【完結】虎太郎君はポメラニアン!

結城れい

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33 見なかった!

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 無事に荷物も新居に届き荷解きをしていた虎太郎は、重大なことに気づいてしまった。

 この新しいマンションには虎太郎の部屋もある。今までは蓮の家にバイトとして通っており、途中からお泊り会を行っていたため虎太郎の部屋というものはなかった。基本的にリビングにおり、寝るときは蓮の寝室に行く。荷物は空いていたクローゼットにまとめて入れさせてもらっていた。

 自分の部屋があると聞かされた虎太郎は、喜んで新居にやってきて、箱に入っている自分の荷物を出していたが、ある程度出し終えたところでそれに気がついたのだ。

 虎太郎の部屋には、今まで自分が使っていた布団が運ばれている。
 つまり、ポメラニアンになり蓮と一緒に眠る必要がなくなってしまったのだ。

 悩んだ末、虎太郎は布団一式をクローゼットにしまい込んだ。

――そう、見なかったことにしたのだ




「自分の部屋の分終わりました」

 ある程度自分の荷物の整理が終わった虎太郎は、リビングまでやってきた。

「ああ、虎太郎くん! よければ空になった段ボール箱をたたんでいってくれないかな」
「分かりました!」

 宮下がリビングで荷解きをしている。引っ越し業者と一緒にやってきて手伝ってくれているのだ。宮下に頼まれた虎太郎は、嬉々として段ボール箱をつぶしていく。
 空になっている箱を家のあちこちから回収してきて、つぶした後にリビングの端に積み上げていく。だんだんと高くなっていく段ボールタワーを見て、虎太郎は達成感を覚えた。 

 途中で自分の部屋の分が終わった蓮もリビングに合流し、3人で最後の荷解きを行っていく。

「そういえば、虎太郎くんのご両親には今回の引っ越しのことはお伝えしたんだよね?」
「はい! 伝えてます」
「怪訝に思われなかった? 急に知らない人と同居するなんて」
「お母さんに電話で伝えたんですけど、全然大丈夫でした。電話の途中で蓮さんが代わってくれて、説明してくれましたし」
「え、そうなんですか! 蓮さんが……」
「さすがにまだ二十歳未満だし、こいつの説明が危うかったからな」




 引っ越しが決まった際、蓮が親にも伝えとけと言ってきたため、その場で虎太郎は母に電話をかけた。
 モデルの人と一緒に暮らすことになった事、その人は虎太郎がポメラニアンになるポメガバースという体質であることを分かっているから心配ないという事を伝えた虎太郎に、母は心配しながらも「モデルさんってやっぱりイケメンなのかしら? 写真はないの?」と聞いてきた。写真はなかったため、蓮のイケメン度合いを頑張って伝えていた虎太郎だったが、急に蓮がスマホを奪い取ってきた。驚いて動きを止めた虎太郎を尻目に、蓮は虎太郎の母に挨拶をして簡単に経緯を説明した後、自分の電話番号を伝えた。

「一体、母親に何を説明してるんだ」

 虎太郎の母との話が終わり、スマホを虎太郎に返してきた蓮は呆れていた。

「蓮さんはイケメンなの? って聞かれたから、説明してたんですけど、上手く説明できなくて……。写真を撮って送ってもいいですか?」

 虎太郎がスマホのカメラを起動して蓮に向けたが、蓮は手でスマホのレンズを覆ってしまった。
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