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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー
第15話 古(いにしえ)の技術「魔科学」
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(魔法と科学の融合? 魔科学? なんだその技術は?)
芹澤の言っていることが全く理解できない冬夜。
「魔法と科学について、ひとつひとつならわかります。ただ二つを融合した技術と言われても想像できないのですが……」
「君の言いたいことはよくわかるぞ! さっきも言っただろう? 失われた技術だと」
困惑する冬夜に対し、誇らしげに胸を張る芹澤。
「ちょっと芹澤……失われた技術? そんな実験やっているなんて聞いてないわ! 初耳よ!」
語気を強めながら芹澤に詰め寄るリーゼ。彼女は芹澤がいつも実験室で何をしているのかは知らなかった。
「以前、丁寧に説明しようとしたじゃないか。そうしたら、『忙しいから今度にして!』と言って取り合わなかったのは、君だろ?」
「クソ忙しい年度末だったわよね? 一つ目の会議が終わって一息ついたタイミングで意気揚々と説明を始めたのは誰よ? まだ会議が残ってるって言ったでしょうが! だいたいアンタはいつも……」
「あなたたちね……さっきのことは忘れたの?」
ニッコリとほほ笑む言乃花。有無を言わせない無言の圧力が実験室を支配し、床に正座した二人が項垂れていた。
「あなたたちに任せるとすぐ……はぁ、私が概要を話すわ」
小さく息を吐くと、本で読んだ知識だけどという前置きのもとに、言乃花による解説が始まった。
「かつて、古の時代……両世界には交流があったとされているわ。当時、魔法が使えない人々……今の現実世界の人達が、何とかして魔法の恩恵にあずかろうと生み出された技術があったらしいわ。それが魔法と科学を融合させた魔科学というものである、と記録されていたわ」
「ちょっと待った。昔は両世界に交流があった? 自由に行き来が可能だったということか?」
どう考えても信じられない。冬夜は学園に来て初めて、もう一つの世界が存在することを聞かされた。本当にそんな世界が存在するのか未だに半信半疑なのである。
「あくまでも記録上だからね。実際にどうやって行き来できていたかも不明。何らかの方法で交流はあったみたいだけど、詳細な記録は何も残っていないのよ」
「え? 魔科学っていうのはすごい技術だったんじゃないのか?」
「おそらくね……でも、どんな技術だったのか、きれいさっぱり記録が残っていないのよ」
なんとも不可解な話である。偉大な技術であるはずなのに記録に一切残されていない、まるで何者かが意図的にすべてを抹消したかのように……
「そういうことだ! 素晴らしい技術が眠っているなんて、これほど好奇心を掻き立てられることはない! 是が非でも実験してみなくてはならないだろう?」
黙って話を聞いていた芹澤が、いきなり参加してくる。そして、そこからは独壇場となった。
「古の時代には確実に存在し、そして、魔法と科学の融合によって生まれた、失われた技術! 君はロマンを感じないか? この手で古の技術を復活させ、発展させていくということに!」
「そ、それと爆発は、何の因果関係があるのでしょうか?」
「何を言うかと思えば。あれは失敗などではない! 成功への手掛かりの第一歩であろう。まあ、少々驚かしてしまったのは申し訳ない」
芹澤の熱弁にほぼ全員が引き気味である。そして、こう思った。
(この人に話の主導権を握らせたらダメだ)
その後数十分にわたり、説明という名の演説は続いた。一通り話し終え、満足そうな顔を浮かべる芹澤と対照的にうんざりした顔で近くの椅子にもたれかかるように座る四人。
「すごいですね! そんなことができるなんて……いっぱいお話してお疲れじゃないですか? 今はこれだけですが、よかったらどうぞ!」
「ありがとう。君はたしか……ソフィーくをだったね?」
さっと持っていたクッキーを芹澤に渡しているのはソフィーである。あの演説をひとり目をキラキラさせながら聞いていたのだ。
「もし興味があるなら、いつでもこの実験室に遊びに来てくれたまえ。歓迎するよ」
ニコニコと話をしている二人。ソフィーと話し終えると、唐突に話題を変えた。
「冬夜くん、話が脱線してしまったね。どうも語りだすと止まらなくてね」
「いえ、それは構いませんが……」
「最近この実験のことを狙う方々がいてね……おっと、噂をすれば……」
言い終えるのと同時に、窓の外、ちょうど学園の裏門の先にある森から、閃光と煙が立ち上る。
「今日は派手にやっているみたいだな……さて、招かれざる訪問者を撃退に行こうではないか!」
高笑いしながら実験室から出ていく芹澤。
「ここにいれば……大丈夫だよね? 冬夜くん」
青い顔で小刻みに震えながら冬夜の右腕にしがみつくメイ。
「大丈夫。メイとソフィーは食堂で待っていてくれ。すぐ戻るよ」
安心させるようにメイに言い聞かせる冬夜。
リーゼ、言乃花とともに芹澤の後を追い、現地へと向かう。
突如始まった襲撃と招かれざる来訪者とは……
芹澤の言っていることが全く理解できない冬夜。
「魔法と科学について、ひとつひとつならわかります。ただ二つを融合した技術と言われても想像できないのですが……」
「君の言いたいことはよくわかるぞ! さっきも言っただろう? 失われた技術だと」
困惑する冬夜に対し、誇らしげに胸を張る芹澤。
「ちょっと芹澤……失われた技術? そんな実験やっているなんて聞いてないわ! 初耳よ!」
語気を強めながら芹澤に詰め寄るリーゼ。彼女は芹澤がいつも実験室で何をしているのかは知らなかった。
「以前、丁寧に説明しようとしたじゃないか。そうしたら、『忙しいから今度にして!』と言って取り合わなかったのは、君だろ?」
「クソ忙しい年度末だったわよね? 一つ目の会議が終わって一息ついたタイミングで意気揚々と説明を始めたのは誰よ? まだ会議が残ってるって言ったでしょうが! だいたいアンタはいつも……」
「あなたたちね……さっきのことは忘れたの?」
ニッコリとほほ笑む言乃花。有無を言わせない無言の圧力が実験室を支配し、床に正座した二人が項垂れていた。
「あなたたちに任せるとすぐ……はぁ、私が概要を話すわ」
小さく息を吐くと、本で読んだ知識だけどという前置きのもとに、言乃花による解説が始まった。
「かつて、古の時代……両世界には交流があったとされているわ。当時、魔法が使えない人々……今の現実世界の人達が、何とかして魔法の恩恵にあずかろうと生み出された技術があったらしいわ。それが魔法と科学を融合させた魔科学というものである、と記録されていたわ」
「ちょっと待った。昔は両世界に交流があった? 自由に行き来が可能だったということか?」
どう考えても信じられない。冬夜は学園に来て初めて、もう一つの世界が存在することを聞かされた。本当にそんな世界が存在するのか未だに半信半疑なのである。
「あくまでも記録上だからね。実際にどうやって行き来できていたかも不明。何らかの方法で交流はあったみたいだけど、詳細な記録は何も残っていないのよ」
「え? 魔科学っていうのはすごい技術だったんじゃないのか?」
「おそらくね……でも、どんな技術だったのか、きれいさっぱり記録が残っていないのよ」
なんとも不可解な話である。偉大な技術であるはずなのに記録に一切残されていない、まるで何者かが意図的にすべてを抹消したかのように……
「そういうことだ! 素晴らしい技術が眠っているなんて、これほど好奇心を掻き立てられることはない! 是が非でも実験してみなくてはならないだろう?」
黙って話を聞いていた芹澤が、いきなり参加してくる。そして、そこからは独壇場となった。
「古の時代には確実に存在し、そして、魔法と科学の融合によって生まれた、失われた技術! 君はロマンを感じないか? この手で古の技術を復活させ、発展させていくということに!」
「そ、それと爆発は、何の因果関係があるのでしょうか?」
「何を言うかと思えば。あれは失敗などではない! 成功への手掛かりの第一歩であろう。まあ、少々驚かしてしまったのは申し訳ない」
芹澤の熱弁にほぼ全員が引き気味である。そして、こう思った。
(この人に話の主導権を握らせたらダメだ)
その後数十分にわたり、説明という名の演説は続いた。一通り話し終え、満足そうな顔を浮かべる芹澤と対照的にうんざりした顔で近くの椅子にもたれかかるように座る四人。
「すごいですね! そんなことができるなんて……いっぱいお話してお疲れじゃないですか? 今はこれだけですが、よかったらどうぞ!」
「ありがとう。君はたしか……ソフィーくをだったね?」
さっと持っていたクッキーを芹澤に渡しているのはソフィーである。あの演説をひとり目をキラキラさせながら聞いていたのだ。
「もし興味があるなら、いつでもこの実験室に遊びに来てくれたまえ。歓迎するよ」
ニコニコと話をしている二人。ソフィーと話し終えると、唐突に話題を変えた。
「冬夜くん、話が脱線してしまったね。どうも語りだすと止まらなくてね」
「いえ、それは構いませんが……」
「最近この実験のことを狙う方々がいてね……おっと、噂をすれば……」
言い終えるのと同時に、窓の外、ちょうど学園の裏門の先にある森から、閃光と煙が立ち上る。
「今日は派手にやっているみたいだな……さて、招かれざる訪問者を撃退に行こうではないか!」
高笑いしながら実験室から出ていく芹澤。
「ここにいれば……大丈夫だよね? 冬夜くん」
青い顔で小刻みに震えながら冬夜の右腕にしがみつくメイ。
「大丈夫。メイとソフィーは食堂で待っていてくれ。すぐ戻るよ」
安心させるようにメイに言い聞かせる冬夜。
リーゼ、言乃花とともに芹澤の後を追い、現地へと向かう。
突如始まった襲撃と招かれざる来訪者とは……
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