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19 写真撮影!
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仕方がないので、蓮の撮影が終わるまでこの部屋で待とうと諦めた虎太郎の目に、部屋の隅に置かれている鏡が映った。
スカーフをつけた自分の姿を見たいと思っていたことを思い出した虎太郎は、宮下に床に降ろしてもらい、鏡の前に駆け寄る。
鏡には黒のスカーフを首につけて、モフモフな胸を張った茶色のポメラニアンが映っていた。
「クウクウ(かっこいいじゃん)」
鏡に映る自分を色々な角度で眺める。かっこよさを確認している虎太郎の後ろから、ひそかな笑い声が聞こえてきた。虎太郎が声のほうを振り返ると、肩を震わせた宮下がこちらに背を向けているのが見えた。
笑われていると気づいた虎太郎は恥ずかしくなり、宮下に突進していった。
「ウー(わらうな)」
「ふふっ、ごめんなさい。スカーフとても似合ってますよ。折角だし、写真撮ってあげましょうか」
「ワン(うん)」
写真を撮ってもらえると聞いて、虎太郎の背筋がピンと伸びた。背景として良さそうな場所を探して部屋を駆け回るが、いい場所は見つからない。ここは撮影スタジオなので部屋の外にはいい場所があるかもしれない、と思った虎太郎は扉を前足でタシタシと叩いた。
「外で撮りたいんですか? ……少しなら大丈夫ですかね。大人しくできますか?」
「ワン!(うん!)」
しっかりと頷いた虎太郎を抱き上げて、宮下は控室を出た。
さすが、撮影スタジオ。
写真を撮るのにいい道具がそろっていたため、小道具を少し借りて虎太郎の撮影会を行うことができた。宮下が色々なアングルからスマホで撮った写真を虎太郎に見せてくれる。虎太郎のお気に入りは、少し下から見上げるように撮ってもらった写真だ。
岩のような場所に前足をかけて、胸を張った凛々しい顔をしたポメラニアン。まるで百獣の王であるライオンのようなかっこいい写真に、虎太郎は大満足だった。
「キャン(かっこいい。ありがとう)」
「いい写真が撮れましたね。とってもかわいいです」
「クウ?(かわいい?)」
「よし、戻りましょうか」
控室への帰り道。宮下は、実は昔から犬が大好きで、いつか飼いたいと思っていたことを虎太郎を抱えて歩きながら話した。
「――柴犬とかいいかなって思ってたんですけど、ポメラニアンのような小型犬でもかわいいかもしれないですね」
「ワン!(うん!)」
「――あ、ここのスタジオ、蓮さんの撮影がされている場所ですね」
「ワン!(え!)」
蓮の撮影を見たかった虎太郎は、宮下の腕に両手をつき、スタジオのほうに体を乗り出す。
「少しだけ、見ちゃいましょうか。内緒ですよ」
そう言った宮下は虎太郎を抱いたまま、スタジオの扉を少しだけ開き、中を覗いた。虎太郎も一緒に中を覗き込むと、奥のほうで撮影されている蓮が見えた。
「クウ(すごい)」
綺麗な服を着こなしポーズをきめて撮影されている蓮は、いつも虎太郎を撫でてくれている人とは別人に見えた。
何度も蓮がポーズを変え、その度にカメラのフラッシュが光る。
圧倒されるほどの雰囲気に飲まれて、虎太郎は口を開けたまま、その光景に魅入られた。
「――そろそろ、戻りましょうかね」
宮下が声をかけてきたことで、虎太郎はハッと我に返り静かに頷いた。
スカーフをつけた自分の姿を見たいと思っていたことを思い出した虎太郎は、宮下に床に降ろしてもらい、鏡の前に駆け寄る。
鏡には黒のスカーフを首につけて、モフモフな胸を張った茶色のポメラニアンが映っていた。
「クウクウ(かっこいいじゃん)」
鏡に映る自分を色々な角度で眺める。かっこよさを確認している虎太郎の後ろから、ひそかな笑い声が聞こえてきた。虎太郎が声のほうを振り返ると、肩を震わせた宮下がこちらに背を向けているのが見えた。
笑われていると気づいた虎太郎は恥ずかしくなり、宮下に突進していった。
「ウー(わらうな)」
「ふふっ、ごめんなさい。スカーフとても似合ってますよ。折角だし、写真撮ってあげましょうか」
「ワン(うん)」
写真を撮ってもらえると聞いて、虎太郎の背筋がピンと伸びた。背景として良さそうな場所を探して部屋を駆け回るが、いい場所は見つからない。ここは撮影スタジオなので部屋の外にはいい場所があるかもしれない、と思った虎太郎は扉を前足でタシタシと叩いた。
「外で撮りたいんですか? ……少しなら大丈夫ですかね。大人しくできますか?」
「ワン!(うん!)」
しっかりと頷いた虎太郎を抱き上げて、宮下は控室を出た。
さすが、撮影スタジオ。
写真を撮るのにいい道具がそろっていたため、小道具を少し借りて虎太郎の撮影会を行うことができた。宮下が色々なアングルからスマホで撮った写真を虎太郎に見せてくれる。虎太郎のお気に入りは、少し下から見上げるように撮ってもらった写真だ。
岩のような場所に前足をかけて、胸を張った凛々しい顔をしたポメラニアン。まるで百獣の王であるライオンのようなかっこいい写真に、虎太郎は大満足だった。
「キャン(かっこいい。ありがとう)」
「いい写真が撮れましたね。とってもかわいいです」
「クウ?(かわいい?)」
「よし、戻りましょうか」
控室への帰り道。宮下は、実は昔から犬が大好きで、いつか飼いたいと思っていたことを虎太郎を抱えて歩きながら話した。
「――柴犬とかいいかなって思ってたんですけど、ポメラニアンのような小型犬でもかわいいかもしれないですね」
「ワン!(うん!)」
「――あ、ここのスタジオ、蓮さんの撮影がされている場所ですね」
「ワン!(え!)」
蓮の撮影を見たかった虎太郎は、宮下の腕に両手をつき、スタジオのほうに体を乗り出す。
「少しだけ、見ちゃいましょうか。内緒ですよ」
そう言った宮下は虎太郎を抱いたまま、スタジオの扉を少しだけ開き、中を覗いた。虎太郎も一緒に中を覗き込むと、奥のほうで撮影されている蓮が見えた。
「クウ(すごい)」
綺麗な服を着こなしポーズをきめて撮影されている蓮は、いつも虎太郎を撫でてくれている人とは別人に見えた。
何度も蓮がポーズを変え、その度にカメラのフラッシュが光る。
圧倒されるほどの雰囲気に飲まれて、虎太郎は口を開けたまま、その光景に魅入られた。
「――そろそろ、戻りましょうかね」
宮下が声をかけてきたことで、虎太郎はハッと我に返り静かに頷いた。
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