龍姫伝〜白き覇者の物語〜

安藤 炉衣弩

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継承の儀

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 ソッチが駆けつけると、そこには目を疑う光景が広がっていた。森の大半が失われ、シラユリを中心として生物の痕跡が一切感じられなくなっていたのだから。その中心には一切の生気を感じないかつての三英傑、時のアルガイスとシラユリが残っていたのだから。

「シラユリ殿、大丈夫ッスか ?」

「ええ問題ないわ、ソレよりコレどういうコトだと思う ?」

 私が見つめる先には、おそらく呪いを発動したままの状態で止まっているおじさんが居る。

「聞いたことがあるッス、時のアルガイスの自身すらも巻き込んてしまう秘奥。思考感覚を増幅して、時の流れを超遅行させる大技ッス」

「そうーーー」

 私は一切動かないおじさんに歩み寄り、静かに抱きしめる。三英傑といえど、下手したら死んでいたかもしれない。そう思うと、いつの間にか瞳から涙が溢れていたのだ。

「ごめんね、おじさん。私のせいでこんな事になって。だけどもうちょっと待ってて、そうすれば全て元に戻るから。だから、待ってて義父とうさんーーー」

 おじさんの現状が分かり、安堵と同時に先ほどとは違う憤りが溢れ出す。悔しいや悲しいとは違う虚しいような、空虚な感覚。
 内から覇気が徐々に溢れ出し、自身の身体を纏っていく。虹色こうしょくの覇気の中から現れた龍姫は、白龍姫よりは髪の色が灰色に近く、その双眸は深い蒼色へと変わっていた。

「ソッチ行くわよ」

「行くって、ちょっと待つッスよ。ちよっ、シラユリ殿~ !!」


 数週間後、帝都ではいよいよ始まる継承の儀に先駆けて龍姫達に名を授ける冠名式が執り行われていた。膝まづく龍姫達の前、少し小高い場所に置かれた玉座に座る人物。髪は藍色に近い紫色で、茶褐色の肌が特徴的な女性。そう、彼女こそ現龍姫皇帝、龍帝りゅうてい紫炎龍しえんりゅうの龍姫、ムラサキザクラその人である。

「龍の大神に見初められしミドリバショウ、汝に皇龍姫こうりゅうきの名を与える。龍の王に見初められしアオバラ、汝に魔天龍姫まてんりゅうきの名を与える。天の神を冠する龍に見初められしキンカモミジ、汝に天龍姫てんりゅうきの名を与える。龍の神に見初められしクロツツジ、汝に黒龍姫こくりゅうきの名を与える」

聖五龍天の一角である白龍が欠けるという異例な状態で行なわれる冠名式。次いで継承の儀の初期配置が告げられるようとした時、突如謁見室の大扉が外から破壊されたのである。


 時は遡り冠名式が始まる少し前、シラユリとソッチは宮殿の前に居た。勿論、警備兵が気づかないわけはなく、自身の責務を果たす為コチラへ止まるよう促してくる。しかし、私はソレを無視して、一歩ずつ宮殿へと歩を進める。無論、警告として警備兵は弓をコチラに向け射る。瞬間、シラユリの周りに七色の覇気が渦巻く。そして、その中から現れたのは七色の覇気を纏った蒼眼の白龍姫である。
 私がその双眸で警備兵を見据えると、七色の覇気に気圧されその場に倒れてしまう。そのまま宮殿内を進み、出くわした警備兵達を覇気だけで薙ぎ倒していく。他の覇気を辿り、冠名式が行われている謁見室まで来ると大扉の前で歩みを止める。そして片足に渦巻く程の七色の覇気を纏わせる。そのまま、何の躊躇いもなく右足を蹴りぬく。凄まじい音と共に蹴破られたドアは両断されその場に崩れ落ちる。


 そしてその双眸で龍姫皇帝見据え、威風堂々と啖呵を切ったのである。

「何もかにもこわして私がその立場を貰うわ、現龍姫皇帝ムササキザクラーーー」
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