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29 おいしい!
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宮下が帰った後、今日の分のおやつを食べながら虎太郎はご機嫌だった。
今日のおやつはシュークリームだ。しかもただのシュークリームではなく、なんとクッキーシューという、普通のシュークリームの上に更にクッキー生地がのっているものだ。
シュークリームとクッキーはそれぞれ単体でも美味しいのに、それが合体したものなんて美味しいに決まっている。
クッキーシューの説明を蓮から聞いた虎太郎は、よだれが垂れそうだった。
目の前に出されたクッキーシューを前にした虎太郎は、手が出そうになるのを必死に耐えた。
蓮が飲み物を入れてくると言ってキッチンに行ってしまったため、虎太郎が先に食べるわけにはいかない。おいしそうなスイーツを目の前に、虎太郎は必死に耐える。
しばらく目の前の薄茶色のおいしそうなものとにらめっこをしていたが、我慢できなくなった虎太郎は、目の前にあるのがいけないんだと考え、蓮を手伝うためにキッチンに行こうと思い至った。クッキーシューから目を離し立ち上がろうとした虎太郎は、テーブルの近くにマグカップを持ったまま突っ立っている蓮の姿が目に入った。
「蓮さん、いたんですか!」
「……『待て』をさせている飼い主の気分だったわ。食べていいぞ」
「はい!」
急いで座りなおした虎太郎はクッキーシューをわしづかみ、大きな口をあけて頬張った。
ザクザクした生地に甘いクリームが絡み合い、とても美味しい。食べた側とは反対側からクリームが飛び出してきてしまったが、手で受け止めて夢中で食べ進める。
行儀が悪いかなと思いながらも、虎太郎は手についたクリームまでしっかりと舐めて食べ終えた。
「いつ見ても、ほんとおいしそうに食べるよな」
「とっても美味しかったです!!」
向かいの席に座って虎太郎を見ていた蓮も、クッキーシューを食べている。なぜか虎太郎が食べると毎回汚くなってしまうが、蓮は食べている途中もとても綺麗だ。
「口元が凄いことになっているから、拭いてこい」
蓮に指摘された虎太郎は、洗面所に行き自分の顔を鏡で確認する。口元にたっぷりとクリームがついてたため、舐められる分はしっかりと舌でペロペロと舐めとった後に、口元だけでなく顔まで一緒に洗ってからリビングへと戻った。
テーブルに置いてある食べ終わった後のお互いのお皿を見ても、どちらが虎太郎のものか一目瞭然。不思議に思った虎太郎は蓮に直接聞いてみた。
「蓮さんはどうしてそんなに綺麗に食べれるんですか?」
「まぁ、小さい頃から訓練されてきたからな。食べ方一つでも、難癖付けてくる奴はいるんだよ。他のことで俺に敵わないからってな――お前は別にそのままでいいんじゃない?」
「僕も綺麗に食べれるようになります!」
「まぁ、練習だな。頑張れ」
蓮の言い方からして、嫌がらせをしてきた人たちが幼かった蓮の食べ方についても蔑んできたのだろう。
虎太郎は今まで自由に食べてきた。『行儀よく食べなさい』や『一度落としたものは食べちゃダメ』とは母親に言われてきたが、それと蓮が言われてきたのはまったくの別物だろう。
幼かった蓮のもとに今の虎太郎は行くことはできない。それでも、少しでも蓮に寄り添いたい、と虎太郎は思った。
今日のおやつはシュークリームだ。しかもただのシュークリームではなく、なんとクッキーシューという、普通のシュークリームの上に更にクッキー生地がのっているものだ。
シュークリームとクッキーはそれぞれ単体でも美味しいのに、それが合体したものなんて美味しいに決まっている。
クッキーシューの説明を蓮から聞いた虎太郎は、よだれが垂れそうだった。
目の前に出されたクッキーシューを前にした虎太郎は、手が出そうになるのを必死に耐えた。
蓮が飲み物を入れてくると言ってキッチンに行ってしまったため、虎太郎が先に食べるわけにはいかない。おいしそうなスイーツを目の前に、虎太郎は必死に耐える。
しばらく目の前の薄茶色のおいしそうなものとにらめっこをしていたが、我慢できなくなった虎太郎は、目の前にあるのがいけないんだと考え、蓮を手伝うためにキッチンに行こうと思い至った。クッキーシューから目を離し立ち上がろうとした虎太郎は、テーブルの近くにマグカップを持ったまま突っ立っている蓮の姿が目に入った。
「蓮さん、いたんですか!」
「……『待て』をさせている飼い主の気分だったわ。食べていいぞ」
「はい!」
急いで座りなおした虎太郎はクッキーシューをわしづかみ、大きな口をあけて頬張った。
ザクザクした生地に甘いクリームが絡み合い、とても美味しい。食べた側とは反対側からクリームが飛び出してきてしまったが、手で受け止めて夢中で食べ進める。
行儀が悪いかなと思いながらも、虎太郎は手についたクリームまでしっかりと舐めて食べ終えた。
「いつ見ても、ほんとおいしそうに食べるよな」
「とっても美味しかったです!!」
向かいの席に座って虎太郎を見ていた蓮も、クッキーシューを食べている。なぜか虎太郎が食べると毎回汚くなってしまうが、蓮は食べている途中もとても綺麗だ。
「口元が凄いことになっているから、拭いてこい」
蓮に指摘された虎太郎は、洗面所に行き自分の顔を鏡で確認する。口元にたっぷりとクリームがついてたため、舐められる分はしっかりと舌でペロペロと舐めとった後に、口元だけでなく顔まで一緒に洗ってからリビングへと戻った。
テーブルに置いてある食べ終わった後のお互いのお皿を見ても、どちらが虎太郎のものか一目瞭然。不思議に思った虎太郎は蓮に直接聞いてみた。
「蓮さんはどうしてそんなに綺麗に食べれるんですか?」
「まぁ、小さい頃から訓練されてきたからな。食べ方一つでも、難癖付けてくる奴はいるんだよ。他のことで俺に敵わないからってな――お前は別にそのままでいいんじゃない?」
「僕も綺麗に食べれるようになります!」
「まぁ、練習だな。頑張れ」
蓮の言い方からして、嫌がらせをしてきた人たちが幼かった蓮の食べ方についても蔑んできたのだろう。
虎太郎は今まで自由に食べてきた。『行儀よく食べなさい』や『一度落としたものは食べちゃダメ』とは母親に言われてきたが、それと蓮が言われてきたのはまったくの別物だろう。
幼かった蓮のもとに今の虎太郎は行くことはできない。それでも、少しでも蓮に寄り添いたい、と虎太郎は思った。
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