龍姫伝〜白き覇者の物語〜

安藤 炉衣弩

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仙術

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 傷も癒えた頃、私はメモリアスから仙術の教えを受けていた。身近に居たに裏切られたのだ。いや、最初から友ではなかったかも知れない。それに、いつ襲われるか裏切られるかという事を身に沁みて理解した。

 仙術とは自然の流れと生命が生み出すを併せ、様々にその性質を変化させ闘う千変万化の術。気を練るにしても、闘いながらでは上手く気を練れない。メモリアスから最初は妖気を練ってみようと言われているが、間髪入れずに闘気の弾丸が飛んでくる。

「そらそら、ボサッとしてる暇はないよ。頭で考えない、闘いながら気を練る」

 メモリアスの教えは、日常の中でなら誰でも練習すれば仙術は使えるのだと言う。しかし、実際必要なのは戦闘しながらの技術。闘気や蒼気で闘いながら、敵に対して有効な気を探りながら、瞬時にその気を生み出せる能力が必要らしい。

 しかし、頭では理解していても身体が追い付いていかない。勿論、覇竜化はナシ、コチラ側が使えるのは枢車のみ。段々と速度になれ、枢車の闘糸で気の弾丸を防ぐとそこに今度は蒼気の弾丸が混じり出す。闘気の弾丸は物理的な硬さがあり、蒼気の弾丸はカマイタチのような性質を持っている。

 つまり、非常に厄介な戦術を取られているというコトだ。闘気をどうにか練り応戦しつつ、蒼気を片方で練り上げ組み合わせる。なんとか妖気を練り上げても、その気は精錬されておらず量や質、その全てが拙いモノである。

「まぁまぁ、初めてにしては上出来じゃない ? それに、これから黄気おうきを会得してもらうからね」

黄気とは、闘気と蒼気に並んで仙術を行使する際の三原素の一つ。この三気を様々な割合で練り上げるコトにより、様々な色の気を使う事が出来る。

 それから、メモリアスの元で黄気の取得に励むが中々新調はよろしくはない。黄気、生命が生み出すエネルギーと自然そのモノの力を練り併せた気。生き物から発せられるエネルギーはイメージ出来るが、自然そのモノが生み出す力が想像出来ない。

闘気、生き物が元来持っている力であり闘いの中でその本質を発揮する。

蒼気、殺意が目に見えるカタチで濃縮されたモノ。命のやり取りの際にその本質を発揮する。

覇気、龍と龍姫のみが扱える気。龍姫達の武器であり、龍と龍姫の生命エネルギーそのモノ。

 今扱える三気とも似てはいるが、どれも絶妙に違う。有機物と無機物の混合エネルギー、それが黄気なのである。


1年後ーーー。

 メモリアスの元に流れ着いてから、はや1年が経とうとしていた。継承の儀が迫る中で、私は仙術を自在に扱える領域にまで達していた。勿論、その間にはメモリアスの顔には似合わない超スパルタな修行があったのだが。

「さてと、大仕上げといこうかね。ワタシの全力の気を防いでみて」

メモリアスは闘気、蒼気、黄気を混ぜ合わせると赤茶色が強いオレンジ色の気を纏う。

「仙術における最高の気、橙気とうき。闘気の上位互換とも捉えられる気。覇気を解放して良いから、耐えてみせなさい !!」

私は久しぶりに覇龍化し、白色と紫色の覇気を纏う。そこに蒼気や闘気、さらには性質を変化させた様々な色の覇気を纏う。色と色が単独で存在している為、混ざる事はなく綺麗な虹色を示している。

「今の私が出来る最高の仙術と覇気の併せ技、虹気こうき!」

メモリアスの橙気による波動を虹気を身体全体に纏い、白覇の上位互換である虹覇により防ぐ。虹覇の覇道は橙気を防ぐだけでは治まらず、そのまま物理攻撃としてメモリアスへ飛散する。

「メモリアスっ !?」

「痛っ~、やっぱり龍姫状態だと無理。痛っ~いーーー」

やはり、隠された三英傑の一人だけある。あれだけの威力の攻撃を受けて、かすり傷と打撲程度で済んでいるのだから。

「まぁ、兎にも角にも最終試験は合格よ。あとはシラユリがこれからどうしたいかね」

「メモリアス、私継承の儀に参加するわ。そんで持って、この馬鹿みたいな世界を終わらせるわ」

「そう、シラユリが決めたならワタシは何も言わないわ。一つだけ言うなら、一度アルガイスに会ってくると良いわ」

「でもっーーー」

管轄院の追手から逃げる為、おじさんは犠牲になってくれた。そんな場所に戻るなんて、自殺行為そのものではないかと疑問が浮かぶ。

「今のシラユリなら大丈夫よ。相手に出来るのは龍姫皇帝か同じ龍姫くらいね。かの三英傑すら手が出せないくらい、今のシラユリは強いのよ。それに、呼んでおいたからね」

その後、しばらくぶり見知った顔と出会い物語が動き始める。
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