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幕間⑤
閑話 ソフィー、初めての遊園地①
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「さあソフィーちゃん! 遊園地に向けて出発なのです!」
「うん、楽しみだね! 美桜ちゃん、そんなに走ると危ないよ」
言乃花たちと別れた途端、勢いが有り余った美桜が飛び跳ねながら走り回っていた。いつものようにソフィーの手を握って走り出そうとした時。
「はいはい、落ち着きましょうね。ソフィーちゃんが怪我でもしたら大変じゃない?」
「むっ、またしても捕まってしまったのです。あれ? リーゼお姉ちゃんってこんなに力が強かったですか? 前に一歩も進めないのです」
目の前に現れたのは笑顔のリーゼ。両肩に手を置かれているだけなのに、逃げ出したくても一歩も動けない。
「楽しみな気持ちはよくわかるわよ。でも今日は私も一緒だから、ソフィーちゃんを引きずり回すようなことは絶対にさせないからね!」
「誰ですか? ソフィーちゃんにそんなひどいことをする人は? 許せないのです!」
「どの口が言っているのよ! ここには一人しかいないでしょうが!」
リーゼと美桜がコントのようなやり取りを繰り広げていると、不意に服の裾を引っ張られた。二人が顔を動かすと両手を腰に当てたソフィーが立っていた。
「もう二人とも! これからせっかく遊園地に行くのに喧嘩したら『めっ』ですよ!」
「ソフィーちゃん、ごめんなさいなのです……」
「ごめんなさい……うう、ソフィーちゃんに怒られちゃったじゃないの……」
素直に頭を下げる美桜に対し、この世の終わりのような顔で膝から崩れおち、両手を地面について項垂れるリーゼ。
「リーゼお姉ちゃん、何をしているのですか? 早くヘリに乗らないと遅れるのですよ?」
「誰のせいでこうなったと思っているのよ!」
「ソフィーちゃん、リーゼお姉ちゃんも元気になったみたいなので一緒に手を繋いでいくのです」
「あ、ちょっと待ちなさい!」
リーゼが慌てて美桜を追いかけようと立ち上がると、ソフィーが左手を差し出した。
「リーゼさんも一緒に手を繋いで行きましょう」
「そうね、佐々木さんを待たせたら悪いから、三人で一緒に手を繋いで向かいましょうね」
リーゼ、ソフィー、美桜と並んで手を繋ぎ、一足先にヘリの前で待機している佐々木の元へ向かって仲良く歩き出した。
「佐々木さん、本日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますです!」
機体の隣に立ち、笑顔で軽く会釈をする佐々木に頭を下げると、目を細めながら優しい笑顔で答える。
「よろしくお願い致します。遊園地までは三十分ほどの空の旅となりますので、景色もぜひ楽しんでいただけたらと思います。ソフィーさんは海をご覧になられたことはございますか?」
「海ですか? メイと一緒に本で見たことはあります。水がたくさんあるところですよね?」
「はい、その通りです。遊園地は海に面した場所にあり、様々な生き物を見て頂ける水族館も併設されております。また海の生き物とキャラクターによるショーもございますので是非楽しんでいただければと思います」
「そ、それは本当なのですか? 水族館もあるなんて初耳なのです! 早く行くのです!」
佐々木の言葉に目を輝かせながら身を乗り出す美桜。興奮のあまりソフィーの手を繋いだままその場で再び飛び跳ねていた。
「美桜ちゃん、すごくうれしそうだね」
「早く行きたくてたまらないのです! ソフィーちゃん、良いですか? 今から行く遊園地はまだ正式にオープンしていないのですよ?」
「正式にオープンしていない……ってどういうこと?」
美桜の隣で不思議そうな顔をしているソフィー。すると佐々木が片膝を付いて目線を合わせると優しく語りかける。
「ご説明が遅れてしまいましたが、この遊園地はまだ正式開業前なのでございます。先日メディアの取材もあり、その様子を美桜様は御覧になられたのかと思います。本日は特別ゲスト様をご招待という事もあり、貸し切り状態でございますので思いっきり楽しんでいただけると思いますよ」
「いいのですか? 私たちだけで楽しんでしまっても……」
「はい、もちろんでございます。もしお気づきの点があれば後ほど私に教えていただけますでしょうか」
「わかりました! あ、メイたちにお土産を買いたいのですが……」
「大丈夫ですよ。気に入ったお土産を選んでいただけるようにたくさん準備しております」
それを聞いた三人は輝くような笑顔になり、思わずその場で一斉に飛び跳ねる。その様子を見た佐々木の口元が緩み、目を細めた。
(本当に喜んでいただけて良かったです。昔を思い出しますね、まだ玲士様が幼かったあの日……)
優しい笑顔のままサッと立ち上がると、ピンク色をした機体の隣に立って扉を開ける。
「それでは皆様、そろそろ出発いたしましょう」
「「「はい!」」」
佐々木が運転席に座ると冬夜たちを乗せたヘリから無線が入る。
「佐々木、三人には言ってなかったけれど園内のホテルに部屋を用意させてあるから説明しておいてね」
「了承いたしました。きっと喜ばれると思います」
「頼んだわよ。あと……玲士のいる病院へ連絡をお願いできるかしら? 医療チームをこちらに派遣できるように準備しておくようにと。万が一のことがないとも言えないから……」
「承知いたしました、手配いたします」
「仕事が早くて助かるわ、じゃあ、よろしくね」
「奥様もお気をつけて……」
無線を切ると小さく息を吐く。ガラス越しに後ろの席を見ると満面の笑みを浮かべてはしゃいでいる三人の姿が見えた。
「皆様、出発いたします。シートベルトをお締めください。飛行中は揺れることもございますので席をお立ちにならないようにお願いいたします」
エンジン音が響き、プロペラが回り始めるとゆっくり機体が地面から離れていく。三人を乗せたヘリは遊園地に向けて旅立ち始めた。
遊園地のお土産を巡って言乃花から大目玉をくらうことになるとは微塵を思ってもいないリーゼだった……
「うん、楽しみだね! 美桜ちゃん、そんなに走ると危ないよ」
言乃花たちと別れた途端、勢いが有り余った美桜が飛び跳ねながら走り回っていた。いつものようにソフィーの手を握って走り出そうとした時。
「はいはい、落ち着きましょうね。ソフィーちゃんが怪我でもしたら大変じゃない?」
「むっ、またしても捕まってしまったのです。あれ? リーゼお姉ちゃんってこんなに力が強かったですか? 前に一歩も進めないのです」
目の前に現れたのは笑顔のリーゼ。両肩に手を置かれているだけなのに、逃げ出したくても一歩も動けない。
「楽しみな気持ちはよくわかるわよ。でも今日は私も一緒だから、ソフィーちゃんを引きずり回すようなことは絶対にさせないからね!」
「誰ですか? ソフィーちゃんにそんなひどいことをする人は? 許せないのです!」
「どの口が言っているのよ! ここには一人しかいないでしょうが!」
リーゼと美桜がコントのようなやり取りを繰り広げていると、不意に服の裾を引っ張られた。二人が顔を動かすと両手を腰に当てたソフィーが立っていた。
「もう二人とも! これからせっかく遊園地に行くのに喧嘩したら『めっ』ですよ!」
「ソフィーちゃん、ごめんなさいなのです……」
「ごめんなさい……うう、ソフィーちゃんに怒られちゃったじゃないの……」
素直に頭を下げる美桜に対し、この世の終わりのような顔で膝から崩れおち、両手を地面について項垂れるリーゼ。
「リーゼお姉ちゃん、何をしているのですか? 早くヘリに乗らないと遅れるのですよ?」
「誰のせいでこうなったと思っているのよ!」
「ソフィーちゃん、リーゼお姉ちゃんも元気になったみたいなので一緒に手を繋いでいくのです」
「あ、ちょっと待ちなさい!」
リーゼが慌てて美桜を追いかけようと立ち上がると、ソフィーが左手を差し出した。
「リーゼさんも一緒に手を繋いで行きましょう」
「そうね、佐々木さんを待たせたら悪いから、三人で一緒に手を繋いで向かいましょうね」
リーゼ、ソフィー、美桜と並んで手を繋ぎ、一足先にヘリの前で待機している佐々木の元へ向かって仲良く歩き出した。
「佐々木さん、本日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますです!」
機体の隣に立ち、笑顔で軽く会釈をする佐々木に頭を下げると、目を細めながら優しい笑顔で答える。
「よろしくお願い致します。遊園地までは三十分ほどの空の旅となりますので、景色もぜひ楽しんでいただけたらと思います。ソフィーさんは海をご覧になられたことはございますか?」
「海ですか? メイと一緒に本で見たことはあります。水がたくさんあるところですよね?」
「はい、その通りです。遊園地は海に面した場所にあり、様々な生き物を見て頂ける水族館も併設されております。また海の生き物とキャラクターによるショーもございますので是非楽しんでいただければと思います」
「そ、それは本当なのですか? 水族館もあるなんて初耳なのです! 早く行くのです!」
佐々木の言葉に目を輝かせながら身を乗り出す美桜。興奮のあまりソフィーの手を繋いだままその場で再び飛び跳ねていた。
「美桜ちゃん、すごくうれしそうだね」
「早く行きたくてたまらないのです! ソフィーちゃん、良いですか? 今から行く遊園地はまだ正式にオープンしていないのですよ?」
「正式にオープンしていない……ってどういうこと?」
美桜の隣で不思議そうな顔をしているソフィー。すると佐々木が片膝を付いて目線を合わせると優しく語りかける。
「ご説明が遅れてしまいましたが、この遊園地はまだ正式開業前なのでございます。先日メディアの取材もあり、その様子を美桜様は御覧になられたのかと思います。本日は特別ゲスト様をご招待という事もあり、貸し切り状態でございますので思いっきり楽しんでいただけると思いますよ」
「いいのですか? 私たちだけで楽しんでしまっても……」
「はい、もちろんでございます。もしお気づきの点があれば後ほど私に教えていただけますでしょうか」
「わかりました! あ、メイたちにお土産を買いたいのですが……」
「大丈夫ですよ。気に入ったお土産を選んでいただけるようにたくさん準備しております」
それを聞いた三人は輝くような笑顔になり、思わずその場で一斉に飛び跳ねる。その様子を見た佐々木の口元が緩み、目を細めた。
(本当に喜んでいただけて良かったです。昔を思い出しますね、まだ玲士様が幼かったあの日……)
優しい笑顔のままサッと立ち上がると、ピンク色をした機体の隣に立って扉を開ける。
「それでは皆様、そろそろ出発いたしましょう」
「「「はい!」」」
佐々木が運転席に座ると冬夜たちを乗せたヘリから無線が入る。
「佐々木、三人には言ってなかったけれど園内のホテルに部屋を用意させてあるから説明しておいてね」
「了承いたしました。きっと喜ばれると思います」
「頼んだわよ。あと……玲士のいる病院へ連絡をお願いできるかしら? 医療チームをこちらに派遣できるように準備しておくようにと。万が一のことがないとも言えないから……」
「承知いたしました、手配いたします」
「仕事が早くて助かるわ、じゃあ、よろしくね」
「奥様もお気をつけて……」
無線を切ると小さく息を吐く。ガラス越しに後ろの席を見ると満面の笑みを浮かべてはしゃいでいる三人の姿が見えた。
「皆様、出発いたします。シートベルトをお締めください。飛行中は揺れることもございますので席をお立ちにならないようにお願いいたします」
エンジン音が響き、プロペラが回り始めるとゆっくり機体が地面から離れていく。三人を乗せたヘリは遊園地に向けて旅立ち始めた。
遊園地のお土産を巡って言乃花から大目玉をくらうことになるとは微塵を思ってもいないリーゼだった……
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