龍姫伝〜白き覇者の物語〜

安藤 炉衣弩

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共同戦線

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 暫くの間沈黙が続き、キンカモミジが口を開く。

「それが本当なら、あーしはシラユリに協力したいと思ってるよ。ただ、それが嘘ならあーしがシラユリを殺すけど良い ?」

 普段のキンカモミジとは程遠い冷めきったほどの、まるで大地が凍てつかんばかりの殺気を向けてくる。思わず後ずさりしてしまうほどに、その圧は強力極まりない。

「ええ、勿論それで構わないわ。それに、そうじゃなきゃ条件不足でしょう」

「その目、本気みたいだね。なら、あーしも覚悟決めないとね」

 おそらく戦闘で負傷したであろう、ボロボロの手を突き出す。私はキンカモミジと握手を交わす。こうして、天龍姫と白龍姫による共闘戦線が誕生したのである。

 ひとまず私達は水星屋へと戻り、戦闘によって傷ついたキンカモミジの治療を行う。大きなケガはないものの、打撲や打ち身が数ヶ所ある程度らしい。

「軽い傷の手当ては致しましたが、やはり覇気をかなり消耗しておられます。一度、龍癒庵に行かれた方が良いかと」

「にゃははは、やっぱしかぁ―。まぁ、汗もかいたし丁度いっか」

「龍癒庵までは七天がお送りします。丁度月星と木星がコチラに滞在してとりますゆえ」

 奥の間からイバ・サイとイバ・オウが現れ、私達の前で片膝をつき頭を下げる。

「ちょっとちょっと、急に何やめてよ」

「いえ、白龍姫様と天龍姫様は既に龍姫の名を継承しておられますので、このような対応になりますコトご理解ください」

「にゃはは、なんか固っ苦しいね」

「それでどうするの、キンカモミジ ?」

「とりあえず、龍癒庵に行くよ。勿論、シラユリも付き合ってくれるよね」

 龍姫2人に、ソッチを含めた大所帯で龍癒庵を目指す。前回は長く感じた道中もほとんど疲れるコトなく、あっという間に目的地へと到着する。到着と同時にキンカモミジと私は脱衣所へと足を運び、他の七天は周囲の警戒にあたる。サイとオウは流石というべきか、木星と月星は戦闘に長けている為迅速に取るべき行動をとっている。

 温泉に浸かると身体の芯から温まると同時、微量ではあるが覇気が充填されていくのを感じる。

「それで、キンカモミジはこれからどうしたいの ?」

「にゃははは、流石のあーしもムカッついてんだよね。あの、魔天龍姫にはーーー」

「ってことは、リーモを目指すってコトで良いよね ?」

「ええ、まぁ今はゆっくり温泉を楽しみますかねぇ―」


 特に何事もなく龍癒庵を後にし水星屋へと戻り、明日からの旅路に備える。七天とはココで別れ、キンカモミジとのふたり旅が始まった。ソッチから荷馬車を借り、のんびりとした歩を進めていた。

 
 何の前触れか分からないが、何の問題もなく数日が経過していた。昼食を食べようと準備していると、突如として背中に悪寒のような冷や汗が流れる。

(我が龍姫、警戒せよ。何者がコチラヘ近づいてきている)

「シラユリっ! 直ぐに覇竜化して、厄介なのが来た !!」

 水を汲みに行っていたキンカモミジの叫びにより、覇竜化し全身に覇気を纏わせ辺りを警戒する。

「あはっ☆、良い反応だね白龍姫ちゃん!」

 後方からの声掛けに驚き、後ろを振り向くと先ほどまで焼いていた肉を食べている小柄な少女が居た。地面まで届くほどの銀色の髪を太いツインテールにし、金に輝くその瞳は猫を思わせる。

「うんっ、この焼き加減も絶品だね ☆」

「天龍爪 !!」

 状況が理解出来ないまま、キンカモミジが覇気を纏わせた龍爪を放つ。小柄な少女は慌てることなく、軽やかな足捌きと体術で躱してみせたのである。それどころか、空中で身を翻しながら、目の前の岩へとスタンと着地する。

「天龍牙 !!」

ソコへキンカモミジが間髪入れず、龍牙を打ち込む。小柄な少女はそれに蹴りを併せ、力を流すように逆回転する。キンカモミジは反発するように距離を取り、一定の間合いをとる。

「もぉ―、キンカモミジちゃんは慌てん坊なんだから☆ バショウ的には嫌いじゃないけど、まだまだかなぁー ☆」

「くっ、このバケモノが…」

「キンカモミジちゃんたら、酷っーい ! 流石のバショウも怒っちゃうぞ ☆」

今まで小柄な少女は覇龍化どころか、闘気や蒼気すら纏っていないのである。単純な体術だけで、覇竜化したキンカモミジと渡り合っているのであるのだからーーー。
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