136 / 164
第五章 虚空記録層(アカシックレコード)
第17話 結界に隔てられた六人
しおりを挟む
「レアさん、気分がすぐれないのでここで待っていても良いですか?」
窓の外を向いたまま言乃花が運転席に座るレアへ話しかける。
「どうしたの? すぐにドアを開けるから待っていてね」
運転席に座るレアの表情は伺い知れないが、いつもと変わらぬ様子でドアを開けるため先に降りていった。
「そうっすよ、冬夜さんのご家族の方をお待たせするわけにもいかないですし。熱烈な歓迎されてるじゃないっすか」
隣に座るレイスはニヤニヤした表情をしながら煽ってくる。
「レイス……あとで覚えておきなさいよ」
言乃花がレイスを睨みつけるが、全く意に介していないレイス。しばらくすると乗り込み口のドアが開き、レアから声がかかる。
「お待たせ! 冬夜くんたちから順番に降りてきてね」
「わかりました。メイ、降りようか」
「うん」
冬夜とメイがシートベルトを外し、搭乗口から降り始めたタイミングでレイスが言乃花に小声で耳打ちをする。
「言乃花さん、ちょっと警戒しておいた方がいいっすよ」
「突然どうしたの?」
「あとで詳しく話しますが……何か胸騒ぎが収まらないんすよね」
先ほどまでのおどけた口調は消え去り、うっすらと開けられた目から鋭い視線が搭乗口の外へ向けられている。緊迫した雰囲気を感じ取った言乃花が無言で頷き、冬夜たちに続いてドアに左手をかけ降りようとした時だった
「言乃花ちゃん、あなたの騎士である一布がエスコートいたしましょう! さあ、いつでも僕の胸に……」
「そこをどきなさい! 一人で降りられるし、エスコートなんていらないのよ!」
とっさに右手に魔力をまとうと一布めがけて一気に振り抜く。
「ふふふ、今までの僕とは違うところを見せてあげよう! 見切った!」
とっさに体をひねり、言乃花の放った一撃を紙一重でかわす。かわされた魔力は轟音と共に広いヘリポートを駆け抜けていった。
「なかなかやるじゃない……少しは成長しているようね?」
「当たり前じゃないか! いつまでもやられっぱなしの僕じゃないからね」
「ふーん、でも……まだまだね」
言乃花は言い終えると同時に突き出していた右手を下に向ける。すると先ほど放った魔力が一布の真上に出現し、脳天を直撃する。
「まさか……避けたと思ったのに……」
直撃を受けた一布は手を広げて迎え入れようとした姿勢でそのまま言乃花へ抱きつくように倒れこんだ。
「ちょっと……なんで抱きついてくるのよ! いい加減にしなさい!」
突然のことに驚いた言乃花は顔を真っ赤にしながら再び右手に魔力を込めて一布を大空へ打ち上げた。
「やっぱり言乃花ちゃんはいい香り……」
「ちょっと言乃花さん、まずいっすよ」
勢いよく落下してくる一布を見てレイスが瞬時に駆け出して落下地点に先回りする。
「レイスくん、いつもごめんね……」
「大丈夫っすか? 一布さんも学習しましょうよ」
地面に落下する直前でレイスが飛び上がり、空中で一布を抱きかかえるとゆっくり地上に降り立つ。一布を地面に下ろすとすぐに言乃花も駆けつけてきた。
「レイス、ごめんなさい。風魔法で怪我をしないようにはしていたんだけど……」
「そういう問題じゃないっすよ。怒るのはわかるっすけど、ほどほどにしておかないと大変なことになるっすから。一布さんも一布さんっす」
「申し訳ない……」
「ごめんなさい……」
珍しく怒りをあらわにするレイスに肩を落としながら頭を下げる二人。その時、聞き覚えのある声がヘリポート内に響き渡った。
「……仲間割れとは面白いことになっていますね」
「まさか……しまった! 冬夜さんとメイさんが危ないっす!」
レイスが慌てて冬夜たちの元へ駆けだそうした時、頭の中を引っ掻き回されるような音が響き渡り、耐えきれずに目を閉じてしまう。
「あらあら、もうギブアップですか? 楽しみはこれから始まるのですよ」
レイスが目を開けると先ほどまで広がっていた青空はなくなり、虹色のドーム状をした結界の中にいた。そして二メートルほど離れた位置に右手にナイフを持ち、ノルンと似たような姿をした女性が一人。
「初めましての方もいらっしゃいますね、私の名はアビー。ノルンお姉さまのお仕事が終わるまで遊んで差し上げますわ。さあ、甘美な悲鳴と絶望に染まる顔をたくさん見せて私を楽しませてください」
愉悦な笑みを浮かべ三人を見つめるアビー。
彼女たちの目的とは一体……?
窓の外を向いたまま言乃花が運転席に座るレアへ話しかける。
「どうしたの? すぐにドアを開けるから待っていてね」
運転席に座るレアの表情は伺い知れないが、いつもと変わらぬ様子でドアを開けるため先に降りていった。
「そうっすよ、冬夜さんのご家族の方をお待たせするわけにもいかないですし。熱烈な歓迎されてるじゃないっすか」
隣に座るレイスはニヤニヤした表情をしながら煽ってくる。
「レイス……あとで覚えておきなさいよ」
言乃花がレイスを睨みつけるが、全く意に介していないレイス。しばらくすると乗り込み口のドアが開き、レアから声がかかる。
「お待たせ! 冬夜くんたちから順番に降りてきてね」
「わかりました。メイ、降りようか」
「うん」
冬夜とメイがシートベルトを外し、搭乗口から降り始めたタイミングでレイスが言乃花に小声で耳打ちをする。
「言乃花さん、ちょっと警戒しておいた方がいいっすよ」
「突然どうしたの?」
「あとで詳しく話しますが……何か胸騒ぎが収まらないんすよね」
先ほどまでのおどけた口調は消え去り、うっすらと開けられた目から鋭い視線が搭乗口の外へ向けられている。緊迫した雰囲気を感じ取った言乃花が無言で頷き、冬夜たちに続いてドアに左手をかけ降りようとした時だった
「言乃花ちゃん、あなたの騎士である一布がエスコートいたしましょう! さあ、いつでも僕の胸に……」
「そこをどきなさい! 一人で降りられるし、エスコートなんていらないのよ!」
とっさに右手に魔力をまとうと一布めがけて一気に振り抜く。
「ふふふ、今までの僕とは違うところを見せてあげよう! 見切った!」
とっさに体をひねり、言乃花の放った一撃を紙一重でかわす。かわされた魔力は轟音と共に広いヘリポートを駆け抜けていった。
「なかなかやるじゃない……少しは成長しているようね?」
「当たり前じゃないか! いつまでもやられっぱなしの僕じゃないからね」
「ふーん、でも……まだまだね」
言乃花は言い終えると同時に突き出していた右手を下に向ける。すると先ほど放った魔力が一布の真上に出現し、脳天を直撃する。
「まさか……避けたと思ったのに……」
直撃を受けた一布は手を広げて迎え入れようとした姿勢でそのまま言乃花へ抱きつくように倒れこんだ。
「ちょっと……なんで抱きついてくるのよ! いい加減にしなさい!」
突然のことに驚いた言乃花は顔を真っ赤にしながら再び右手に魔力を込めて一布を大空へ打ち上げた。
「やっぱり言乃花ちゃんはいい香り……」
「ちょっと言乃花さん、まずいっすよ」
勢いよく落下してくる一布を見てレイスが瞬時に駆け出して落下地点に先回りする。
「レイスくん、いつもごめんね……」
「大丈夫っすか? 一布さんも学習しましょうよ」
地面に落下する直前でレイスが飛び上がり、空中で一布を抱きかかえるとゆっくり地上に降り立つ。一布を地面に下ろすとすぐに言乃花も駆けつけてきた。
「レイス、ごめんなさい。風魔法で怪我をしないようにはしていたんだけど……」
「そういう問題じゃないっすよ。怒るのはわかるっすけど、ほどほどにしておかないと大変なことになるっすから。一布さんも一布さんっす」
「申し訳ない……」
「ごめんなさい……」
珍しく怒りをあらわにするレイスに肩を落としながら頭を下げる二人。その時、聞き覚えのある声がヘリポート内に響き渡った。
「……仲間割れとは面白いことになっていますね」
「まさか……しまった! 冬夜さんとメイさんが危ないっす!」
レイスが慌てて冬夜たちの元へ駆けだそうした時、頭の中を引っ掻き回されるような音が響き渡り、耐えきれずに目を閉じてしまう。
「あらあら、もうギブアップですか? 楽しみはこれから始まるのですよ」
レイスが目を開けると先ほどまで広がっていた青空はなくなり、虹色のドーム状をした結界の中にいた。そして二メートルほど離れた位置に右手にナイフを持ち、ノルンと似たような姿をした女性が一人。
「初めましての方もいらっしゃいますね、私の名はアビー。ノルンお姉さまのお仕事が終わるまで遊んで差し上げますわ。さあ、甘美な悲鳴と絶望に染まる顔をたくさん見せて私を楽しませてください」
愉悦な笑みを浮かべ三人を見つめるアビー。
彼女たちの目的とは一体……?
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
都市伝説と呼ばれて
松虫大
ファンタジー
アルテミラ王国の辺境カモフの地方都市サザン。
この街では十年程前からある人物の噂が囁かれていた。
曰く『領主様に隠し子がいるらしい』
曰く『領主様が密かに匿い、人知れず塩坑の奥で育てている子供がいるそうだ』
曰く『かつて暗殺された子供が、夜な夜な復習するため街を徘徊しているらしい』
曰く『路地裏や屋根裏から覗く目が、言うことを聞かない子供をさらっていく』
曰く『領主様の隠し子が、フォレスの姫様を救ったそうだ』等々・・・・
眉唾な噂が大半であったが、娯楽の少ない土地柄だけにその噂は尾鰭を付けて広く広まっていた。
しかし、その子供の姿を実際に見た者は誰もおらず、その存在を信じる者はほとんどいなかった。
いつしかその少年はこの街の都市伝説のひとつとなっていた。
ある年、サザンの春の市に現れた金髪の少年は、街の暴れん坊ユーリに目を付けられる。
この二人の出会いをきっかけに都市伝説と呼ばれた少年が、本当の伝説へと駆け上っていく異世界戦記。
小説家になろう、カクヨムでも公開してましたが、この度アルファポリスでも公開することにしました。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話
亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる