3 / 64
03 ポメラニアン!
しおりを挟む
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえ、虎太郎は目を覚ました。
「あれ……?」
見慣れない天井が目に入る。横を見るとすごく美形の男が寝ていた。黒くて肩につくほどの長さの艶やかな髪。まるでモデルのような人が目を閉じて眠っている。
昨日のことを思い出した虎太郎は血の気が引いた。体は今は人間に戻っているが、男は昨日ポメラニアンを拾って家につれて来たと思っているはずだ。しかも、もちろん服は着ていない。全裸だ。
きっと犬用にかけてくれていたと思われるブランケットは、人間には小さく虎太郎の下半身しか隠せていない。
朝起きたら、隣に裸の男がいたらビックリするよな、と考えていると、突然高い電子音が部屋に響き渡った。
「うわっ」
男の枕元に置いてあった携帯からなっているようだ。寝ていた男が目をつぶったまま、手を伸ばし音を止めた。しばらく眉間にしわを寄せながら固まっていたが、少しずつ目が開いていく。
男と目が合った虎太郎は、咄嗟に挨拶をする。
「お、おはようございます」
「…………は?」
目を見開き、驚きに固まっていた男は、次の瞬間急いで体を起こした。
「誰だてめぇ」
睨みながら、威圧感のある低い声で問われ、虎太郎は咄嗟に正座をして姿勢を正した。
「えっと、僕は、昨日のポメラニアンです!」
「……は?」
あたりを見渡して昨日の犬を探した男は、何言ってんだこいつ、といった感じで再度こちらを睨みつける。
「出ていけ」
「……え」
「さっさとこの家から出ていけ!」
怒鳴ってきた男に慌てた虎太郎は、ベッドから転がり落ちた。
「いててて」
「――チッ」
舌打ちをした男は嫌悪感を露わに、虎太郎に告げる。
「なんで裸?」
「あ、えっと、昨日犬だったもので……」
「それ、マジで言ってんの?」
「え、どれですか?」
「てめえが犬って話だよ」
「は、はい! 本当です……」
怒鳴られて、震えながら小声で返事を返す。
昨日、お風呂に入れて優しく毛を乾かしてくれた人と同一人物だとは思えない。どうしてここまで怒鳴られているのか分からず、床に座ったままの虎太郎は動けなかった。
「……じゃあ、今すぐ犬になってみろよ、できんだろ?」
「わ、分かりました。んんっ……」
ポメラニアンには、なろうと思えばいつでもなれる。虎太郎は目をつぶり、ポメラニアンの自分を想像して力を入れる。
次に目を開けたときには、視線が低くなっていた。顔を上げると驚愕した表情の男が見える。
「ワン(なりました)」
「…………まじかよ」
しばらく見つめあっていると、驚愕から帰ってきた男が虎太郎を呼ぶ。
「こっち来てみろ」
「ワン(はい)」
慌てて、ベッドに飛び乗り男のもとへ近づく。近寄った虎太郎を抱き上げた男はそのまま体を調べ始めた。
「え、本当に昨日の犬じゃん……」
足を動かしたり、尻尾や耳を触られたり、虎太郎は抵抗せずにされるがままだ。しばらくそうして調べた後、男は虎太郎が犬になれるという事を一応信じたようだ。
「人間に戻って」
「ワン……はい」
「すげぇ」
人間に戻った虎太郎を見ても、今度は怒鳴ることはなかった。まじまじと見られて恥ずかしくなる。
「あれ……?」
見慣れない天井が目に入る。横を見るとすごく美形の男が寝ていた。黒くて肩につくほどの長さの艶やかな髪。まるでモデルのような人が目を閉じて眠っている。
昨日のことを思い出した虎太郎は血の気が引いた。体は今は人間に戻っているが、男は昨日ポメラニアンを拾って家につれて来たと思っているはずだ。しかも、もちろん服は着ていない。全裸だ。
きっと犬用にかけてくれていたと思われるブランケットは、人間には小さく虎太郎の下半身しか隠せていない。
朝起きたら、隣に裸の男がいたらビックリするよな、と考えていると、突然高い電子音が部屋に響き渡った。
「うわっ」
男の枕元に置いてあった携帯からなっているようだ。寝ていた男が目をつぶったまま、手を伸ばし音を止めた。しばらく眉間にしわを寄せながら固まっていたが、少しずつ目が開いていく。
男と目が合った虎太郎は、咄嗟に挨拶をする。
「お、おはようございます」
「…………は?」
目を見開き、驚きに固まっていた男は、次の瞬間急いで体を起こした。
「誰だてめぇ」
睨みながら、威圧感のある低い声で問われ、虎太郎は咄嗟に正座をして姿勢を正した。
「えっと、僕は、昨日のポメラニアンです!」
「……は?」
あたりを見渡して昨日の犬を探した男は、何言ってんだこいつ、といった感じで再度こちらを睨みつける。
「出ていけ」
「……え」
「さっさとこの家から出ていけ!」
怒鳴ってきた男に慌てた虎太郎は、ベッドから転がり落ちた。
「いててて」
「――チッ」
舌打ちをした男は嫌悪感を露わに、虎太郎に告げる。
「なんで裸?」
「あ、えっと、昨日犬だったもので……」
「それ、マジで言ってんの?」
「え、どれですか?」
「てめえが犬って話だよ」
「は、はい! 本当です……」
怒鳴られて、震えながら小声で返事を返す。
昨日、お風呂に入れて優しく毛を乾かしてくれた人と同一人物だとは思えない。どうしてここまで怒鳴られているのか分からず、床に座ったままの虎太郎は動けなかった。
「……じゃあ、今すぐ犬になってみろよ、できんだろ?」
「わ、分かりました。んんっ……」
ポメラニアンには、なろうと思えばいつでもなれる。虎太郎は目をつぶり、ポメラニアンの自分を想像して力を入れる。
次に目を開けたときには、視線が低くなっていた。顔を上げると驚愕した表情の男が見える。
「ワン(なりました)」
「…………まじかよ」
しばらく見つめあっていると、驚愕から帰ってきた男が虎太郎を呼ぶ。
「こっち来てみろ」
「ワン(はい)」
慌てて、ベッドに飛び乗り男のもとへ近づく。近寄った虎太郎を抱き上げた男はそのまま体を調べ始めた。
「え、本当に昨日の犬じゃん……」
足を動かしたり、尻尾や耳を触られたり、虎太郎は抵抗せずにされるがままだ。しばらくそうして調べた後、男は虎太郎が犬になれるという事を一応信じたようだ。
「人間に戻って」
「ワン……はい」
「すげぇ」
人間に戻った虎太郎を見ても、今度は怒鳴ることはなかった。まじまじと見られて恥ずかしくなる。
119
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
お人好しは無愛想ポメガを拾う
蔵持ひろ
BL
弟である夏樹の営むトリミングサロンを手伝う斎藤雪隆は、体格が人より大きい以外は平凡なサラリーマンだった。
ある日、黒毛のポメラニアンを拾って自宅に迎え入れた雪隆。そのポメラニアンはなんとポメガバース(疲労が限界に達すると人型からポメラニアンになってしまう)だったのだ。
拾われた彼は少しふてくされて、人間に戻った後もたびたび雪隆のもとを訪れる。不遜で遠慮の無いようにみえる態度に振り回される雪隆。
だけど、その生活も心地よく感じ始めて……
(無愛想なポメガ×体格大きめリーマンのお話です)

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる