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23 お泊り会!
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「もしかしたら、俺のせいかもしれない」
しばらく沈黙が続いた後、蓮がボソッと呟いた。
虎太郎は言われている意味が分からなく、「どうしてですか?」と蓮に聞き返した。虎太郎に嫌がらせをすることを蓮が指示したはずはないのに、自分のせいだと言っている蓮の言葉の真意が掴めなかったのだ。
「俺には過激なファンがいるんだ。そいつらが、お前がこの家に来ていることに気づいて嫌がらせを行った可能性が高い」
「え!」
「手紙に書かれていた『身の程をしれ』や『邪魔者』は、そういう意味だろう。俺は家に誰かをあげることはないからな。今まで来たことがあるのはマネージャーの宮下くらいだ。そんななか、お前が毎日のように来ていたのに気がついて嫌がらせをしてきたんだろう。……悪かったな」
「……そんなの、そんなの蓮さんのせいじゃないです! 謝らないでください!」
虎太郎は泣きそうになりながら叫んだ。
魅力あるモデルの蓮にファンがいることは考えれば分かることだ。蓮に会いたいと思う人が、実際に会えている虎太郎のことを良く思わないことだってあるだろう。
虎太郎が蓮の家に来るときに、もっと気をつけていればよかったのだ。今日のおやつはなんだろうな、としか考えずにワクワクしながら来ていたので、そんなことは考えもしなかった。
それなのに、何も悪くない蓮に謝らせてしまった。
撮影スタジオの控室で宮下に言われたことが、虎太郎の頭をよぎる。
蓮は嫉妬や妬みで嫌がらせをされた事で、他人が苦手になってしまったと話してくれた。あの話を聞いた時、虎太郎は蓮のために頑張りたいと、そう心底思ったのに――
「なんで、お前が泣きそうになってんだよ」
「蓮さんは、悪くないもん……」
向かい側に座っていた蓮が虎太郎の側まで来て、力なく笑いながら頭を撫でてきた。虎太郎はたまらず蓮に抱きつく。言葉にならない思いが胸の中を渦巻いて、蓮のお腹に頭をグリグリと擦りつける。
本当は虎太郎の方が、蓮を抱きしめて撫でたかった――
「お前の家が相手に知られている以上、嫌がらせが今以上に酷くなったり、危害を加えてくる可能性もある。セキュリティ面の強いこの部屋に一時的に避難して来い。ここも近いうちに引っ越さねぇとな」
「お泊り会ですか!」
「……は?」
「蓮さんの家でお泊り会をするんですね!」
蓮の家に泊まると聞いて喜んでいる虎太郎を、呆れた顔で蓮が見てきた。
「お前、俺の話聞いていたか?」
「はい!」
「……そうか。落ち込んでいたお前は、どこに行ったんだ?」
何をこの部屋に持ってこようか、と考え込んだ虎太郎を見て、蓮はため息をつきながら聞いてきた。
あの時落ち込んで、人間に戻れなかったことが嘘のように虎太郎は元気いっぱいだ。少し考えた後、虎太郎は笑いながら答えた。
「蓮さんにお話しできたら、元気になりました! 最初は、なんでこんな嫌がらせをされているのか分からなくて怖かったんですけど、蓮さんと一緒に遊べているからだと分かったら、納得できたんです」
「――そっか。まぁ、遊んでるわけじゃないけどな」
虎太郎にとって、蓮はとても大きい存在になっていた。おやつが貰えなくても、遊んでくれなくても一緒にいたい。
蓮は、もし自分に関係のないことで虎太郎が悩んでいたとしても、きっと解決するために手を貸してくれただろう。
とても優しい人で、虎太郎を守ってくれる人。だけど、虎太郎も蓮を守りたいし力になりたいと思う。
虎太郎は、今ならどんな大きい犬が相手でも吠え返して追い払える気がした。
しばらく沈黙が続いた後、蓮がボソッと呟いた。
虎太郎は言われている意味が分からなく、「どうしてですか?」と蓮に聞き返した。虎太郎に嫌がらせをすることを蓮が指示したはずはないのに、自分のせいだと言っている蓮の言葉の真意が掴めなかったのだ。
「俺には過激なファンがいるんだ。そいつらが、お前がこの家に来ていることに気づいて嫌がらせを行った可能性が高い」
「え!」
「手紙に書かれていた『身の程をしれ』や『邪魔者』は、そういう意味だろう。俺は家に誰かをあげることはないからな。今まで来たことがあるのはマネージャーの宮下くらいだ。そんななか、お前が毎日のように来ていたのに気がついて嫌がらせをしてきたんだろう。……悪かったな」
「……そんなの、そんなの蓮さんのせいじゃないです! 謝らないでください!」
虎太郎は泣きそうになりながら叫んだ。
魅力あるモデルの蓮にファンがいることは考えれば分かることだ。蓮に会いたいと思う人が、実際に会えている虎太郎のことを良く思わないことだってあるだろう。
虎太郎が蓮の家に来るときに、もっと気をつけていればよかったのだ。今日のおやつはなんだろうな、としか考えずにワクワクしながら来ていたので、そんなことは考えもしなかった。
それなのに、何も悪くない蓮に謝らせてしまった。
撮影スタジオの控室で宮下に言われたことが、虎太郎の頭をよぎる。
蓮は嫉妬や妬みで嫌がらせをされた事で、他人が苦手になってしまったと話してくれた。あの話を聞いた時、虎太郎は蓮のために頑張りたいと、そう心底思ったのに――
「なんで、お前が泣きそうになってんだよ」
「蓮さんは、悪くないもん……」
向かい側に座っていた蓮が虎太郎の側まで来て、力なく笑いながら頭を撫でてきた。虎太郎はたまらず蓮に抱きつく。言葉にならない思いが胸の中を渦巻いて、蓮のお腹に頭をグリグリと擦りつける。
本当は虎太郎の方が、蓮を抱きしめて撫でたかった――
「お前の家が相手に知られている以上、嫌がらせが今以上に酷くなったり、危害を加えてくる可能性もある。セキュリティ面の強いこの部屋に一時的に避難して来い。ここも近いうちに引っ越さねぇとな」
「お泊り会ですか!」
「……は?」
「蓮さんの家でお泊り会をするんですね!」
蓮の家に泊まると聞いて喜んでいる虎太郎を、呆れた顔で蓮が見てきた。
「お前、俺の話聞いていたか?」
「はい!」
「……そうか。落ち込んでいたお前は、どこに行ったんだ?」
何をこの部屋に持ってこようか、と考え込んだ虎太郎を見て、蓮はため息をつきながら聞いてきた。
あの時落ち込んで、人間に戻れなかったことが嘘のように虎太郎は元気いっぱいだ。少し考えた後、虎太郎は笑いながら答えた。
「蓮さんにお話しできたら、元気になりました! 最初は、なんでこんな嫌がらせをされているのか分からなくて怖かったんですけど、蓮さんと一緒に遊べているからだと分かったら、納得できたんです」
「――そっか。まぁ、遊んでるわけじゃないけどな」
虎太郎にとって、蓮はとても大きい存在になっていた。おやつが貰えなくても、遊んでくれなくても一緒にいたい。
蓮は、もし自分に関係のないことで虎太郎が悩んでいたとしても、きっと解決するために手を貸してくれただろう。
とても優しい人で、虎太郎を守ってくれる人。だけど、虎太郎も蓮を守りたいし力になりたいと思う。
虎太郎は、今ならどんな大きい犬が相手でも吠え返して追い払える気がした。
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