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36 デカポメとの戦い!
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しばらく遊んでいた虎太郎は、蓮が気になってきたため、居場所を探して歩きまわる。
蓮が端のほうに設置されているベンチに座っているのを発見した虎太郎は、安心して遊びに戻ろうと思ったが、蓮の近くに露出度の高い女性が立っているのに気が付いて、慌てて蓮のそばに駆けつけた。
近づいていくと、2人の会話が虎太郎の耳に入ってきた。
「――お兄さんって、あのモデルのRENじゃないですか? 最近犬を飼っているんじゃないかってファンの間で噂になってて。背も高いしスタイルもいいし、もしかしてって思ったんですけど、マスクとサングラス取って顔見せてもらえませんか?」
「……嫌に決まってんだろ。人違いだ」
「えー、口悪いのも、RENと一緒なんですね。本当に違うんですか?」
蓮はモデルの時も本名と読み方が同じ『REN』という名前で活動している。
蓮の正体がバレかかっていると分かった虎太郎は、慌てて2人の間に入りこみ、女性に向かって吠えた。
「ワンワンワン!(れんさんからはなれろ!)」
「――わ! びっくりした! もしかしてこの子がRENの飼っている犬?」
虎太郎が大声で吠えているのに、女性はまったく怯んでくれない。それどころか、虎太郎の頭を撫でようとしてきたのでその手をよけてもう一度吠えた。
「え、そのつけてるスカーフ、ブランドものじゃない! すっごい高いやつ!」
「クウ?(え、そうなの?)」
虎太郎のつけているかっこいい黒のスカーフを見て女性が驚いている。ブランドものに詳しくない虎太郎には分からなかったが、どうやら高いものだったらしい。芝生を転げ回ったため草があちこちについているし、よだれを垂らし汚してきたこのスカーフが……
「やっぱりあなたRENじゃないの? こんな高価なものを飼い犬に使えるなんて」
「お前、邪魔なんだけど。さっさとどっか行けよ」
虎太郎が高価なスカーフをつけていたことで、ますます怪しんできた女性を追い払うべく突撃しようとした虎太郎の目の前に、先ほどのデカポメが姿を現した。
「あら、大福ちゃん。このポメちゃんと仲良くしていなさい。RENのポメの名前は何ていうんですか? 同じポメの飼い主同士仲良くしましょうよ。連絡先交換しません?」
女性はそう言うと蓮に近づいて腕を触ろうとした。蓮は眉を寄せ舌打ちをしながら避けたが、女性は諦めずに蓮のマスクを取ろうと手を伸ばしている。
虎太郎は蓮に加勢すべく2人の間に割って入ろうとしたが、大福が目の前に立ちふさがって唸っている。大福は自分の飼い主に虎太郎を近づかせないようにしているのだ。
「ワン(どいてください)」
虎太郎が何度か吠えるが、大福はまったく動じずにどっしりと構えて虎太郎を見てくる。名前通りに大きく、到底勝てそうにない。唸ってくる大福に虎太郎は腰が引けてしまうが、四つ足を踏ん張って耐える。
ここで逃げてはダメだと気合を入れなおした虎太郎の耳に、蓮のイライラした声が入ってくる。
ここで大福を倒して、ラスボスである女性も倒して蓮を救出するぞ、と意気込んだ虎太郎は、叫びながら大福に向かって突進した。
「ワンワン(わー)」
体当たり後、短い前足でパンチを繰り広げるが、相手の毛がモフモフすぎて上手く本体に攻撃できない。
「ヴー」
虎太郎の攻撃に対して唸りをあげた大福が、虎太郎の振り上げた前足に噛みついてきた。肉球に痛みが走る。
「ギャン(うわー)」
怯んだ虎太郎に追い打ちをかけるように、大福がのしかかってくる。巨体から這い出そうとするが大福が虎太郎の体を前足で固定してきて動けない。
「キュンキュン(たすけて)」
虎太郎の叫びに反応した蓮が、大福に踏みつけられている虎太郎を見て慌てて助けに来た。女性を振り払い大福を押しのけて、虎太郎の体を抱き上げる。
虎太郎を抱き上げた蓮はそのまま出口まで向かい、ドッグランを後にした。
女性は途中まで追ってきていたが、大福を置いてきたため、ドッグランの外までは追ってこなかった。
蓮が端のほうに設置されているベンチに座っているのを発見した虎太郎は、安心して遊びに戻ろうと思ったが、蓮の近くに露出度の高い女性が立っているのに気が付いて、慌てて蓮のそばに駆けつけた。
近づいていくと、2人の会話が虎太郎の耳に入ってきた。
「――お兄さんって、あのモデルのRENじゃないですか? 最近犬を飼っているんじゃないかってファンの間で噂になってて。背も高いしスタイルもいいし、もしかしてって思ったんですけど、マスクとサングラス取って顔見せてもらえませんか?」
「……嫌に決まってんだろ。人違いだ」
「えー、口悪いのも、RENと一緒なんですね。本当に違うんですか?」
蓮はモデルの時も本名と読み方が同じ『REN』という名前で活動している。
蓮の正体がバレかかっていると分かった虎太郎は、慌てて2人の間に入りこみ、女性に向かって吠えた。
「ワンワンワン!(れんさんからはなれろ!)」
「――わ! びっくりした! もしかしてこの子がRENの飼っている犬?」
虎太郎が大声で吠えているのに、女性はまったく怯んでくれない。それどころか、虎太郎の頭を撫でようとしてきたのでその手をよけてもう一度吠えた。
「え、そのつけてるスカーフ、ブランドものじゃない! すっごい高いやつ!」
「クウ?(え、そうなの?)」
虎太郎のつけているかっこいい黒のスカーフを見て女性が驚いている。ブランドものに詳しくない虎太郎には分からなかったが、どうやら高いものだったらしい。芝生を転げ回ったため草があちこちについているし、よだれを垂らし汚してきたこのスカーフが……
「やっぱりあなたRENじゃないの? こんな高価なものを飼い犬に使えるなんて」
「お前、邪魔なんだけど。さっさとどっか行けよ」
虎太郎が高価なスカーフをつけていたことで、ますます怪しんできた女性を追い払うべく突撃しようとした虎太郎の目の前に、先ほどのデカポメが姿を現した。
「あら、大福ちゃん。このポメちゃんと仲良くしていなさい。RENのポメの名前は何ていうんですか? 同じポメの飼い主同士仲良くしましょうよ。連絡先交換しません?」
女性はそう言うと蓮に近づいて腕を触ろうとした。蓮は眉を寄せ舌打ちをしながら避けたが、女性は諦めずに蓮のマスクを取ろうと手を伸ばしている。
虎太郎は蓮に加勢すべく2人の間に割って入ろうとしたが、大福が目の前に立ちふさがって唸っている。大福は自分の飼い主に虎太郎を近づかせないようにしているのだ。
「ワン(どいてください)」
虎太郎が何度か吠えるが、大福はまったく動じずにどっしりと構えて虎太郎を見てくる。名前通りに大きく、到底勝てそうにない。唸ってくる大福に虎太郎は腰が引けてしまうが、四つ足を踏ん張って耐える。
ここで逃げてはダメだと気合を入れなおした虎太郎の耳に、蓮のイライラした声が入ってくる。
ここで大福を倒して、ラスボスである女性も倒して蓮を救出するぞ、と意気込んだ虎太郎は、叫びながら大福に向かって突進した。
「ワンワン(わー)」
体当たり後、短い前足でパンチを繰り広げるが、相手の毛がモフモフすぎて上手く本体に攻撃できない。
「ヴー」
虎太郎の攻撃に対して唸りをあげた大福が、虎太郎の振り上げた前足に噛みついてきた。肉球に痛みが走る。
「ギャン(うわー)」
怯んだ虎太郎に追い打ちをかけるように、大福がのしかかってくる。巨体から這い出そうとするが大福が虎太郎の体を前足で固定してきて動けない。
「キュンキュン(たすけて)」
虎太郎の叫びに反応した蓮が、大福に踏みつけられている虎太郎を見て慌てて助けに来た。女性を振り払い大福を押しのけて、虎太郎の体を抱き上げる。
虎太郎を抱き上げた蓮はそのまま出口まで向かい、ドッグランを後にした。
女性は途中まで追ってきていたが、大福を置いてきたため、ドッグランの外までは追ってこなかった。
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