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幕間③
閑話 ソフィーの願いが起こした奇跡
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ランチを終えた三人は噴水前広場のベンチで座って休んでいた。
「今日のランチもすごくおいしかったね」
「うん! お店の店員さんもすっごく優しくていい人ばかりでした。リーゼさんがおすすめするお店は全部お気に入りです!」
「二人に喜んでもらえてうれしいわ! ……ごめんなさい、ほんとはゆっくり散策しながら向かう予定だったのに……」
二人が心配そうな顔をしたため、慌てて話題を変えるリーゼ。
「それにしても変ね。あそこのお店は人気があるからいつもにぎわっているけど、ランチの時間が終わっているのに長蛇の列なんて……カフェの営業でも始めたのかしら?」
リーゼが不思議に思うのも無理はなかった。ランチ終了後は夕方まで休みなのだが、今日は客足が途絶えなかったのだ。三人が理由を知ることになるのはしばらく先の話になる。
「次はリーゼさんのおすすめのお店を全部回りたいです!」
「ソフィーちゃんが言うなら行くしかないわね! 全部となると何日必要かしら……」
ブツブツとつぶやきながら考え込むリーゼ。そのとき、メイとソフィーの足元にピンク色をした大きめのボールが転がってきた。ソフィーが拾うと広場の奥から五歳くらいの小さな女の子が走ってくる。
「わぁ、ウサギさんだ! 私のボール拾ってくれてありがとう」
「はい、どうぞ」
ソフィーがボールを渡そうと手を差し出すと、女の子がその両手をギュッと握り、笑顔で話しかけてきた。
「うさぎさん、いっしょに遊ぼ!」
「ねえ、メイ。少しくらいなら大丈夫だよね?」
「リーゼさんは何か考え事をしているみたいだし、遊んでおいでよ」
手をつないだソフィーと女の子は少し離れたところでボール投げをして遊び始める。二人の様子を優しい微笑みを浮かべて見守るメイ。しばらくすると女の子を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、お母さんが呼んでるから行かなきゃ! うさぎさん、遊んでくれてありがとう」
「私も楽しかったよ。また一緒に遊ぼうね!」
「うん! またね」
女の子はニコニコとして手を振りながらお母さんのもとへ走っていった。いつの間にかリーゼも優しい顔で女の子を見送っている。
「二人ともお疲れ様。きっと女の子にとって忘れられないいい思い出になったと思うわ」
「楽しんでもらえたならうれしいですね」
「私もすっごく楽しかったです!」
女の子の姿が見えなくなるとリーゼが二人に切り出した。
「そろそろお土産を受け取りに行きましょう。出来上がっているはずだから」
「「はい、行きましょう!」」
三人は前日に立ち寄ったアクセサリー専門店に向けて歩き出した。
「お待たせしました。こちらがご注文いただいていたネックレスになります」
ソフィーの前に水色の丸い水晶をあしらったネックレスが四本並んでいる。
「あれ? これだとチェーンの所が少し短くない?」
「大丈夫ですよ。こちらのチェーンはつける方に合わせて自在に長さが調節される魔法が付与されています」
「すごい! ありがとうございます!」
「どういたしまして。ではプレゼント用に包みますので、お待ちください」
しばらくすると赤、青、黄色、ピンクのリボンで飾られた箱が並べられた。
「お渡しするときに一目でわかるように色別のお控えを書いておきました。皆様に幸福の風が訪れますように」
「ありがとうございます!」
三人は商品を受け取ると上機嫌でお店を後にした。待ち合わせの駐車場に着くとエミリアが待っていた。車に乗った三人は今日の出来事を話しながら研究所に戻る。宿泊施設に着くとメイとリーゼはエミリアの手伝いを頼まれ出かけたため、ソフィーはリビングのソファーに座り、お土産の並べて整理をしていた。
「ソフィーちゃん、お目当てのものは買えたかな?」
「学園長、いつお見えになったのですか?」
振り返るとニコニコした学園長が立っていた。
「近くに来たからちょっと顔出しにね。そうだ! せっかくだからうさみちゃんにお土産を届けにいこうか?」
「え? 行けるんですか? でも突然いなくなったらみんなびっくりしないですか?」
「少しくらいなら大丈夫だと思うよ。ソフィーちゃん、うさみちゃんのお土産はどれにするか決まっているかな?」
「はい、このピンクのリボンです」
「よし、じゃあ手をつなごうか。次元回廊開け」
学園長の声と共に大きな鏡が現れる。
「では、一緒に行こうか。鏡の向こうはうさみちゃんのいる場所と繋がっているよ。少しだけならお話もできるから楽しんでおいで」
「はい!」
鏡から出るとそこは見たこともない森の中だった。学園長の案内されてからしばらく歩くと茂みの向こう側に特徴のある二本の耳が見える。
「うさみちゃん!」
「え! ソフィーちゃん? 何でここにいるの?」
「お土産を届けに来たんだよ! また会えてうれしい!」
楽しい笑い声が森に響く。木陰から二人の様子を見守る学園長。
「まだまだ面白いことがたくさんあるね。さあ、ここからが本番だ。君たちが描く未来を見せてくれ」
学園長のつぶやきは木々の葉音にかき消されていく。
小さな出会いが起こした奇跡はこれからも続いていく。
「今日のランチもすごくおいしかったね」
「うん! お店の店員さんもすっごく優しくていい人ばかりでした。リーゼさんがおすすめするお店は全部お気に入りです!」
「二人に喜んでもらえてうれしいわ! ……ごめんなさい、ほんとはゆっくり散策しながら向かう予定だったのに……」
二人が心配そうな顔をしたため、慌てて話題を変えるリーゼ。
「それにしても変ね。あそこのお店は人気があるからいつもにぎわっているけど、ランチの時間が終わっているのに長蛇の列なんて……カフェの営業でも始めたのかしら?」
リーゼが不思議に思うのも無理はなかった。ランチ終了後は夕方まで休みなのだが、今日は客足が途絶えなかったのだ。三人が理由を知ることになるのはしばらく先の話になる。
「次はリーゼさんのおすすめのお店を全部回りたいです!」
「ソフィーちゃんが言うなら行くしかないわね! 全部となると何日必要かしら……」
ブツブツとつぶやきながら考え込むリーゼ。そのとき、メイとソフィーの足元にピンク色をした大きめのボールが転がってきた。ソフィーが拾うと広場の奥から五歳くらいの小さな女の子が走ってくる。
「わぁ、ウサギさんだ! 私のボール拾ってくれてありがとう」
「はい、どうぞ」
ソフィーがボールを渡そうと手を差し出すと、女の子がその両手をギュッと握り、笑顔で話しかけてきた。
「うさぎさん、いっしょに遊ぼ!」
「ねえ、メイ。少しくらいなら大丈夫だよね?」
「リーゼさんは何か考え事をしているみたいだし、遊んでおいでよ」
手をつないだソフィーと女の子は少し離れたところでボール投げをして遊び始める。二人の様子を優しい微笑みを浮かべて見守るメイ。しばらくすると女の子を呼ぶ声が聞こえた。
「あ、お母さんが呼んでるから行かなきゃ! うさぎさん、遊んでくれてありがとう」
「私も楽しかったよ。また一緒に遊ぼうね!」
「うん! またね」
女の子はニコニコとして手を振りながらお母さんのもとへ走っていった。いつの間にかリーゼも優しい顔で女の子を見送っている。
「二人ともお疲れ様。きっと女の子にとって忘れられないいい思い出になったと思うわ」
「楽しんでもらえたならうれしいですね」
「私もすっごく楽しかったです!」
女の子の姿が見えなくなるとリーゼが二人に切り出した。
「そろそろお土産を受け取りに行きましょう。出来上がっているはずだから」
「「はい、行きましょう!」」
三人は前日に立ち寄ったアクセサリー専門店に向けて歩き出した。
「お待たせしました。こちらがご注文いただいていたネックレスになります」
ソフィーの前に水色の丸い水晶をあしらったネックレスが四本並んでいる。
「あれ? これだとチェーンの所が少し短くない?」
「大丈夫ですよ。こちらのチェーンはつける方に合わせて自在に長さが調節される魔法が付与されています」
「すごい! ありがとうございます!」
「どういたしまして。ではプレゼント用に包みますので、お待ちください」
しばらくすると赤、青、黄色、ピンクのリボンで飾られた箱が並べられた。
「お渡しするときに一目でわかるように色別のお控えを書いておきました。皆様に幸福の風が訪れますように」
「ありがとうございます!」
三人は商品を受け取ると上機嫌でお店を後にした。待ち合わせの駐車場に着くとエミリアが待っていた。車に乗った三人は今日の出来事を話しながら研究所に戻る。宿泊施設に着くとメイとリーゼはエミリアの手伝いを頼まれ出かけたため、ソフィーはリビングのソファーに座り、お土産の並べて整理をしていた。
「ソフィーちゃん、お目当てのものは買えたかな?」
「学園長、いつお見えになったのですか?」
振り返るとニコニコした学園長が立っていた。
「近くに来たからちょっと顔出しにね。そうだ! せっかくだからうさみちゃんにお土産を届けにいこうか?」
「え? 行けるんですか? でも突然いなくなったらみんなびっくりしないですか?」
「少しくらいなら大丈夫だと思うよ。ソフィーちゃん、うさみちゃんのお土産はどれにするか決まっているかな?」
「はい、このピンクのリボンです」
「よし、じゃあ手をつなごうか。次元回廊開け」
学園長の声と共に大きな鏡が現れる。
「では、一緒に行こうか。鏡の向こうはうさみちゃんのいる場所と繋がっているよ。少しだけならお話もできるから楽しんでおいで」
「はい!」
鏡から出るとそこは見たこともない森の中だった。学園長の案内されてからしばらく歩くと茂みの向こう側に特徴のある二本の耳が見える。
「うさみちゃん!」
「え! ソフィーちゃん? 何でここにいるの?」
「お土産を届けに来たんだよ! また会えてうれしい!」
楽しい笑い声が森に響く。木陰から二人の様子を見守る学園長。
「まだまだ面白いことがたくさんあるね。さあ、ここからが本番だ。君たちが描く未来を見せてくれ」
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小さな出会いが起こした奇跡はこれからも続いていく。
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