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第三章 幻想世界

第11話 両親の過去と学園長のミッション

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「ちょっと待ってください! お二人はクソ……いえ、父のことを知っているのですか?」
「もちろんさ、君の父親『天ヶ瀬 響あまがせ ひびき』は学園の同級生だからね。そうか……小さかった子がこんなに大きくなったか」

 未だ行方が分からない父親の過去を知る人物が目の前にいるということ、同じ学園に通っていたという事実。さらに、自分と過去に会ったことがあるということ。明らかになった事実は冬夜にとって衝撃が大きすぎた。

「過去にお会いしたことがあったんですか? すいません、全く記憶にないもので……」
「無理もないさ。我々が会ったのは君が生まれて間もないころだからね」
「そうね。あなたが立派に成長した姿をも見たかったと思うわ」
「母のことも知っているのですか?」
「ええ、彼女は私の親友よ」

 次々と飛び出す両親の話に冬夜の理解が追い付かない。

(過去に会っている? 幻想世界から現実世界へ自由に出入りができるのか? 母さんとエミリアさんが親友ってどういうことだ?)

 呆然とする冬夜。狼狽えている様子にリーゼが助け舟を出す。

「パパもママもそのくらいにしておいたら? こちらの世界幻想世界に到着したばかりで慣れていないのに、一気に話したら誰だって混乱するわよ」
「おっとすまない。つい懐かしい名前を聞いたもので熱が入ってしまった」
「混乱させてしまってごめんなさいね、冬夜さん。ご両親のお話はまた別の機会にゆっくりお話できたらと思うわ」
「い、いえ、とんでもないです」

 二人から頭を下げられ、さらに慌てる冬夜。オロオロとしていると隣に座るメイが小声で声をかける。

「大丈夫? 小さく深呼吸すると落ち着くよ」

 メイに促されてそっと深呼吸をする。一息入れたことにより少しずつ頭の中がクリアーになってくる。そのとき、静かに見守っていた言乃花が口を開く。

「いったん場を仕切り直したいと思います。私たちはスケジュールを詳しくは聞かされていないんです。この後の流れを伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。エミリア、例の物を見せてあげて」

 エミリアがスッと右手を左右に動かすと、冬夜達の目の前にスケジュールの書かれた画面のようなものが浮かび上がる。そこにはグループに振り分けられた名前と個々のスケジュールが記載されていた。第一グループは言乃花、レイス、冬夜。第二グループはリーゼ、メイ、ソフィー。芹澤のみ別行動となっていた。

「グループ分けはをベースに分けさせてもらったよ。芹澤君にはアルとの共同研究をお願いしてあるからね」
「もちろんですよ。私の研究成果をご報告する機会を設けていただきありがとうございます」
「これを見ると明日は研究所の中での説明と見学になっているわね。明後日からは行動が分かれるみたいだけど、私たちのグループの意味不明な予定は何?」

 リーゼが指摘したグループの予定にはこう書かれていた。
『お買い物ミッション! はじめてのおつかい~幻想世界編~』
「「「は?」」」

 思わず計画書を凝視する学園メンバーにエミリアがゆっくり説明を始める。

「このミッションは学園長からのご依頼です。メイちゃんとソフィーちゃんにお買い物に行ってもらいます。リーゼは途中まで一緒に行って、サポートに回ってね。ただし、直接的な関与はせず、見守ること。お昼に指定された場所で合流してね。食事を済ませたら二人に町を案内してもらうわ」
「はい! わかりました」

 とびっきりの笑顔で返事をするソフィー。その様子に優しい空気が流れていく。

「俺からも質問させてください。俺のグループのほうは『』と書いてありますが、これは研究所ではなく別のところで行うのでしょうか?」
「それについては自分が説明するっすよ。冬夜さんにはっす。詳しいことは道中にでも説明しますが、気を抜くと大っすから気をつけて下さいね」

 いつも通り軽い口調で話しているが、ところどころに不穏な空気を感じる冬夜。

(気を抜くと大変な事? 家に行くだけでいったい何があるんだ?)

 レイスの意図がわからず悩んでいると、ハワードからも意味深な一言を掛けられる。

「そうだな、レイスくんのご実家に行くということは気を引き締めておいた方が良いぞ。だからね」

 二人が言った気を引き締めろという言葉が意味するところとは?
 冬夜はレイスの実家に足を踏み入れた瞬間、言葉の意味を思い知らされることになる。
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