18 / 36
ミズシと超高速帆船ルガンワス
しおりを挟む
リーモを発ってから早1週間程で、ミズシの中心地まで私達は来ていた。休憩の為、外に降りると散々愚痴を吐いたキンカモミジはツヤツヤしている。対象的に愚痴を聞かされ続けた私とコシは、新しい町に到着した事すら喜べない程疲弊していた。
「どうしたの、皆疲れきった顔して ?」
普段クロツツジの暴走を抑えるため冷静に振舞っているためか、完全オフモードのキンカモミジはかなりマイペースだと感じてしまう。
「もぉ~、ホントに龍姫はぁ~ !」
「まぁまぁ落ち着きなよ、こんな事で怒っても体力の無駄遣いになるわよ」
怒りが治まらないコシを宥めつつ、コレからの予定を聞く。一応、龍行証を使えばルガンワスには直ぐ乗れるのだが、ミズシの領主が形式を重んじるらしくカタチだけの挨拶が必要になるとの事らしい。
「どんな人なの、その領主って ?」
「元々は旦那さんが治めていたんだけど、前領主が亡くなってからは、ウ・チョオって奥さんが現領主をやってるわ」
「キンカモミジは会った事あるの ?」
「管轄院の仕事で何度かね。確か東の果ての国出身で、かなり肝の据わった人よ」
キンカモミジの案内で領主の屋敷を訪れると、大きなの東の果ての国特有の建物が優雅に建っていた。中に入ると畳の匂いが香り、四十畳はある大広間へと案内される。
奥の一段分高くなっている畳の上に、黒い着物を着崩した女性がキセルを片手に座っていた。
「随分と久しぶりじゃないかい、キンカモミジ。おや、隣りが件の白龍の龍姫かい ?」
「にゃはは、流石に耳が早いわね。久しぶりだねウ、元気してたかしら ?」
「変わりない、キンカモミジも息災でなによりだ」
「ここに来たのはねーーー」
「ルガンワスーーー 」
「やはりと言うか流石だね。そう、龍行証の提示で乗りたいのだけれど大丈夫そう ?」
ウと呼ばれた女性は近くに居た女中から書類を受け取ると、パラパラと一斉に目を通す。
「大丈夫だけれど、せっかくだ良い部屋を用意しよう。だが横入りには変わりない3日程時間もらうが、構わぬか ?」
「それは勿論大丈夫よーーー」
「ただ準備が出来るまで、少し手伝って欲しい事があるのだが ?」
ウが女中に指示を出すと、私達の前に一人用のお膳が運ばれてくる。緑色の葉と、それから作られたお茶と茶菓子が乗っている。
「その緑色の葉は、私の故郷東の果ての国名産だ。私個人がミズシへ持ち込み栽培しているのだが、今年は人手が足りなくてな茶摘みを手伝って貰いたい。ちょうど同郷の者もいるし、やり方は分かると思う」
キンカモミジの返答を聞く前に、では頼んだぞと言い残し去って行ってしまった。女中の案内により、件の菜園へと私達は足を踏み入れる。温室のような建物の中には、綺麗に切り揃えられた茶株が並んでいた。新芽からは鼻を擽るように、良い香りが漂っている。
「道具は一式こちらに用意してあります。当主、ウ・チョオに変わりお願い申し上げます」
「しょうがないし、支度しますか。まぁ、ボクの言う通りに装束着て貰えれる ?」
収穫用作務衣のようなモノを着用し、頭には頭巾みたいなモノを巻いて作業するのが習わしらしい。摘んだ茶葉を入れる籠を腰に着け、大きな鋏のような器具を使い茶葉を刈り取っていく。始めてみると意外と面白く、気がつけば温室の外はすっかり暗くなっていた。
そろそろ夕飯時という絶妙なタイミングで、女中がソコソコ豪華な軽食を持って現われる。
「皆様、そろそろ時間も時間ですので終わりにしては如何でしょう。簡易ではありますが、お夕食を御用意いたしました。どうぞ、お召し上がりください」
女中に促され頼まれていた仕事を終わりにし、運ばれて来た夕食に舌鼓を打つ。軽食とはいえ、領主の館だけあり超一流の味付けだ。
半ば食べた終えた頃、突如として温室の照明が一斉に落ちる。目が暗闇に慣れず、辺り一面が暗闇と化す。その中で唯一、蒼気を放つ女中だけが浮かび上がる。その手には甘味用のデザートナイフが握られ、刃先から私達に向かい重い殺気が放たれている。
「龍殺しの御二家が一つ、西国のクラサキ家。ミイカ・クラサキ、龍の魂を屠らさせて頂きます」
いきなり名乗りを挙げたかと思えば、今度は人間とは思えない速さで私に遅いかかってくる。急襲を仕掛けられ、覇龍化しようにも反応が遅れ枢車さえ取り出せない。ナイフが私を捉えると思った瞬間、温室の入口が開きウともう一人が慌てて入ってくる。
鼻先ギリギリのところで、ナイフはその人物により明後日の方向へと飛んでいく。
「危ない危ない、ギリギリセーフ。龍姫のピンチに呼ばれて登場、紹介屋サイちゃん此処に登場 !!」
驚いた事に領主と現われたのは、リーモで妖水湖の調査を紹介してくれたイバ・サイだった。
「一介の紹介屋が何用ですか ?」
新しく懐からナイフを取り出し、割入って来たサイに向かい姿が揺らめく程の蒼気を放つ。
「ノンノン、紹介屋とは世を忍ぶ仮の姿。三英傑の冒険者達が残していった置き土産。龍殺しや継承の儀から龍姫を護る七天が一人、月星イバ・サイ颯爽と登場し候 !」
「どうしたの、皆疲れきった顔して ?」
普段クロツツジの暴走を抑えるため冷静に振舞っているためか、完全オフモードのキンカモミジはかなりマイペースだと感じてしまう。
「もぉ~、ホントに龍姫はぁ~ !」
「まぁまぁ落ち着きなよ、こんな事で怒っても体力の無駄遣いになるわよ」
怒りが治まらないコシを宥めつつ、コレからの予定を聞く。一応、龍行証を使えばルガンワスには直ぐ乗れるのだが、ミズシの領主が形式を重んじるらしくカタチだけの挨拶が必要になるとの事らしい。
「どんな人なの、その領主って ?」
「元々は旦那さんが治めていたんだけど、前領主が亡くなってからは、ウ・チョオって奥さんが現領主をやってるわ」
「キンカモミジは会った事あるの ?」
「管轄院の仕事で何度かね。確か東の果ての国出身で、かなり肝の据わった人よ」
キンカモミジの案内で領主の屋敷を訪れると、大きなの東の果ての国特有の建物が優雅に建っていた。中に入ると畳の匂いが香り、四十畳はある大広間へと案内される。
奥の一段分高くなっている畳の上に、黒い着物を着崩した女性がキセルを片手に座っていた。
「随分と久しぶりじゃないかい、キンカモミジ。おや、隣りが件の白龍の龍姫かい ?」
「にゃはは、流石に耳が早いわね。久しぶりだねウ、元気してたかしら ?」
「変わりない、キンカモミジも息災でなによりだ」
「ここに来たのはねーーー」
「ルガンワスーーー 」
「やはりと言うか流石だね。そう、龍行証の提示で乗りたいのだけれど大丈夫そう ?」
ウと呼ばれた女性は近くに居た女中から書類を受け取ると、パラパラと一斉に目を通す。
「大丈夫だけれど、せっかくだ良い部屋を用意しよう。だが横入りには変わりない3日程時間もらうが、構わぬか ?」
「それは勿論大丈夫よーーー」
「ただ準備が出来るまで、少し手伝って欲しい事があるのだが ?」
ウが女中に指示を出すと、私達の前に一人用のお膳が運ばれてくる。緑色の葉と、それから作られたお茶と茶菓子が乗っている。
「その緑色の葉は、私の故郷東の果ての国名産だ。私個人がミズシへ持ち込み栽培しているのだが、今年は人手が足りなくてな茶摘みを手伝って貰いたい。ちょうど同郷の者もいるし、やり方は分かると思う」
キンカモミジの返答を聞く前に、では頼んだぞと言い残し去って行ってしまった。女中の案内により、件の菜園へと私達は足を踏み入れる。温室のような建物の中には、綺麗に切り揃えられた茶株が並んでいた。新芽からは鼻を擽るように、良い香りが漂っている。
「道具は一式こちらに用意してあります。当主、ウ・チョオに変わりお願い申し上げます」
「しょうがないし、支度しますか。まぁ、ボクの言う通りに装束着て貰えれる ?」
収穫用作務衣のようなモノを着用し、頭には頭巾みたいなモノを巻いて作業するのが習わしらしい。摘んだ茶葉を入れる籠を腰に着け、大きな鋏のような器具を使い茶葉を刈り取っていく。始めてみると意外と面白く、気がつけば温室の外はすっかり暗くなっていた。
そろそろ夕飯時という絶妙なタイミングで、女中がソコソコ豪華な軽食を持って現われる。
「皆様、そろそろ時間も時間ですので終わりにしては如何でしょう。簡易ではありますが、お夕食を御用意いたしました。どうぞ、お召し上がりください」
女中に促され頼まれていた仕事を終わりにし、運ばれて来た夕食に舌鼓を打つ。軽食とはいえ、領主の館だけあり超一流の味付けだ。
半ば食べた終えた頃、突如として温室の照明が一斉に落ちる。目が暗闇に慣れず、辺り一面が暗闇と化す。その中で唯一、蒼気を放つ女中だけが浮かび上がる。その手には甘味用のデザートナイフが握られ、刃先から私達に向かい重い殺気が放たれている。
「龍殺しの御二家が一つ、西国のクラサキ家。ミイカ・クラサキ、龍の魂を屠らさせて頂きます」
いきなり名乗りを挙げたかと思えば、今度は人間とは思えない速さで私に遅いかかってくる。急襲を仕掛けられ、覇龍化しようにも反応が遅れ枢車さえ取り出せない。ナイフが私を捉えると思った瞬間、温室の入口が開きウともう一人が慌てて入ってくる。
鼻先ギリギリのところで、ナイフはその人物により明後日の方向へと飛んでいく。
「危ない危ない、ギリギリセーフ。龍姫のピンチに呼ばれて登場、紹介屋サイちゃん此処に登場 !!」
驚いた事に領主と現われたのは、リーモで妖水湖の調査を紹介してくれたイバ・サイだった。
「一介の紹介屋が何用ですか ?」
新しく懐からナイフを取り出し、割入って来たサイに向かい姿が揺らめく程の蒼気を放つ。
「ノンノン、紹介屋とは世を忍ぶ仮の姿。三英傑の冒険者達が残していった置き土産。龍殺しや継承の儀から龍姫を護る七天が一人、月星イバ・サイ颯爽と登場し候 !」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる