【完結】虎太郎君はポメラニアン!

結城れい

文字の大きさ
上 下
13 / 64

13 大学

しおりを挟む
 虎太郎は、夏季休暇も終わり大学も始まっていたため、ひとまず大学の友達に相談してみることにした。
 熊田明人くまだあきと馬場陽平ばばようへいの2人は、虎太郎が都会に出てきて初めてできた友達だ。
 同じ学部で、入学ガイダンスの時に知り合ってから仲良くなった。2人とも髪の毛を金色に染めていてピアスをつけていたため、見かけはとても怖い。虎太郎は最初2人を見かけたとき、怖くて自分からは話しかけられなかった。ただ、ガイダンスで近くの席に座っていたため、2人から話しかけられたのだ。虎太郎が恐る恐る返事を返してみると、まったく怖くなく、むしろとても優しかった。
 都会に出てきて右も左も分かっていなかった虎太郎に対して、馬鹿にせずに色々と教えてくれたのだ。そこから2人と仲良くなり、同じ講義を取っている際は一緒に受けたり、お昼ご飯を一緒に食べたりするようになったのだ。
 2人は高校からの友達で現在はルームシェアをしており、虎太郎も何度か2人の部屋に遊びに行ったことがある。

「おはよう、虎太郎」
「おはよう熊田君。あれ、馬場君は?」

 講義室で虎太郎がいつもの席に座っていると、金髪頭で背の高い熊田が1人でやってきた。

「何度起こしても起きなかったから、置いてきた」
「ふふっ、馬場君はいっつも起きれないね。プリント取っといてあげよう」
「いい、いい。虎太郎が甘やかすと、あいつ余計起きなくなるから」

 隣に座りながら、熊田が呆れたように言ってきた。馬場はゲームが大好きで、よく朝方までオンラインゲームで遊んでおり、朝に余裕をもって起きることができないのだ。今日のように1限目の講義がある日は、遅れてくるか時間ギリギリで滑り込んでくることが多い。

「やばいやばい、遅れたわ」

 講義の途中で後ろの扉からこっそりと入ってきた馬場は、こそこそと席に着いた後、そのまま机に伏せて寝てしまった。隣に座っていた虎太郎が起こそうとして何度か指でつついたが、まったく起きることなく講義が終わってしまう。

「馬場君、起きて! もう講義終わったよ!」

 講義が終わって人がいなくなっても眠り続けている馬場を両手でゆすりながら、虎太郎は声をかける。

「……ううん。起きてる」

 目を閉じたまま小さな声で返事を返してくる馬場の頭を、熊田が勢いよく叩いた。

「いってぇ!!」
「さっさと起きろや」

 後頭部をさすりながら体を起こした馬場はむくれながら、「叩くことないだろ」と文句を言っていたが、熊田に睨まれて口を閉ざした。

「虎太郎。こいつは置いて先に昼飯行こうぜ。いまなら食堂も空いているだろうし」
「うん! ご飯行こう!」
「まってまって。ごめんって」

 カバンを持って講義室を出ていく2人を、馬場が慌てて追いかけてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

ポメった幼馴染をモフる話

鑽孔さんこう
BL
ポメガバースBLです! 大学生の幼馴染2人は恋人同士で同じ家に住んでいる。ある金曜日の夜、バイト帰りで疲れ切ったまま寒空の下家路につき、愛しの我が家へ着いた頃には体は冷え切っていた。家の中では恋人の居川仁が帰りを待ってくれているはずだが、家の外から人の気配は感じられない。聞きそびれていた用事でもあったか、と思考を巡らせながら家の扉を開けるとそこには…!※毎日12時投稿。全4話で完結します。2025.3.11完結しました。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...