龍姫伝〜白き覇者の物語〜

安藤 炉衣弩

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ミドリバショウ

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 体術だけで覇龍化したキンカモミジと渡り合う小柄な少女は、笑みを浮かべ落ちついてよという仕草をとる。

「もぉ~、バショウはまだ戦わないよ☆ 今みんなとっても楽しくないし。ただ、あの蒼眼の白龍姫とだったら、楽しめそうかな ☆」

そう言うと着地した岩場に腰掛け、いつの間に取ったのか肉串を食べ始める。

「いつの間に…」

「う~ん、やっぱりシラユリちゃんの焼き加減バッチリ。将来は良いお嫁さんになるね☆ バショウが貰っちゃおうかな ☆」 

 話して見て分かったが、ことミドリバショウとい少女は掴みにくい。一見ふらふらしているように見えて、その真は核心をついているように見える。

「そんな顔しないでよ、キンカモミジちゃん☆ アオバラちゃんの分身、露払いくらいはしてあげるって ☆」


 ミドリバショウの言った通り、私達は3人で魔術都市リーモを目指していた。しばらくして、オオガイワとい街へと入る為橋を渡ろうとした時ソレは起きた。対岸から強力な覇気を感じたと思うと、目の前の橋が突如として崩落したのである。対岸には不適な笑みを浮かべ仁王立ちしているアオバラが居た。

「さすがのあーしも、我慢の限界。喧嘩売るってんなら買ってあげるーーー」

バチバチという音と共に覇龍化するとキンカモミジは大地を踏み抜き、天空へと高く舞い上がる。そして自身を加速させるようにして、こちら側へ天焔を放つ。その反動を利用して対岸へと着陸する。

「アオバラぁぁあ !!」

「あらあら、キンカモミジはんそんなにウチと会いたったとぉ~。これやから、ウチみたいな人間は罪やさかいなぁ~」

「天雷 !!」

挨拶代わりにと言わんばかりに、キンカモミジは勢い良く雷を撃ち落とす。しかし、雷が直撃したアオバラは黒い塊になって消えてしまう。

「まったく、せっかちやなぁ~。そんな慌てんと、しっかり相手してあげはります」


 キンカモミジが飛び出して行くと同時、コチラ側に影のアオバラが作り出される。その数、およそ百体程度。しかし、それを見てもミドリバショウは動じるコトもなく逆に笑顔である。

「シラユリちゃんは見てて良いからね☆ ケガなんかしたら、あの焼き加減バッチリのお肉食べれないしね☆」

薄っすらとミドリバショウの周りに、緑色の覇気が渦巻き出す。銀色の髪は緑色へと変わり、金色の瞳は桃井へと変貌する。さらに驚くは、彼女の周りを渦巻く覇気の膨大さはまさに異常そのものである。

「見ててねシラユリちゃん、なぜ緑色の龍が緑龍りょくりゅうではなく皇龍と呼ばれるかをね ☆」

 ミドリバショウが少し揺らめいたかと思うと、そこからは流れるかのように全ての影を圧倒していく。その動きは全て無駄がなく、まさに正確無比。しかし、倒しても倒しても一向に影が減らない。

「う~ん、アオバラちゃんも術に関しては一流かな~☆ 戦闘しながら持続的に生成するなんて、バショウ嬉しいぞ☆」

膨大な覇気を自身の周りに展開し、それをさらに凝縮し濃いものにしていく。そして一気にを押しだす。

「皇覇 !!」

白覇や黒覇等のこの技は本来、自身を護るための術。しかし、辺り一帯の地面を抉りアオバラが施した術の起点さえも壊してしまう。

「ふぃ~、いっちょ上がり ☆」

 キンカモミジが警戒するのも分かる、体術、覇気の扱いに圧倒的な覇気の量。現聖五龍天で1番の実力者だろう。思わず背中から冷や汗が噴き出すーーー。
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