【完結】虎太郎君はポメラニアン!

結城れい

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26 小さい?

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 虎太郎の部屋から最低限必要な荷物を持ち出した3人は、そのまま蓮のマンションまで戻ってきた。

「宮下さん、ありがとうございました」
「いえいえ、犯人はこちらで探して対処しますので、安心してくださいね」
「ありがとうございます! お願いします」

 虎太郎の着替えが入ったバッグを蓮の部屋まで運んだ宮下は、今後のためにと虎太郎と連絡先を交換して帰っていった。

「蓮さんも、ありがとうございました」
「ああ。クローゼットが1つ空いているからそこを使えばいい。ベッドは1つしかないから、まぁ一緒でいいだろう」
「僕、ソファでいいですよ」
「お前は小さいから、別に狭くもねぇし大丈夫だろ」
「僕小さくないです!」
「……? ポメラニアンって小型犬だろ?」
「――え、ああ、そ、そうですね」

 『小さい』に反応してしまい、恥ずかしい勘違いをしてしまった。虎太郎は赤くなった顔を隠すように下を向いた。犬の姿だと、人間の時よりも遥かに小さいし、昨日だってその姿で一緒のベッドで寝たんだった、と思い返した虎太郎は下を向いたまま足先をモゾモゾと動かした。

「まぁ、人間の時も小さいけどな」

 笑いながら蓮に言われた虎太郎は、顔を上げて今度こそ「小さくないです」と叫んだ。




 蓮との生活は虎太郎にとって、とても楽しいものだった。
 犬の姿で蓮と一緒にベッドで寝るが、朝起きると人間に戻ってしまうので、毎回蓮に怒られるが、それさえも嬉しかった。
 一緒に寝て、起きて、ご飯を食べて。都会に出てきて初めて1人暮らしをした虎太郎は、人が恋しくなっていたのだ。家に自分以外の人がいることがこんなに嬉しかったなんて、と虎太郎は1人暮らしの寂しさを思い返した。
 1人で起きて、1人でご飯を食べて、人と会って話すのは大学かバイト先。家に帰ればまた1人で寂しくご飯を食べて眠る。
 もう、1人暮らしには戻れないかもしれない。もし、今回の件が解決してこの家を出なければならなくなったら、熊田と馬場のようにルームシェアをしてくれる人を探そう、と虎太郎は心に決めた。

 そう、虎太郎は自分が思っているよりも寂しがり屋だったのだ。
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