が上手くいけば、今後継続して行うことになっている。
気合を入れた虎太郎は、いつものお気に入りの黒いスカーフを纏い、ハーネスとリードを装着して、蓮と一緒にマンションを出発した。先日のドッグランでの事件で、お気に入りのスカーフが高いものだと知ったため、虎太郎はつけ続けていいものかと悩んでいたが、既に汚れているし、蓮も気にするなと言ってくれたため、今日もつけている。
作戦実行のコースは、ドッグランのあった公園だ。
この前の『ポメの会』の時の女性がいた場合は、急いで帰宅する手筈となっている。虎太郎も、まだデカポメの大福には勝てない。
マンションを出て、公園へと向かう。
公園の入り口に差し掛かったところで、虎太郎は蓮を振り返った。蓮は今日も黒ずくめだ。黒のキャップにサングラスをしている。服も真っ黒だ。虎太郎も黒のスカーフをつけているのでお揃いのようでちょっと嬉しい。
優しそうな人に話しかけに行くという重要な役目があるため、虎太郎は気合を入れ公園内に足を踏み入れた。
公園は広く、入り口近くに設置されていた案内の地図に、『犬のお散歩コース』というものが書かれていたため、その道を選びズンズンと進む。
しばらく進むと、前からチワワを連れた老人がやってきた。虎太郎は飼い主の顔をじっと見つめる。優しそうな顔だと判断した虎太郎は、近づいて元気に挨拶をした。
「ワン(おじいさん、こんにちは)」
虎太郎の鳴き声に反応しこちらを見た老人は、にっこりと笑いかけてくれた。虎太郎は蓮を連れてその老人にさらに近寄り、チワワとも挨拶を交わす。その間に老人が蓮に話しかけてきた。
「こんにちは。いい天気ですね」
「ええ、そうですね。散歩日和です」
2人の会話を聞きながら、虎太郎はチワワと遊ぶ。ある程度世間話が終わったところで、
虎太郎は次に進むため、リードを引っ張った。
優しそうな人を見極めて、虎太郎は積極的に話しかけに行く。『犬のお散歩コース』を歩いているので、犬を連れている人とすれ違う事が多い。優しい人が連れている犬は飼い主に似て優しい犬ばかりなので、虎太郎も楽しく遊ぶことができた。
数人と問題なく会話を行えている蓮を見て、虎太郎は安心してドンドン進んで行く。
次に見つけたのは、ゴールデンレトリバーを連れた若い男の人だ。犬と一緒に走っているのか、スポーツウエアを着ている。今は休憩しているのか、道の端で立ち止まっていた。
ジッと顔を見つめると、怖そうな人ではなさそうだ。よく見ると背も高くイケメンなお兄さんだ。もちろん蓮には敵わないが。
虎太郎は近づいて行き声をかけた。
「ワン(こんにちは)」
「お、ポメラニアンか」
男は蓮に挨拶をしたあと、しゃがんで虎太郎の頭を撫でてきた。慣れている感じで撫でられ、気持ちよくなった虎太郎はその場にコロンと寝転んでお腹を見せた。
「いやー、小型犬、小さくてかわいいな」
ほど良い力強さで豪快に撫でられて、虎太郎は大満足だ。きっと男は長年、犬を飼っているのだろう。慣れた手つきであちこちを撫でられ、虎太郎は気持ちよすぎて溶けそうだ。
しばらく撫でた後、男は虎太郎にも手を振ってゴールデンレトリバーと走り去っていった。
余韻に浸って寝ころんだままだった虎太郎は、蓮からの視線を感じて顔をそちらに向けると、不機嫌そうに眉をよせた蓮の顔が見える。
「ワフ?(ん?)」
「お前……随分と気持ちよさそうだったな」
「ワン!(うん!)」
頷いて返事をした虎太郎を見下ろした蓮は、しゃがんで虎太郎を無言で撫で始めた。
先ほど男に撫でてもらった場所を、同じような力加減で撫でられて、虎太郎は嬉しくて寝ころんだ状態のまま尻尾を千切れんばかりに動かした。
やはり蓮に撫でてもらうのが一番だ。
作戦の内容はとても簡単だ。蓮にポメラニアンになった虎太郎を連れて散歩してもらい、その途中であった人と話をしていくというものだ。
今日の作戦が上手くいけば、今後継続して行うことになっている。
気合を入れた虎太郎は、いつものお気に入りの黒いスカーフを纏い、ハーネスとリードを装着して、蓮と一緒にマンションを出発した。先日のドッグランでの事件で、お気に入りのスカーフが高いものだと知ったため、虎太郎はつけ続けていいものかと悩んでいたが、既に汚れているし、蓮も気にするなと言ってくれたため、今日もつけている。
作戦実行のコースは、ドッグランのあった公園だ。
この前の『ポメの会』の時の女性がいた場合は、急いで帰宅する手筈となっている。虎太郎も、まだデカポメの大福には勝てない。
マンションを出て、公園へと向かう。
公園の入り口に差し掛かったところで、虎太郎は蓮を振り返った。蓮は今日も黒ずくめだ。黒のキャップにサングラスをしている。服も真っ黒だ。虎太郎も黒のスカーフをつけているのでお揃いのようでちょっと嬉しい。
優しそうな人に話しかけに行くという重要な役目があるため、虎太郎は気合を入れ公園内に足を踏み入れた。
公園は広く、入り口近くに設置されていた案内の地図に、『犬のお散歩コース』というものが書かれていたため、その道を選びズンズンと進む。
しばらく進むと、前からチワワを連れた老人がやってきた。虎太郎は飼い主の顔をじっと見つめる。優しそうな顔だと判断した虎太郎は、近づいて元気に挨拶をした。
「ワン(おじいさん、こんにちは)」
虎太郎の鳴き声に反応しこちらを見た老人は、にっこりと笑いかけてくれた。虎太郎は蓮を連れてその老人にさらに近寄り、チワワとも挨拶を交わす。その間に老人が蓮に話しかけてきた。
「こんにちは。いい天気ですね」
「ええ、そうですね。散歩日和です」
2人の会話を聞きながら、虎太郎はチワワと遊ぶ。ある程度世間話が終わったところで、
虎太郎は次に進むため、リードを引っ張った。
優しそうな人を見極めて、虎太郎は積極的に話しかけに行く。『犬のお散歩コース』を歩いているので、犬を連れている人とすれ違う事が多い。優しい人が連れている犬は飼い主に似て優しい犬ばかりなので、虎太郎も楽しく遊ぶことができた。
数人と問題なく会話を行えている蓮を見て、虎太郎は安心してドンドン進んで行く。
次に見つけたのは、ゴールデンレトリバーを連れた若い男の人だ。犬と一緒に走っているのか、スポーツウエアを着ている。今は休憩しているのか、道の端で立ち止まっていた。
ジッと顔を見つめると、怖そうな人ではなさそうだ。よく見ると背も高くイケメンなお兄さんだ。もちろん蓮には敵わないが。
虎太郎は近づいて行き声をかけた。
「ワン(こんにちは)」
「お、ポメラニアンか」
男は蓮に挨拶をしたあと、しゃがんで虎太郎の頭を撫でてきた。慣れている感じで撫でられ、気持ちよくなった虎太郎はその場にコロンと寝転んでお腹を見せた。
「いやー、小型犬、小さくてかわいいな」
ほど良い力強さで豪快に撫でられて、虎太郎は大満足だ。きっと男は長年、犬を飼っているのだろう。慣れた手つきであちこちを撫でられ、虎太郎は気持ちよすぎて溶けそうだ。
しばらく撫でた後、男は虎太郎にも手を振ってゴールデンレトリバーと走り去っていった。
余韻に浸って寝ころんだままだった虎太郎は、蓮からの視線を感じて顔をそちらに向けると、不機嫌そうに眉をよせた蓮の顔が見える。
「ワフ?(ん?)」
「お前……随分と気持ちよさそうだったな」
「ワン!(うん!)」
頷いて返事をした虎太郎を見下ろした蓮は、しゃがんで虎太郎を無言で撫で始めた。
先ほど男に撫でてもらった場所を、同じような力加減で撫でられて、虎太郎は嬉しくて寝ころんだ状態のまま尻尾を千切れんばかりに動かした。
やはり蓮に撫でてもらうのが一番だ。
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