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28 驚き!
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「ただいまー」
大学から帰った虎太郎は、元気よく蓮の家の扉を開けた。今までは誰もいない自分の部屋に向かって寂しく帰宅の挨拶をしていたが、今は蓮が家にいる。挨拶はあまり帰ってこないが……
リビングに入りながらもう一度「ただいま」と声を出した虎太郎に「おかえりなさい」と返事があり、虎太郎は驚いて声の聞こえた方に顔を向けた。
「宮下さん!」
「久しぶりだね、虎太郎くん。ちょうど良かったよ。虎太郎くんに嫌がらせをしていた人について、蓮さんに報告に来ていたところだったんだ」
「え、誰がやっていたか分かったんですか!」
虎太郎は慌ててソファに座っている2人に近づき、宮下の向かい側に座っていた蓮の隣に腰かけた。虎太郎が座ったのを確認して宮下が話を続ける。
「うん。予想通り蓮さんのファンである女性だったよ。蓮さんは人嫌いで有名だからね。そんな蓮さんの家に通っていた虎太郎くんに気がついて、嫌がらせをしたみたいだ。この家から帰るときに後をつけて虎太郎くんの家を特定したと話したよ」
「そうだったんですね。つけられていたなんて全然気づかなかったです……」
今さらながら、つけられていたことを怖く感じた虎太郎は、少しだけ蓮のほうに体を寄せた。
「どうして、こいつが俺の家に通っていると分かったんだ? このマンションには部屋はいくつもあるのに」
蓮が疑問に思ったことを宮下に尋ねた。このマンションには蓮だけが住んでいるわけではない。虎太郎が蓮の部屋に入っていったなんて、入り口までつけなければ確認のしようがないし、蓮と虎太郎が一緒に出かけたのは虎太郎がポメラニアンの時だけだ。
「それが――その女性はこのマンションの近くに自分でも別のマンションを購入して、双眼鏡で覗いて確認していたようです。このマンションのコンシェルジュにも接触して蓮さんの部屋を聞き出そうとしていたようです。もちろん、彼は何も話さなかったので、方針を変えてこのマンションに住む住民を誘惑して聞き出したとのことでした。そして、蓮さんの住んでいる部屋の階数を特定し、双眼鏡で確認していたところ、リビングの大きな掃き出し窓から虎太郎くんの姿が見えたのだと」
「……くそだな」
蓮は宮下の報告に眉をひそめて反応したが、虎太郎は驚きすぎて反応すら返せなかった。まさか、蓮の住んでいる場所を特定するために、近くのマンションを購入し、双眼鏡で覗いたり、蓮のマンションの住人に声をかけたりする人がいるなんて思いもしなかった。そこまでして他人の住んでいる場所を特定したい人がいることが信じられなかったのだ。蓮の住んでいる部屋を特定して、そこに出入りしている人に嫌がらせをしていく。そんなことをしたら、蓮の家に来れる人はいなくなってしまい、余計人嫌いが悪化してしまうかもしてないのに、一体そのファンの女性が何をしたかったのか虎太郎には理解できなかった。
「蓮さんの家に虎太郎くんがいることは確認して分かったのに、一緒に出かけることもなければ、数日出てこないこともあったので、とても大切にしている人なのではないかと勘繰り、やきもきしていたそうです。虎太郎くんは女性ではなかったので、直接的な危害は加えずに嫌がらせに留まらせていたようですが……」
「――はぁ」
話を聞き終え、蓮が大きなため息をつく横で、虎太郎は覚悟を決めた。
「宮下さん! その女の人は今どこにいるんですか? 僕がもうしないでくださいって言いに行きます!」
立ち上がり、こぶしを握りしめながら言う虎太郎に、宮下は驚き目を見開いた後、優しい口調で語りかけた。
「虎太郎くん、大丈夫だよ。私たちがしっかりと言ったからね。今回は警察で処理してもらえるほどのことじゃなかったから、逮捕してもらうわけにはいかなかったけど、その分、こちらでしっかりとお灸をすえたから」
「――そうなんですか。それなら良かったです」
「うん。今後、彼女が蓮さんや虎太郎くんに近づくことはないよ」
緊張していた虎太郎は、宮下の返事を聞いて力を抜きソファに座り直した。嫌がらせをしてきた人と会うのはとても怖いが、そんな人に蓮に近づいてほしくないので、会って話をしようと思ったのだ。もしかしたら、虎太郎が会うことで更に怒らせてしまうかもしれないため、宮下が言ってくれていたのなら安心だと、虎太郎は一息ついた。
そんな虎太郎の頭を横から蓮が無言で撫でてきた。
大学から帰った虎太郎は、元気よく蓮の家の扉を開けた。今までは誰もいない自分の部屋に向かって寂しく帰宅の挨拶をしていたが、今は蓮が家にいる。挨拶はあまり帰ってこないが……
リビングに入りながらもう一度「ただいま」と声を出した虎太郎に「おかえりなさい」と返事があり、虎太郎は驚いて声の聞こえた方に顔を向けた。
「宮下さん!」
「久しぶりだね、虎太郎くん。ちょうど良かったよ。虎太郎くんに嫌がらせをしていた人について、蓮さんに報告に来ていたところだったんだ」
「え、誰がやっていたか分かったんですか!」
虎太郎は慌ててソファに座っている2人に近づき、宮下の向かい側に座っていた蓮の隣に腰かけた。虎太郎が座ったのを確認して宮下が話を続ける。
「うん。予想通り蓮さんのファンである女性だったよ。蓮さんは人嫌いで有名だからね。そんな蓮さんの家に通っていた虎太郎くんに気がついて、嫌がらせをしたみたいだ。この家から帰るときに後をつけて虎太郎くんの家を特定したと話したよ」
「そうだったんですね。つけられていたなんて全然気づかなかったです……」
今さらながら、つけられていたことを怖く感じた虎太郎は、少しだけ蓮のほうに体を寄せた。
「どうして、こいつが俺の家に通っていると分かったんだ? このマンションには部屋はいくつもあるのに」
蓮が疑問に思ったことを宮下に尋ねた。このマンションには蓮だけが住んでいるわけではない。虎太郎が蓮の部屋に入っていったなんて、入り口までつけなければ確認のしようがないし、蓮と虎太郎が一緒に出かけたのは虎太郎がポメラニアンの時だけだ。
「それが――その女性はこのマンションの近くに自分でも別のマンションを購入して、双眼鏡で覗いて確認していたようです。このマンションのコンシェルジュにも接触して蓮さんの部屋を聞き出そうとしていたようです。もちろん、彼は何も話さなかったので、方針を変えてこのマンションに住む住民を誘惑して聞き出したとのことでした。そして、蓮さんの住んでいる部屋の階数を特定し、双眼鏡で確認していたところ、リビングの大きな掃き出し窓から虎太郎くんの姿が見えたのだと」
「……くそだな」
蓮は宮下の報告に眉をひそめて反応したが、虎太郎は驚きすぎて反応すら返せなかった。まさか、蓮の住んでいる場所を特定するために、近くのマンションを購入し、双眼鏡で覗いたり、蓮のマンションの住人に声をかけたりする人がいるなんて思いもしなかった。そこまでして他人の住んでいる場所を特定したい人がいることが信じられなかったのだ。蓮の住んでいる部屋を特定して、そこに出入りしている人に嫌がらせをしていく。そんなことをしたら、蓮の家に来れる人はいなくなってしまい、余計人嫌いが悪化してしまうかもしてないのに、一体そのファンの女性が何をしたかったのか虎太郎には理解できなかった。
「蓮さんの家に虎太郎くんがいることは確認して分かったのに、一緒に出かけることもなければ、数日出てこないこともあったので、とても大切にしている人なのではないかと勘繰り、やきもきしていたそうです。虎太郎くんは女性ではなかったので、直接的な危害は加えずに嫌がらせに留まらせていたようですが……」
「――はぁ」
話を聞き終え、蓮が大きなため息をつく横で、虎太郎は覚悟を決めた。
「宮下さん! その女の人は今どこにいるんですか? 僕がもうしないでくださいって言いに行きます!」
立ち上がり、こぶしを握りしめながら言う虎太郎に、宮下は驚き目を見開いた後、優しい口調で語りかけた。
「虎太郎くん、大丈夫だよ。私たちがしっかりと言ったからね。今回は警察で処理してもらえるほどのことじゃなかったから、逮捕してもらうわけにはいかなかったけど、その分、こちらでしっかりとお灸をすえたから」
「――そうなんですか。それなら良かったです」
「うん。今後、彼女が蓮さんや虎太郎くんに近づくことはないよ」
緊張していた虎太郎は、宮下の返事を聞いて力を抜きソファに座り直した。嫌がらせをしてきた人と会うのはとても怖いが、そんな人に蓮に近づいてほしくないので、会って話をしようと思ったのだ。もしかしたら、虎太郎が会うことで更に怒らせてしまうかもしれないため、宮下が言ってくれていたのなら安心だと、虎太郎は一息ついた。
そんな虎太郎の頭を横から蓮が無言で撫でてきた。
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