【完結】虎太郎君はポメラニアン!

結城れい

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14 友達に相談!

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 まだ2限目の時間帯なので、食堂は人が少なく空いていた。
 お昼の時間は食堂を利用する人が多く、少しでも出遅れてしまうと座れないことも多いため、2限目の講義が入っていないときは先に食べるようにしているのだ。

 虎太郎はメニューを見て、唐揚げ定食に決めて注文する。熊田と馬場もそれぞれ注文し、料理をもって席に向かった。4人席のテーブルに決めて、虎太郎の向かい側の席に2人が座りご飯を食べ始めた。

「虎太郎、目の下にクマができてる。夜更かししたのか?」
「ほんとだ。俺とお揃いじゃん」

 しばらく食べていると熊田に寝不足を言い当てられてしまったため、虎太郎はそのまま封筒の件について相談することにした。

「あの、実はね、最近変な封筒がポストに入れられるようになって――」

 これまでのことを説明しながら、いくつか持ってきていた封筒をカバンから出して2人に見せる。

「――ってことなんだ。どうしたらいいと思う?」
「え、やばいじゃん。心当たりはないんだよね?」

 虎太郎が出した封筒を確認しながら2人は眉をひそめた。

「……うん」
「虎太郎が、誰かに恨みを買うなんてあるか? 別の人と間違えられている可能性もあるけど……相手がわからないんじゃ聞きようがないよな」

 そうなのだ。虎太郎の住んでいる部屋はポストと離れているせいで、いつ入れられているかが分からなく、誰が入れているのか確認できなかったのだ。

「警察に相談してみる?」
「でも、実害が出てないのにどこまで動いてくれるか」
「うーん」
「俺らの家に一時避難したほうがいいんじゃないか?」
「うん、それがいいかもな。でも、一時的にはいいかもしれないけど、根本的な解決にはならないよな」

 落ち込んでいる虎太郎を慰めながら、2人は色々と案を出しながら対応策を考えてくれる。

「――手っ取り早く解決するには、犯人見つけて、ぶん殴るのが早いわ」
「そうだな! 今日、虎太郎の家に行くか」
「え? 待って! 危ないよ」

 最終的になぜか物騒な解決方法にたどり着いてしまって、虎太郎は焦って止めた。

「しばらくポストのところを隠れながら見張っておくことにするよ。入れる人が分かったら話を聞けるかも」
「一緒に待つよ」
「うん。俺も!」
「ううん、大丈夫! 最初は隠れて確認するだけだから」

 熊田はラグビー部に所属しており体格がいいし、馬場は背が高く、虎太郎よりも力がありそうだ。一緒に待ってくれるととても心強いが、2人が殴りかかってしまい、もし相手も応戦してきて怪我をさせてしまったら申し訳ないと思い、虎太郎は慌てて言い返す。

「えー、大丈夫か?」
「うん! 僕だって男だもん」
「……いや、うん」
「ちょっと、ちっちゃいよね」

 虎太郎が気にしている身長のことを、馬場に言われてしまった。虎太郎の父は178㎝なので、虎太郎はもう少し伸びる予定ではあるのだ。母は150㎝だが……

「あと1センチで170㎝だもん! 来年は絶対伸びてる! 牛乳も毎日飲んでるし」
「……うん。がんばれ」
「ひとまず、寝れないならうちに来て寝なよ。馬場はずっとオンラインゲームしてるから夜は馬場のベッド空いてるし」
「まあ、確かに」
「うん、ありがとう! 限界が来たら2人の部屋に行かせてもらうね!」
「まぁ、犯人を見つけたら、話しかけず、一先ず写真を撮っておきな。変な奴かもしれないしな」
「うん、分かった!」

 2人には虎太郎がポメラニアンになることは伝えていない。両親にあまり言いふらさないようにと言われていたからだ。蓮には仕方なかったから伝えたが、都会に出てきて他に伝えた人はいなかった。
 今、虎太郎の精神は不安定だ。もしかしたら、2人の家にいるときにポメラニアンになってしまうかもしれない。そう考えた虎太郎は、2人の家に避難するのは最終手段にして、封筒を入れている人を確認し、対策を考えることを優先することにした。




 大学から帰ってきた虎太郎は、ポストを見てまだ封筒が入っていないことを確認した後、ポストの方からは死角になっている階段の端に座り見張ることにした。
 一体どんな人が嫌がらせをしてきているのか見当がつかない。怖い人だったらどうしようと思いながら虎太郎は膝を抱えてため息をついた。
 座っている場所は日当たりがよく、体がポカポカとしてくる。
 最近寝不足気味だった虎太郎は、太陽に照らされて眠くなってきた。まだ外も明るく人通りも多い。虎太郎は欠伸をしながらも、なんとか目を開いてポストへ続く道を見続けた。

 夕方も過ぎ、暗くなってきても犯人は来なかった。途中、同じアパートの住民が数人帰宅し、ポストを確認していっただけだ。
 暗くなり怖くなってきた虎太郎は自分の部屋に戻る。しっかりと鍵をかけ、カーテンも閉めてベッドに横になった。寝不足が続いており限界だった虎太郎は、そのまま気絶するように眠りに落ちた。
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