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シズイノクニ
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ルガンワスへと乗り込むと、広い甲板の上に所狭しと売店が並んでいた。連泊する事を想定している渡し船とは違い、数時間で目的地へと着くため観光客向けのお店が多い。
「凄いねぇ~、帝都へ行く時に乗った船とは大違いだね」
「まぁ、いいわ。キンカモミジも居ること出し、早いとこ個室へ向かおう。って、あれキンカモミジは ?」
タダでさえキンカモミジは容姿と良い、天龍の龍姫だという事がバレている為に目立つ。こんな隠れる場所がないトコロじゃ、一般人に直ぐに取り囲まれてしまう。周囲を見回すと、奥の甘味処で甘味を買っているキンカモミジの姿が目に入る。
「ちょっと、何してるのよ !?」
「どうしたのシラユリ、そんなに慌てて ?」
やはりと言うべきか、そんな事をしているモノだから周りの乗船客が次第に騒ぎ出す。
「あれって、キンカモミジ殿じゃないか ?」
「横に居るのって、海神から守ってくれたっていう白龍の龍姫様じゃないーーー ?」
次第に段々とその話をしている人達が多くなり、あっという間に私達は周りを囲まれる。だが、キンカモミジは気にする事なく甘味を口にしている。
「ほら、モタモタしてるから気づかれちゃったじゃない」
「ニャハハ、大丈夫大丈夫。笑って手でも振っとけば良いのよ」
そう言いながら彼女が手を振ると、ワァァ !という歓声が湧く。キンカモミジに促され渋々手を振ると、再び同じような歓声が生まれる。あまりの恥ずかしさから、キンカモミジを押しながら逃げるようにしてその場を離れる。
やっとの思いでチケットに記載されて個室まで来ると、キンカモミジと同じ甘味を食べているコシが居るではないですか。
「あははは、お疲れ~。龍姫様はどこに行っても人気モノだねぇ、やれやれーーー 」
「そんな他人事な ?!」
「だって、他人事だもの。まぁまぁ、コレでも食べて落ち着いて」
「むごぉ !」
手に持っていた甘味を無理矢理口にねじ込まれ、息が出来ず噎せ返る。確かに美味しいよ、唸るほど美味しいよ。だけど、なんかこう納得行かない。
「それより見てよ、この部屋海の中を観れる窓がついてる。さすが領主様、やるねぇ~」
「結構サバサバしてるけど、意外とやり手でしょ」
小窓から海中鑑賞を楽しんでいると、あっという間にシズイノクニ近くまでやって来ていた。宮廷騎士が詰めている為、何の問題もなく順調に船は進んで行く。各々が超高速帆船ルガンワスを楽しみ、いよいよシズイノクニへ足を運び入れる時が来た。
街の中へ入って行くと、まだ入り口だというのに温泉地特有の匂いが鼻に入ってくる。路地の両脇に所狭しと旅館が建ち並び、お土産屋が良い声を出して客引きをしていて活気がある。
サイに渡された地図を頼りに目的の場所まで来ると、古風な木造造りの旅館が佇んでいた。お客用の入り口には、水星屋という暖簾が掛かっている。この旅館の子供だろうか、和装の装いで玄関の掃き掃除をしている。
「いらっしゃいませ、ようこそ水星屋へっ ?!」
私とキンカモミジの顔を見るなり、血相を変えて旅館の中へと走り込んで行く。
「お母さんっ、お母さーん !!」
「なんだいなんだい、騒がしいねぇ。他のお客様の迷惑になるだろう、それに仕事中は女将さんって呼びな 」
奥から青色の仲居着を来た女性が急いでは居るが、全く足音を立てずに2階から降りてくる。私達の事を確認すると、深々と頭を下げお辞儀する。
「ようこそ、おいでくださいました。キンカモミジ殿、シラユリ殿またお連れ様。当旅館、水星屋へ。私、ここの女将をしておりますリンと申します。先ほどは、娘のサンが大変お見苦しい所をお見せしてお恥ずかしい」
「いやいや、頭を上げて下さいよ。それに娘さん元気があって良いじゃないですか」
「シラユリ殿にそう言って頂き有難く存じ上げます。立ち話もなんですので、お部屋へご案内致します」
女将に案内され、二階にある約15畳はあろうかという客室へと入る。案内を終えると、再び女将が私達の前で畏まる。
「改めまして、私当旅館の女将兼当代水星をしているリンと申します。月星より話は伺っておりましたので、当旅館自慢のお部屋をご用意しておきました」
「にゃはは、さすが七天は情報伝達が迅速だねぇ~。それで大体の要件は伝わってる ?」
「はい、伺っております。我ら七天それぞれ役割がございます。月星は民草に紛れ、表側より龍姫様を御守りし、木星は影となり龍姫様を御守りする事を生業としています。我ら水星は闘気を闘いの為に練り上げたのではなく、眼力として昇華させ最適な治療法を提示するよう訓練されております。なかでも娘のサンは、当旅館でずば抜けてその素質が現れております」
女将が奥から先ほどの女の子を連れて来て、私達の前に座らせる。そして、その間に温泉の地図を置く。
「リン、龍姫様達の身体に最も適した温泉を示しておやり」
リンと呼ばれた女の子の両目に闘気が集まり、黒目の色が水色へと変わっていく。ジッと私の瞳を見つめ、様々な気や息遣い等から適切な湯治場所を割り出すとのこと。しばらくして、地図上の温泉を指し示す。
「龍癒庵、龍姫様しか入れない温泉です。微量ながら覇気が含まれており、他のモノは温泉に近づいただけで気により亡くなってしまいます。しかし、龍姫様にとっては格別の療養所かと存じ上げます」
やはりというべきか、キンカモミジも同じ龍癒庵という事になった。次にコシに目線が合うと、今度は仙人泉という温泉を示す。
「お疲れ様はかなり気を練り上げて闘う為、闘気や蒼気がかなり疲弊しています。体力と共に気を回復する仙人泉は最適かと存じ上げます」
私とキンカモミジは龍癒庵、コシは仙人泉に行く事が決まった。荷物等を一通り整理し、示された温泉へと向かう。
「凄いねぇ~、帝都へ行く時に乗った船とは大違いだね」
「まぁ、いいわ。キンカモミジも居ること出し、早いとこ個室へ向かおう。って、あれキンカモミジは ?」
タダでさえキンカモミジは容姿と良い、天龍の龍姫だという事がバレている為に目立つ。こんな隠れる場所がないトコロじゃ、一般人に直ぐに取り囲まれてしまう。周囲を見回すと、奥の甘味処で甘味を買っているキンカモミジの姿が目に入る。
「ちょっと、何してるのよ !?」
「どうしたのシラユリ、そんなに慌てて ?」
やはりと言うべきか、そんな事をしているモノだから周りの乗船客が次第に騒ぎ出す。
「あれって、キンカモミジ殿じゃないか ?」
「横に居るのって、海神から守ってくれたっていう白龍の龍姫様じゃないーーー ?」
次第に段々とその話をしている人達が多くなり、あっという間に私達は周りを囲まれる。だが、キンカモミジは気にする事なく甘味を口にしている。
「ほら、モタモタしてるから気づかれちゃったじゃない」
「ニャハハ、大丈夫大丈夫。笑って手でも振っとけば良いのよ」
そう言いながら彼女が手を振ると、ワァァ !という歓声が湧く。キンカモミジに促され渋々手を振ると、再び同じような歓声が生まれる。あまりの恥ずかしさから、キンカモミジを押しながら逃げるようにしてその場を離れる。
やっとの思いでチケットに記載されて個室まで来ると、キンカモミジと同じ甘味を食べているコシが居るではないですか。
「あははは、お疲れ~。龍姫様はどこに行っても人気モノだねぇ、やれやれーーー 」
「そんな他人事な ?!」
「だって、他人事だもの。まぁまぁ、コレでも食べて落ち着いて」
「むごぉ !」
手に持っていた甘味を無理矢理口にねじ込まれ、息が出来ず噎せ返る。確かに美味しいよ、唸るほど美味しいよ。だけど、なんかこう納得行かない。
「それより見てよ、この部屋海の中を観れる窓がついてる。さすが領主様、やるねぇ~」
「結構サバサバしてるけど、意外とやり手でしょ」
小窓から海中鑑賞を楽しんでいると、あっという間にシズイノクニ近くまでやって来ていた。宮廷騎士が詰めている為、何の問題もなく順調に船は進んで行く。各々が超高速帆船ルガンワスを楽しみ、いよいよシズイノクニへ足を運び入れる時が来た。
街の中へ入って行くと、まだ入り口だというのに温泉地特有の匂いが鼻に入ってくる。路地の両脇に所狭しと旅館が建ち並び、お土産屋が良い声を出して客引きをしていて活気がある。
サイに渡された地図を頼りに目的の場所まで来ると、古風な木造造りの旅館が佇んでいた。お客用の入り口には、水星屋という暖簾が掛かっている。この旅館の子供だろうか、和装の装いで玄関の掃き掃除をしている。
「いらっしゃいませ、ようこそ水星屋へっ ?!」
私とキンカモミジの顔を見るなり、血相を変えて旅館の中へと走り込んで行く。
「お母さんっ、お母さーん !!」
「なんだいなんだい、騒がしいねぇ。他のお客様の迷惑になるだろう、それに仕事中は女将さんって呼びな 」
奥から青色の仲居着を来た女性が急いでは居るが、全く足音を立てずに2階から降りてくる。私達の事を確認すると、深々と頭を下げお辞儀する。
「ようこそ、おいでくださいました。キンカモミジ殿、シラユリ殿またお連れ様。当旅館、水星屋へ。私、ここの女将をしておりますリンと申します。先ほどは、娘のサンが大変お見苦しい所をお見せしてお恥ずかしい」
「いやいや、頭を上げて下さいよ。それに娘さん元気があって良いじゃないですか」
「シラユリ殿にそう言って頂き有難く存じ上げます。立ち話もなんですので、お部屋へご案内致します」
女将に案内され、二階にある約15畳はあろうかという客室へと入る。案内を終えると、再び女将が私達の前で畏まる。
「改めまして、私当旅館の女将兼当代水星をしているリンと申します。月星より話は伺っておりましたので、当旅館自慢のお部屋をご用意しておきました」
「にゃはは、さすが七天は情報伝達が迅速だねぇ~。それで大体の要件は伝わってる ?」
「はい、伺っております。我ら七天それぞれ役割がございます。月星は民草に紛れ、表側より龍姫様を御守りし、木星は影となり龍姫様を御守りする事を生業としています。我ら水星は闘気を闘いの為に練り上げたのではなく、眼力として昇華させ最適な治療法を提示するよう訓練されております。なかでも娘のサンは、当旅館でずば抜けてその素質が現れております」
女将が奥から先ほどの女の子を連れて来て、私達の前に座らせる。そして、その間に温泉の地図を置く。
「リン、龍姫様達の身体に最も適した温泉を示しておやり」
リンと呼ばれた女の子の両目に闘気が集まり、黒目の色が水色へと変わっていく。ジッと私の瞳を見つめ、様々な気や息遣い等から適切な湯治場所を割り出すとのこと。しばらくして、地図上の温泉を指し示す。
「龍癒庵、龍姫様しか入れない温泉です。微量ながら覇気が含まれており、他のモノは温泉に近づいただけで気により亡くなってしまいます。しかし、龍姫様にとっては格別の療養所かと存じ上げます」
やはりというべきか、キンカモミジも同じ龍癒庵という事になった。次にコシに目線が合うと、今度は仙人泉という温泉を示す。
「お疲れ様はかなり気を練り上げて闘う為、闘気や蒼気がかなり疲弊しています。体力と共に気を回復する仙人泉は最適かと存じ上げます」
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