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幕間④
閑話 リーゼの誤算②
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「メイ、見て見て! お部屋の中もすごく広いよ!」
「ほんとだ! こんなに広い部屋……私たちだけで使っていいのかな?」
部屋のドアを開けたメイとソフィーの楽しそうな声が廊下にまで響いている。そんな二人の様子を斜め向かいにある部屋のジッと見つめる人物が……
「ふふふ……ソフィーちゃんたちが部屋に着いたみたいね。あとは温泉に向かう時に先回りすれば完璧だわ」
ドアの隙間から二人の様子を覗いていたのは、言わずとも知れたリーゼ。
「言乃花も疲れて部屋で休んでいるし、邪魔する者は誰もいない。ソフィーちゃんを独り占めできる最大のチャンスよ! うふふ……」
不気味な笑い声が部屋の中から廊下まで届く。しかし、リーゼにとって思わぬ誤算が生じる。
「またリーゼが変なことを企んでいるわね……あ、いつもの事なので気にしないでください」
「かしこまりました」
頼んでいた飲み物を使用人から受け取っていた言乃花にしっかり聞かれていたのだ。使用人は動じることなく言乃花へ一礼すると立ち去った。
「まったく……何を企んでいるのかは知らないけれど、今はゆっくり休ませてもらうわ。夕食の後に捕まえて聞けばいいでしょう」
小さく息を吐きながら部屋の中に入る言乃花。この時は知る由もなかった、すぐにリーゼを問いたださなかったことを激しく後悔するなどとは……
「メイ、そろそろ温泉に向かうけど一緒に行くか?」
「うん、もう準備出来ているからすぐ行くよ!」
温泉まで一緒に行く約束をしていた冬夜がメイたちの部屋を訪れた。
「なるほど、三人で温泉に向かうのね」
息を潜めてジッとうかがうリーゼ。背中に突き刺さる視線を感じた冬夜が素速く振り向いたが、僅差でドアを閉め難を逃れた。
「冬夜くん、お待たせ。あれ? 険しい顔をしてどうしたの?」
「いや、なんか奇妙な視線を感じて……まるで誰かに監視されているような」
「私は何も感じないけど……ソフィーは?」
「何も感じないよ、気のせいじゃない? それよりも早く温泉にいこうよ!」
笑顔でソフィーがメイの右手と冬夜の左手を握るとグイグイと引っ張って歩き出した。
「そうだな。まずは温泉に入ってゆっくりしようぜ」
「うん! ソフィーはずっと楽しみにしていたもんね」
三人の姿が完全に見えなくなると、部屋からリーゼが不敵な笑みを浮かべながら出てくる。
「ここからが勝負よ! 佐々木さんに聞いた使用人専用エレベーターで一気に先回りするわ!」
廊下中にリーゼの高笑いが響き、冬夜たちとは反対方向へ猛ダッシュで走り出した。使用人専用のエレベーターに乗ると、最上階の七階へ先回りする。
「ちょっと早く来すぎたかしら? まだソフィーちゃんたちは着いてなさそうね。さて、先に温泉につかりながらのんびり待つとしましょう」
そう言うと、女湯と書かれた暖簾をくぐった。内湯を通り抜け、露天風呂に続く引き戸を開けると、岩を組み合わせて造られた露天風呂の先に現実世界の街並みが一望できる。
「すごい! 絶景じゃないの! 早くソフィーちゃんと一緒に見たいわ」
感激しながらゆっくりと温泉に入るリーゼ。
「ちょうどいい湯加減じゃない。今日は、いろいろあったわね……安心したら眠くなってきたわ。ソフィーちゃんたち、もうすぐ、来る、か……な……」
疲れ果てたリーゼに睡魔が襲い掛かり、ゆっくりとまぶたが閉じられていく……
一時間後、温泉のあるフロアに楽しそうな声が聞こえる。
「まさか新作のケーキを食べさせてもらえるなんてラッキーだよな」
「うん! 虹色ソーダも美味しかったよね」
「夕食にもたくさんデザートを用意してもらえるって聞いたからすごく楽しみ!」
冬夜たちは温泉に向かう途中、佐々木に呼び止められていた。
「冬夜様、メイ様、ソフィー様。よろしければご協力いただけないでしょうか?」
料理長のお願いで、近日発売予定の新作スイーツ試食会に飛び入り参加することになったのだ。何種類ものケーキが並ぶ中、うさぎの形をした真っ白なケーキをソフィーがすごく気に入り、「幸せうさぎ」の名称で採用されることになった。しばらく料理長たちと歓談した後、幸せな気持ちで三人は温泉のあるフロアーに到着した。
「じゃあ、男湯はこっちだからまたあとでな」
「冬夜くんもゆっくりして来てね。ソフィー、行こうか」
「うん!」
メイたちが暖簾をくぐると入口に一足の靴が並んでいた。
「この靴ってリーゼさんかな?」
「リーゼさんも温泉に来ているのね! ケーキのことを話さなきゃ!」
二人が露天風呂へ続く引き戸を開けると衝撃の光景が飛び込んできた。
「リーゼさん! しっかりしてください!」
「ソフィーはリーゼさんのそばにいて! 私は言乃花さんを呼んでくるから」
全身が真っ赤になり、露天風呂の岩にもたれぐったりしているリーゼに大慌てになった。数分後、駆け付けた言乃花によって助け出されたリーゼ。重度の脱水症状で危険な状態ではあったが、保養所に待機してい医療スタッフの適切な処置のおかげですぐに回復することができた。
「なんでお風呂で寝ちゃったのかしら?」
夕食を終えた後、きっちり言乃花の部屋に呼び出された。正座させられて項垂れるリーゼと対面には笑みを浮かべた言乃花。
「えっと……話すと長くなる深い事情がありまして……」
言乃花による説教は一時間以上になり、足が痺れて動けなくなったリーゼが部屋に戻るにはさらに時間を有するのだった。
「なんでこんなことになったのよー!」
今日もリーゼの悲痛な叫び声が保養所内に響いていた。
「ほんとだ! こんなに広い部屋……私たちだけで使っていいのかな?」
部屋のドアを開けたメイとソフィーの楽しそうな声が廊下にまで響いている。そんな二人の様子を斜め向かいにある部屋のジッと見つめる人物が……
「ふふふ……ソフィーちゃんたちが部屋に着いたみたいね。あとは温泉に向かう時に先回りすれば完璧だわ」
ドアの隙間から二人の様子を覗いていたのは、言わずとも知れたリーゼ。
「言乃花も疲れて部屋で休んでいるし、邪魔する者は誰もいない。ソフィーちゃんを独り占めできる最大のチャンスよ! うふふ……」
不気味な笑い声が部屋の中から廊下まで届く。しかし、リーゼにとって思わぬ誤算が生じる。
「またリーゼが変なことを企んでいるわね……あ、いつもの事なので気にしないでください」
「かしこまりました」
頼んでいた飲み物を使用人から受け取っていた言乃花にしっかり聞かれていたのだ。使用人は動じることなく言乃花へ一礼すると立ち去った。
「まったく……何を企んでいるのかは知らないけれど、今はゆっくり休ませてもらうわ。夕食の後に捕まえて聞けばいいでしょう」
小さく息を吐きながら部屋の中に入る言乃花。この時は知る由もなかった、すぐにリーゼを問いたださなかったことを激しく後悔するなどとは……
「メイ、そろそろ温泉に向かうけど一緒に行くか?」
「うん、もう準備出来ているからすぐ行くよ!」
温泉まで一緒に行く約束をしていた冬夜がメイたちの部屋を訪れた。
「なるほど、三人で温泉に向かうのね」
息を潜めてジッとうかがうリーゼ。背中に突き刺さる視線を感じた冬夜が素速く振り向いたが、僅差でドアを閉め難を逃れた。
「冬夜くん、お待たせ。あれ? 険しい顔をしてどうしたの?」
「いや、なんか奇妙な視線を感じて……まるで誰かに監視されているような」
「私は何も感じないけど……ソフィーは?」
「何も感じないよ、気のせいじゃない? それよりも早く温泉にいこうよ!」
笑顔でソフィーがメイの右手と冬夜の左手を握るとグイグイと引っ張って歩き出した。
「そうだな。まずは温泉に入ってゆっくりしようぜ」
「うん! ソフィーはずっと楽しみにしていたもんね」
三人の姿が完全に見えなくなると、部屋からリーゼが不敵な笑みを浮かべながら出てくる。
「ここからが勝負よ! 佐々木さんに聞いた使用人専用エレベーターで一気に先回りするわ!」
廊下中にリーゼの高笑いが響き、冬夜たちとは反対方向へ猛ダッシュで走り出した。使用人専用のエレベーターに乗ると、最上階の七階へ先回りする。
「ちょっと早く来すぎたかしら? まだソフィーちゃんたちは着いてなさそうね。さて、先に温泉につかりながらのんびり待つとしましょう」
そう言うと、女湯と書かれた暖簾をくぐった。内湯を通り抜け、露天風呂に続く引き戸を開けると、岩を組み合わせて造られた露天風呂の先に現実世界の街並みが一望できる。
「すごい! 絶景じゃないの! 早くソフィーちゃんと一緒に見たいわ」
感激しながらゆっくりと温泉に入るリーゼ。
「ちょうどいい湯加減じゃない。今日は、いろいろあったわね……安心したら眠くなってきたわ。ソフィーちゃんたち、もうすぐ、来る、か……な……」
疲れ果てたリーゼに睡魔が襲い掛かり、ゆっくりとまぶたが閉じられていく……
一時間後、温泉のあるフロアに楽しそうな声が聞こえる。
「まさか新作のケーキを食べさせてもらえるなんてラッキーだよな」
「うん! 虹色ソーダも美味しかったよね」
「夕食にもたくさんデザートを用意してもらえるって聞いたからすごく楽しみ!」
冬夜たちは温泉に向かう途中、佐々木に呼び止められていた。
「冬夜様、メイ様、ソフィー様。よろしければご協力いただけないでしょうか?」
料理長のお願いで、近日発売予定の新作スイーツ試食会に飛び入り参加することになったのだ。何種類ものケーキが並ぶ中、うさぎの形をした真っ白なケーキをソフィーがすごく気に入り、「幸せうさぎ」の名称で採用されることになった。しばらく料理長たちと歓談した後、幸せな気持ちで三人は温泉のあるフロアーに到着した。
「じゃあ、男湯はこっちだからまたあとでな」
「冬夜くんもゆっくりして来てね。ソフィー、行こうか」
「うん!」
メイたちが暖簾をくぐると入口に一足の靴が並んでいた。
「この靴ってリーゼさんかな?」
「リーゼさんも温泉に来ているのね! ケーキのことを話さなきゃ!」
二人が露天風呂へ続く引き戸を開けると衝撃の光景が飛び込んできた。
「リーゼさん! しっかりしてください!」
「ソフィーはリーゼさんのそばにいて! 私は言乃花さんを呼んでくるから」
全身が真っ赤になり、露天風呂の岩にもたれぐったりしているリーゼに大慌てになった。数分後、駆け付けた言乃花によって助け出されたリーゼ。重度の脱水症状で危険な状態ではあったが、保養所に待機してい医療スタッフの適切な処置のおかげですぐに回復することができた。
「なんでお風呂で寝ちゃったのかしら?」
夕食を終えた後、きっちり言乃花の部屋に呼び出された。正座させられて項垂れるリーゼと対面には笑みを浮かべた言乃花。
「えっと……話すと長くなる深い事情がありまして……」
言乃花による説教は一時間以上になり、足が痺れて動けなくなったリーゼが部屋に戻るにはさらに時間を有するのだった。
「なんでこんなことになったのよー!」
今日もリーゼの悲痛な叫び声が保養所内に響いていた。
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