龍姫伝〜白き覇者の物語〜

安藤 炉衣弩

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マクサ武芸大会

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 数日後、第1ブロックから初戦が始まり会場全体が湧き上がる。凄まじい熱気と歓声により、まるで闘技場が揺れるかのようだ。

「お待たせしました、年に一度のマクサ武芸大会只今より開幕です。さぁ、改めて決まりを確認しましょう。武器の使用は大会運営が用意した刃がついていない物を使えば全て使用可能です。もちろん拳で闘いたい人も大丈夫、ただし術の使用は禁止です。戦意喪失か戦闘不能となれば決着、時間制限なしの実践形式。マクサ武芸大会、開幕 !!」

再び湧き上がる会場と同時に、一人の出場選手が槍を抱え入場してくる。銀色の鎧を纏い、長い金髪を靡かせた女性だ。

「前大会優勝者、雷光の騎士姫、エレン・ダスター。雷光一閃、今日も槍と共に華麗に舞うのかぁ !!」

紹介が終わると、今度は反対から大柄で筋肉質おまけにスキンヘッドの色黒の男性が入場する。手には手甲の様なものを付けており、黒いタンクトップに普通のズボンという対照的な両者だ。

「親っさん、頑張れー !」

「棟梁、今年こそは優勝だぁあ !!」

掛けられる声援に白い歯と、太陽に照らされる頭で答え雷光の騎士姫と対峙する。

「地元マクサ随一の大工、みんなから親しまれている親方が今年も参戦だ。何の因果か、必ず発生する雷光の騎士姫対親方の勝負、連敗記録を親方は止められるのか !!」

 司会が後退していき、代わりに審判が両者の間に入る。両者構えという掛け声と共に、槍を華麗に構える女性対し親方は拳を併せ相対する。

「分かってると思うが、今年も手加減抜きでやらして貰うからな」

「無論だ、対峙する者には全力で応対するのが武芸者としての礼儀。今年も一閃にて屠らせて頂く !」

「今年はそうはいかんぞ、仕事をしながら身体を鍛えたからなーーー 」

 始めという合図と共に騎士姫の突きが親方を襲うが、なんと真正面から拳で打ち合ったのである。そのまま槍を多角方向に扱い連撃する騎士姫に対し、全てを親方は正面から拳で防ぐ。

「確かに昨年より歯ごたえがありますが、コレならどうですかぁ !!」

 間合いを取り、槍を再び構え直すと槍が揺らめく程の気合いが込められる。親方も同様に拳に気が込められ、同時に怒気をを込めた咆哮が会場に響く。

二激の雷光ツヴァイススピアー!!」

 瞬きの間に槍が振り抜かれ、いかづちの如く轟音が鳴り響く。さらに、遅れて轟音がもう一度鳴り響く。一瞬の間に雷光の騎士姫は二激を振り抜いたのである。しかし、親方はその二激を拳で受けきったのだ。

「さすがです。しかし、成長したのは貴方ばかりではありませんよ !」

「ぬぅ ーーー」

 再び槍に気が込められるが、先程と違い今度は先端から持ち手まで揺らめくほど大量の気が送られる。親方も異変を感じ、彼女から飛び退こうとする。しかし、親方が離れようとした瞬間に落雷音が三激鳴り響く。
 一閃三激、言葉すればこうだろうか。槍を一閃振り抜く間に雷光の騎士姫は、上乗せして二激を放ったのだ。無論、親方の退避も間に合わずに腹部に槍が当てがわれた状態で硬直する。

「まだ速度が上がるのか、しかも、まだ何か隠してやがるな ?」

「お見事です、三激の雷光トライズススピアー、この技を受けて立っているのはおろか会話までするとは ーーー」

 雷光の騎士姫が槍を引き抜き、華麗に廻し柄を地面突き立てる。同じくして、親方も背中から豪快に倒れ勝負が決着する。

「決着、今年も雷光の騎士姫エレン・ダスターが勝利ィィ  !!」

 最後、雷光の騎士姫が槍に気を込めた時確かに感じた。身体の表面がジリジリと熱くなったかのように、しかしほんの一瞬だった為にソレが女将さんの言っていたモノなのかは分からない。
 雷光の騎士姫対親方の試合が終わり、数試合あったのだが、それ以降は何も感じ取れなかった。

 宿に戻りコシと夕食を食べようと思っていたのだけれど、出場選手は不正をしないように前日から会場に泊まり込む決まりらしい。まぁ、さっき荷物を取りに来たコシに、お酒はくれぐれも飲まないようにと指摘された。人間ダメだと言われると余計に飲みたくなり、私が座っているカウンターの前には果実酒が一杯置かれている。

「ぬっあっははっ、いやー負けた、負けた !!」

 周りの視線集めるかのように、大声と共に先ほど見た大男が笑い声と共に宿の酒場へと入って来たのだ。

「遅かったさね、負けた割には随分とご機嫌じゃないかい ?」

「いや何、あの姫さん毎年強くなっていくのが嬉しくてなぁ。ちょっちばかし、本気で殴り合いが出来るのが楽しくてなぁ !!」

 親方はズカズカと店内に入り、隣りの席に豪快に着席する。

「あんたねぇ、ただでさえ図体デカいんだから少しは周りに気を使いなさいなーーー 」

「ぬっあっははっ、こいつはすまねぇ。悪かった嬢ちゃん !!」

「まったく、しょうがない親父さね。シラユリも何か文句の一つでも言っておやり」

 名前を聞いた瞬間、親方が血相を変え私の顔を覗き込む。

「あの何か ?」

「シラユリってことは、じゃあこの嬢ちゃんがあいつの娘なのか !?」

「ええ、彼の娘よーーー 」

 突如として盛り上がる2人の話に着いていけず、困惑していると親方がバンバンッと私の肩を叩く。

「こいつは驚いた、まさかこんな所でお前さんに会えるとはなぁ !!」

「えっ、ちょっ何々、話しに着いてけないんだけど ?」

「おっと悪い、あまりにも突然過ぎて興奮しちまった。俺の名前はな ーーー」

 その後、親方から聞かされ話しに私は衝撃を受けた。何せ昔話をしないおじさんの、過去に何があったかのエピソードだったからだ。



↓下部掲載:夏休み特別イラスト掲載
                     左:シラユリ通常時
                     右:クロツツジ通常時


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