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35 ドッグラン!

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 公園内にあるドッグランには、2人が到着する前から数人が集まっているのが見えた。
 手続きを終えた蓮が虎太郎を下へ降ろし、つけていたハーネスからリードを外す。

「走ってきていいぞ」

 許可を出された虎太郎は、一度蓮のほうを振り返った後、目の前に見える広い芝生を疾走した。足の裏に感じる芝生のフワフワチクチクとした感触を味わい、顔に当たる風を感じながら、端のほうに生えている木をめがけて短い足を動かし全力で走る。

 少し小高い丘になっている場所を駆け上がり、木の根元に到着した虎太郎は、そこにポメラニアンがいるのに気が付いた。
 初めての同種との接触だ。
 ドキドキしながら白い毛のポメラニアンに近づいていく。

「ワン(こんにちは)」

 挨拶しながら近づき、お互いに鼻を近づけてクンクンと匂いを確認する。背丈も体格も虎太郎とほとんど同じだ。

「ワン」「ワン(まって)」

 白いポメラニアンが走り出したので、虎太郎も後ろを走って追いかける。いつのまにか虎太郎が追いかけられる側になったりしながら一緒に走った。ぶつかって転んで、立ち上がってまた追いかける。

 しばらく白いポメラニアンと追いかけっこを続けていたが、疲れてきたので虎太郎は立ち止まった。舌を出してヘッヘッと荒くなった呼吸を落ち着かせる。
 キョロキョロと辺りを見渡し蓮を探した虎太郎は、蓮のいる場所まで戻る。

「結構走っていたな。大丈夫か」

 戻ってきた虎太郎に、持ってきていた水を器に入れて差し出しながら蓮が聞いてくる。

「ワン!(たのしい!)」

 喉が渇いていた虎太郎は、器に口を突っ込んでガブガブと飲み干す。一旦落ち着いたので、改めてドッグランを見渡した。
 飼い主とポメラニアンが何組もいる。ポメラニアンがあちこちで走り回っているのが見える。みんな思い思いの首輪や服を着せてもらっているが、虎太郎のつけているスカーフが一番かっこよく見えた。

 先ほど遊びに行った木と逆側に、周りのポメラニアンよりも明らかにサイズの大きい犬がいる。気になったため虎太郎はそちらに向かって走った。

 近づいて見るとやはり大きい。顔はポメラニアンなのにサイズが虎太郎達とは全然違う。少し離れてそのデカポメの周りを歩きながら観察する。挨拶をするため恐る恐る近づいた虎太郎に対し、デカポメが歯を向きだして「ウーッ」と唸り声をあげたため急いで距離をとった。

 ほかのポメラニアンとは仲良くしているのに、虎太郎が近づくとなぜか唸り声をあげてくる。もしかしたら、虎太郎が普通のポメラニアンとは違うことを感じ取っているのかもしれない。

 デカポメと仲良くするのは諦めて、別のポメラニアンと遊ぼうと虎太郎は踵を返した。

 あんなに大きなポメラニアンがいるのなら、虎太郎ももっと大きくなれるかもしれない。
 毎日牛乳を飲んでいるし、おやつの時間によく飲んでいる美味しいカフェオレにも牛乳は入っている。人間の虎太郎の身長が伸びたら、もしかしたらポメラニアンの方の体も大きくなるかもしれない。
 できれば、蓮の腰に頭が来るくらいまで大きくなりたいなと思った虎太郎は、蓮を背中に乗せて駆け回る自分の姿を思い描いた。
 
 大きくなれる希望が見えた虎太郎はご機嫌に尻尾を振りながら、別のポメラニアンを目指して駆け出した。
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