74 / 164
第三章 幻想世界
第19話 ソフィーのお買い物(前編)
しおりを挟む
冬夜たちが第一の試練を終えた頃、研究所から近い街の駐車場。そこにはエミリアとスケジュールの確認をしているメイたちの姿があった。
「学園長のお買い物ミッションは実行するのは明日。今日はリーゼの案内で何のお店があるか見て回ってきてね」
「あれ? ママ、最初の予定だと二人で買い物してもらってから案内するんじゃなかった?」
「いきなり知らないところに行って『お土産を買ってきてね』なんて無理でしょう? 何もわからないメイちゃんやソフィーちゃんはどうなるかしら?」
「間違いなく迷子になるわね……」
「でしょう? 今日は三人でどんなお店があって、何が売っているのかリサーチしてきなさい。前にあなたが行った時とは変わっているわよ、最近リニューアルしたから」
リーゼが以前遊びにきたときよりも新しい建物が増えていた。
「ソフィー、いろんなお店があるね」
「うん! メイ、あっちのお店の前にかわいい子がたくさん座っているよ!」
二人が話していた店には「新規オープン」ののぼりがたくさん立っている。看板には「ぬいぐるみ専門店」と書かれており、店先に置かれたベンチにはソフィーより二回りほど小さなクマやイルカなどのぬいぐるみがたくさん置かれていた。
「あんなお店いつの間にオープンしたのかしら! 早速お迎えに行か……」
「リーゼ、買いすぎないようにね。部屋にある子たちのことも考えなさい」
「う……善処します」
今にも走り出しそうなリーゼに釘を刺すエミリア。リーゼの部屋は天井までぬいぐるみで溢れており、足の踏み場もない状態になりつつある。しゅんとするリーゼにソフィーは不思議そうな顔をしながら話しかける。
「リーゼさん、大丈夫ですか? あのお店に行きたいです」
「うん、ソフィーちゃんが言うなら仕方ないわよね。メイちゃんもいいかしら?」
「はい! みんなで一緒に行きましょう」
リーゼの切り替わりの速さに小さくため息をつくエミリア。腕につけた時計を見て、少し慌てた様子で話しかける。
「大事な会議のことをすっかり忘れていたわ。三人でゆっくり散策してきてね。夕方ここに迎えに来るから」
「「「はい、わかりました(わかったわ)」」」
三人の返事を聞くと急いで車に乗り研究所へ帰っていくエミリア。メイとソフィーは見えなくなるまで手を振っていた。
「じゃあ、街の中を歩いて見ていこうね」
「「はい、よろしくお願いします」」
ソフィーの左手をリーゼ、右手をメイが繋いで仲良く歩きだす。ニコニコと歩く二人にだらしなく緩んだ顔のリーゼ。すれ違う人がサッと横に避けるほど異様な光景だった。
「メイ、こっちのお店に可愛い洋服がたくさんあるよ」
「ほんとだ。いろんなお店があって楽しいね」
「しーちゃんたちのお土産は何がいいかな?」
本当に楽しそうに散策する二人とすれ違う人々、二人を見た店員がみな笑顔になっていく。その様子を見たリーゼの心も暖かくなる。
「ここのお店を覗いていかない? お土産にピッタリだと思うわよ」
「リーゼさん、なんのお店ですか?」
不思議そうな顔をしたメイが問いかける。外観は周辺の綺麗な店舗と違い、少し古めかしい。看板には営業時間と「OPEN」の文字が書いてあるだけで何を売っているお店なのかさっぱりわからない。
「アクセサリーの専門店よ。オーダーメイドで作ってくれるし、お守りの効果もあるの。みんなでお揃いの物はどう? 世界に一つだけのものができるわよ」
「すごいです! でも、結構高いんじゃないですか?」
心配するソフィーに優しくほほ笑みながら頭をなでるリーゼ。
「大丈夫よ、私たちのような学生でも買える商品が多いから。きっとみんな喜ぶわよ」
「ほんとですか? ありがとうございます」
ソフィーの顔に笑顔が戻り、ぎゅっとリーゼに抱き着いた。
(ソフィーちゃんに抱きしめられている!? あーもう幸せすぎよ)
二人の様子をニコニコと見守るメイ。
「二人が仲良しでほんとによかった」
メイの位置からはリーゼの表情は見えていないが、完全に緩み切っていて言乃花がその場にいたら雷が落ちまくっていたのは間違いなかっただろう。三人を中心に大きな人の円ができていたのだから……
数十分後、正気に戻ったリーゼと共にお店に入った。三人でたくさん悩んだ末、お揃いのアクセサリーを決めて明日取りに来ることになった。
お店を出るとソフィーのお腹が大きく鳴ったのでリーゼお勧めのお店にランチに向かった。
幻想世界にいるはずのない人物と遭遇するとは、予想もしていない三人だった。
「学園長のお買い物ミッションは実行するのは明日。今日はリーゼの案内で何のお店があるか見て回ってきてね」
「あれ? ママ、最初の予定だと二人で買い物してもらってから案内するんじゃなかった?」
「いきなり知らないところに行って『お土産を買ってきてね』なんて無理でしょう? 何もわからないメイちゃんやソフィーちゃんはどうなるかしら?」
「間違いなく迷子になるわね……」
「でしょう? 今日は三人でどんなお店があって、何が売っているのかリサーチしてきなさい。前にあなたが行った時とは変わっているわよ、最近リニューアルしたから」
リーゼが以前遊びにきたときよりも新しい建物が増えていた。
「ソフィー、いろんなお店があるね」
「うん! メイ、あっちのお店の前にかわいい子がたくさん座っているよ!」
二人が話していた店には「新規オープン」ののぼりがたくさん立っている。看板には「ぬいぐるみ専門店」と書かれており、店先に置かれたベンチにはソフィーより二回りほど小さなクマやイルカなどのぬいぐるみがたくさん置かれていた。
「あんなお店いつの間にオープンしたのかしら! 早速お迎えに行か……」
「リーゼ、買いすぎないようにね。部屋にある子たちのことも考えなさい」
「う……善処します」
今にも走り出しそうなリーゼに釘を刺すエミリア。リーゼの部屋は天井までぬいぐるみで溢れており、足の踏み場もない状態になりつつある。しゅんとするリーゼにソフィーは不思議そうな顔をしながら話しかける。
「リーゼさん、大丈夫ですか? あのお店に行きたいです」
「うん、ソフィーちゃんが言うなら仕方ないわよね。メイちゃんもいいかしら?」
「はい! みんなで一緒に行きましょう」
リーゼの切り替わりの速さに小さくため息をつくエミリア。腕につけた時計を見て、少し慌てた様子で話しかける。
「大事な会議のことをすっかり忘れていたわ。三人でゆっくり散策してきてね。夕方ここに迎えに来るから」
「「「はい、わかりました(わかったわ)」」」
三人の返事を聞くと急いで車に乗り研究所へ帰っていくエミリア。メイとソフィーは見えなくなるまで手を振っていた。
「じゃあ、街の中を歩いて見ていこうね」
「「はい、よろしくお願いします」」
ソフィーの左手をリーゼ、右手をメイが繋いで仲良く歩きだす。ニコニコと歩く二人にだらしなく緩んだ顔のリーゼ。すれ違う人がサッと横に避けるほど異様な光景だった。
「メイ、こっちのお店に可愛い洋服がたくさんあるよ」
「ほんとだ。いろんなお店があって楽しいね」
「しーちゃんたちのお土産は何がいいかな?」
本当に楽しそうに散策する二人とすれ違う人々、二人を見た店員がみな笑顔になっていく。その様子を見たリーゼの心も暖かくなる。
「ここのお店を覗いていかない? お土産にピッタリだと思うわよ」
「リーゼさん、なんのお店ですか?」
不思議そうな顔をしたメイが問いかける。外観は周辺の綺麗な店舗と違い、少し古めかしい。看板には営業時間と「OPEN」の文字が書いてあるだけで何を売っているお店なのかさっぱりわからない。
「アクセサリーの専門店よ。オーダーメイドで作ってくれるし、お守りの効果もあるの。みんなでお揃いの物はどう? 世界に一つだけのものができるわよ」
「すごいです! でも、結構高いんじゃないですか?」
心配するソフィーに優しくほほ笑みながら頭をなでるリーゼ。
「大丈夫よ、私たちのような学生でも買える商品が多いから。きっとみんな喜ぶわよ」
「ほんとですか? ありがとうございます」
ソフィーの顔に笑顔が戻り、ぎゅっとリーゼに抱き着いた。
(ソフィーちゃんに抱きしめられている!? あーもう幸せすぎよ)
二人の様子をニコニコと見守るメイ。
「二人が仲良しでほんとによかった」
メイの位置からはリーゼの表情は見えていないが、完全に緩み切っていて言乃花がその場にいたら雷が落ちまくっていたのは間違いなかっただろう。三人を中心に大きな人の円ができていたのだから……
数十分後、正気に戻ったリーゼと共にお店に入った。三人でたくさん悩んだ末、お揃いのアクセサリーを決めて明日取りに来ることになった。
お店を出るとソフィーのお腹が大きく鳴ったのでリーゼお勧めのお店にランチに向かった。
幻想世界にいるはずのない人物と遭遇するとは、予想もしていない三人だった。
2
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
勇者パーティのサポートをする代わりに姉の様なアラサーの粗雑な女闘士を貰いました。
石のやっさん
ファンタジー
年上の女性が好きな俺には勇者パーティの中に好みのタイプの女性は居ません
俺の名前はリヒト、ジムナ村に生まれ、15歳になった時にスキルを貰う儀式で上級剣士のジョブを貰った。
本来なら素晴らしいジョブなのだが、今年はジョブが豊作だったらしく、幼馴染はもっと凄いジョブばかりだった。
幼馴染のカイトは勇者、マリアは聖女、リタは剣聖、そしてリアは賢者だった。
そんな訳で充分に上位職の上級剣士だが、四職が出た事で影が薄れた。
彼等は色々と問題があるので、俺にサポーターとしてついて行って欲しいと頼まれたのだが…ハーレムパーティに俺は要らないし面倒くさいから断ったのだが…しつこく頼むので、条件を飲んでくれればと条件をつけた。
それは『27歳の女闘志レイラを借金の権利ごと無償で貰う事』
今度もまた年上ヒロインです。
セルフレイティングは、話しの中でそう言った描写を書いたら追加します。
カクヨムにも投稿中です
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる