絶望の箱庭~鳥籠の姫君~

神崎ライ

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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

第3話 リーゼと学園のマスコット?

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 授業が始まって数日経ったある日の放課後、教室の机に疲れ果てて突っ伏している冬夜の姿があった。

「普通の教科はまだ大丈夫だけど、魔法理論とかさっぱりわからん……これはマズいぞ……」

 魔法の力を持つ両世界の生徒を集めた学園の特徴として、通常の科目に加えて『魔法』に関する科目も取り入れられている。正しい知識をもち、適切な魔力を使えるようにするためには必須なのだ。
 当然のことながら、現実世界出身の生徒にとって『魔法』の科目は一般的ではない。何人かの生徒はすでに頭を抱えているのが毎年恒例の光景だ。

「大丈夫? ものすごく顔色が悪いよ」

 心配そうに声をかけてくるのは隣の席に座るメイだ。入学して日の浅い冬夜にとってクラス内でただ一人だけ心を許している友人だ。

「魔法理論とか難しすぎて頭がパンクしそうだ……メイは大丈夫なのか?」
「うん、新しいことを知れるから楽しいよ!」

 ニコニコと笑ってはいるが、メイがこの世界の生活に慣れようと必死に努力している事をソフィーから聞いていた。夜遅くまで膨大な量の本を読み、リーゼがマンツーマンで指導している。メイの素直な性格もあり、スポンジが水を吸収するようにすごいスピードで成長していっている。

「いよいよみんなで迷宮図書館に行く日だね」
「授業が終わったら図書館の入口で集合だったよな?」
「うん、ちょっと緊張するね」

 入学式が終わった後、冬夜とメイは迷宮図書館に行こうとした。しかし、現在様々な調査が行われており、しばらく立ち入りが禁止されていると言乃花から告げられた。調査が終わった週末の放課後に皆で向かうことになった。
 そんな時、廊下が一気に騒がしくなってきた。

「見て! あの子めちゃめちゃかわいい!」
「ホントに動いてる! 噂には聞いていたけど……え? 手を振ってくれた? やったー!」

 騒がしい声が大きくなると同時にが教室の入口からひょっこりと覗く。

「メイ、冬夜くん、迎えに来たよ」

 現れたのはメイと一緒にいたウサギのソフィーである。普段はメイの部屋でお留守番していることが多いのだが、学園長の計らいで授業のサポートや先生たちの雑務を手伝ったりしている。誰にでも優しい性格と愛くるしい見た目から学園のマスコットキャラクター化していた。

「ソフィー、『授業がおわったら部屋に迎えに行くよ』って言ったのに」
「待ちきれなくて来ちゃった!」
「それだけ楽しみにしていたんだろ? じゃあ向かうか!」

 教科書類を鞄に押し込み、ソフィーも一緒に迷宮図書館に向かう。
 校舎を抜けるまで大騒動を巻き起こるのだが、それはまた別の話……


 少し遅れながらも迷宮図書館前に着くと、すでに二人の人影があった。

「遅かったわね。何かトラブルでもあったの?」
「時間厳守よ。何があったのか想像はつくけどね」
「……ありえないくらい人だかりができて抜けるのに手間取っただけだよ」

 メイとソフィーのコンビはミステリアスな背景もあり、生徒の中でもすごい人気なのである。特にソフィーを見かけたら幸せになれるとか、どこから出てきたのかわからない怪しい話もたくさん出てきているのだ。

「リーゼさん、遅れてごめんなさい」
「えっ? いいのよ、ソフィーちゃんが謝ることじゃないし!」

 ソフィーから意表を突かれる形で謝罪を受け大慌てするリーゼ。

(もーいちいち可愛いのだから! ぎゅっとして撫で撫でしてあげたい!)

 表情が緩みかけているリーゼに言乃花がで肩に手を乗せる。

「リーゼ、そろそろ中に入らない?」
「そ、そうね。みんなそろったことだし、調査を開始しましょう」

 正気に戻ると慌てて迷宮図書館の入り口を向くリーゼ。その様子を笑顔で見つめる言乃花と冬夜。何が起こったのか訳が分からずキョトンとするメイとソフィー。
 一行は事件の舞台となった迷宮図書館に足を踏み入れるのであった。
 迷宮図書館を舞台に起こったあの事件……
 ノルンの不可解な行動とメイがいた空間を結ぶカギはどこに隠されているのだろうか?
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