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しおりを挟む お昼寝の部屋はオレの部屋にした。レオと添い寝がしたかったからだ。
リラックスできるようにレオの靴と靴下を脱がせ、首元を緩めてやる。
「さ、お母様が絵本を読むよ。終わったら一緒にお昼寝しような」
「はいっ」
瞳をキラキラさせるレオとベッドに寝転ぶ。ちと体勢がきついが絵本をレオの上に掲げて開いた。ちなみにレオがジェイドの入った虫かごを離さないので一緒にベッドの上だ。レオの枕元でこちらもワクワクした顔で行儀良く虫かごの中で座っている。まぁ、虫だと思わなければ可愛いと言えないこともない。
「昔々、まだお空にお日様もお月様もなかった頃のお話です───」
この屋敷には小さいが図書室があり、そこで事前に選んでおいた本だ。
どんな絵本がいいかわからず、神様たちが太陽と月を造るという神話めいた話を選んだのだが、少し長過ぎたのか、面白くなかったのか、途中でレオが眠そうにし始めた。
「いいんだよ、レオ。眠かったらそのまま眠ればいい」
声を掛けると首を横に振りながらむにゃむにゃと何か話し、すーっと寝入ってしまった。
なんて愛しいんだろう。
オレはしばらく息子の顔から目が離せなかった。
こんなにもいたいけな3歳の子供に昼寝の時間もないほど勉強や鍛錬をさせるなんて。あ、オレがやらせてたのか。
また3歳でそれをこなせてしまうレオのスペックの高さよ。
「おい、続きを読んでくれ」
ジェイドが焦れたように声を掛けてきた。
「続きは、また夜だ。それよりもう少しジェイドの話を聞いておきたい」
オレはそっとベッドを降りると、虫かごを手に隣の部屋に移動した。寝室とは廊下に出ずに行き来できるようになっている、居間だ。
虫かごの扉を開けジェイドを開放した。
ジェイドは嬉しげに部屋飛びながら大きく一周し、ベルのところに行くと、蜂蜜入りの紅茶を頼んでいた。
「ジェイド、聖魔法とお前達妖精にはどんな関係がある?担当になることにどういう意味があるんだ?」
確か、この国には聖属性があっても聖魔法を使えるのは今のところ一人もいないはずだ。
オレの向かいのソファに落ち着いたジェイドに問いかける。
「うむ。光と闇は対だ。聖魔法を使えるものが現れたということは闇魔法を使うものが現れたということなんだ。
俺たち妖精族は、弱い一族だ。清浄な気の中でしか存在できないし、産まれることも出来ない。だから過去、魔王という存在の放つ悪しき気に何度も滅ぼされかけた」
妖精ってそんなに弱いのか。昔は多かった一族も今ではかなり数を減らしているらしい。
──そうか、Gと一緒にして悪かったな。一匹見たら百匹というわけではないのか。
「次に魔王が現れたら全滅しちまうかもしれん。俺達一族はあらゆる世界に散り、魔王の誕生に警戒し、見張るようになった。聖魔法と闇魔法を使う者が現れるのを」
「ふーむ、それでオレの聖魔法に即座に反応したのか」
「そうだ。それはつまり何処かで闇魔法も誕生しているということだ。
魔王は最初から魔王なわけではない。今なら闇魔法もまだ脆弱なはず。叩き潰すのは今なんだ」
魔王。
将来勇者となったレオが討伐に向かう相手だ。
“近い将来、魔王が現れる。備えよ”
という大神官の預言が的中してしまった形になるのか。てっきり奴はオレを陥れたい第二王子と手を組み適当なことを言ったとばかり思っていたが、どうやら違うらしい。
「ん?・・・叩き潰すのは今?」
「そうだ。奴が魔王になる前に」
「・・・そうか、最初から魔王じゃないのか」
だとしたら、だとしたら。
今、闇魔法の遣い手をぶっ叩いてぶっ潰したら、将来レオは魔王と戦わなくて済むってことになるよな。
そもそも勇者の修行なんてやめさせようと思っていたんだ。
「よしゃ!その話、一枚噛ませて貰うぜ!」
「あ、ああ。・・・なんかお前の方が闇魔法の遣い手っぽいけどな」
ん?後半小声で何か言ったか?まぁ、特に興味はない。
「で、奴はどこにいるんだ?さっくり片付けよう!」
「落ち着け、まだ情報は入ってない。それにまだ行くわけにはいかないぞ。闇魔法には聖魔法でしか対抗出来ないのだから、先ずはお前の聖魔法をもっと高めなければならない」
「そうか。・・・ジェイド?オレ、聖魔法を使おうと思って使ったわけじゃないのだが」
よくよく考えて見たら聖魔法を発動させたことも知らなかったというか。
「・・・・・うーむ」
ジェイドの表情が厳しくなった。
オレは聖魔法が発動した時のキラキラした感じをイメージしてみた。
──発動しない。
魔法には属性というものがあって、それは大まかに五つに分けられる。[火]・[風]・[土]・[水]・[雷]だ。
大体がその中の1から2種類の属性を持つ。
それとは別に、神官としての修行を積むと治癒魔法というものが使えるようになる。
聖魔法(光魔法)、闇魔法は観念として、そういう属性もある。といったゆるい捉え方だ。大昔にはあったらしいね、といった感じ。
「・・・特訓だ。闇魔法の攻撃には聖魔法でしか対抗出来ない!お前の魔力を聖魔法に全振りするんだ!」
「んな、無茶な。身の危険を感じたらどうしたらいいんだ?聖魔法は身を守っちゃくれないだろ?」
そもそも聖魔法って何なんだ。
リラックスできるようにレオの靴と靴下を脱がせ、首元を緩めてやる。
「さ、お母様が絵本を読むよ。終わったら一緒にお昼寝しような」
「はいっ」
瞳をキラキラさせるレオとベッドに寝転ぶ。ちと体勢がきついが絵本をレオの上に掲げて開いた。ちなみにレオがジェイドの入った虫かごを離さないので一緒にベッドの上だ。レオの枕元でこちらもワクワクした顔で行儀良く虫かごの中で座っている。まぁ、虫だと思わなければ可愛いと言えないこともない。
「昔々、まだお空にお日様もお月様もなかった頃のお話です───」
この屋敷には小さいが図書室があり、そこで事前に選んでおいた本だ。
どんな絵本がいいかわからず、神様たちが太陽と月を造るという神話めいた話を選んだのだが、少し長過ぎたのか、面白くなかったのか、途中でレオが眠そうにし始めた。
「いいんだよ、レオ。眠かったらそのまま眠ればいい」
声を掛けると首を横に振りながらむにゃむにゃと何か話し、すーっと寝入ってしまった。
なんて愛しいんだろう。
オレはしばらく息子の顔から目が離せなかった。
こんなにもいたいけな3歳の子供に昼寝の時間もないほど勉強や鍛錬をさせるなんて。あ、オレがやらせてたのか。
また3歳でそれをこなせてしまうレオのスペックの高さよ。
「おい、続きを読んでくれ」
ジェイドが焦れたように声を掛けてきた。
「続きは、また夜だ。それよりもう少しジェイドの話を聞いておきたい」
オレはそっとベッドを降りると、虫かごを手に隣の部屋に移動した。寝室とは廊下に出ずに行き来できるようになっている、居間だ。
虫かごの扉を開けジェイドを開放した。
ジェイドは嬉しげに部屋飛びながら大きく一周し、ベルのところに行くと、蜂蜜入りの紅茶を頼んでいた。
「ジェイド、聖魔法とお前達妖精にはどんな関係がある?担当になることにどういう意味があるんだ?」
確か、この国には聖属性があっても聖魔法を使えるのは今のところ一人もいないはずだ。
オレの向かいのソファに落ち着いたジェイドに問いかける。
「うむ。光と闇は対だ。聖魔法を使えるものが現れたということは闇魔法を使うものが現れたということなんだ。
俺たち妖精族は、弱い一族だ。清浄な気の中でしか存在できないし、産まれることも出来ない。だから過去、魔王という存在の放つ悪しき気に何度も滅ぼされかけた」
妖精ってそんなに弱いのか。昔は多かった一族も今ではかなり数を減らしているらしい。
──そうか、Gと一緒にして悪かったな。一匹見たら百匹というわけではないのか。
「次に魔王が現れたら全滅しちまうかもしれん。俺達一族はあらゆる世界に散り、魔王の誕生に警戒し、見張るようになった。聖魔法と闇魔法を使う者が現れるのを」
「ふーむ、それでオレの聖魔法に即座に反応したのか」
「そうだ。それはつまり何処かで闇魔法も誕生しているということだ。
魔王は最初から魔王なわけではない。今なら闇魔法もまだ脆弱なはず。叩き潰すのは今なんだ」
魔王。
将来勇者となったレオが討伐に向かう相手だ。
“近い将来、魔王が現れる。備えよ”
という大神官の預言が的中してしまった形になるのか。てっきり奴はオレを陥れたい第二王子と手を組み適当なことを言ったとばかり思っていたが、どうやら違うらしい。
「ん?・・・叩き潰すのは今?」
「そうだ。奴が魔王になる前に」
「・・・そうか、最初から魔王じゃないのか」
だとしたら、だとしたら。
今、闇魔法の遣い手をぶっ叩いてぶっ潰したら、将来レオは魔王と戦わなくて済むってことになるよな。
そもそも勇者の修行なんてやめさせようと思っていたんだ。
「よしゃ!その話、一枚噛ませて貰うぜ!」
「あ、ああ。・・・なんかお前の方が闇魔法の遣い手っぽいけどな」
ん?後半小声で何か言ったか?まぁ、特に興味はない。
「で、奴はどこにいるんだ?さっくり片付けよう!」
「落ち着け、まだ情報は入ってない。それにまだ行くわけにはいかないぞ。闇魔法には聖魔法でしか対抗出来ないのだから、先ずはお前の聖魔法をもっと高めなければならない」
「そうか。・・・ジェイド?オレ、聖魔法を使おうと思って使ったわけじゃないのだが」
よくよく考えて見たら聖魔法を発動させたことも知らなかったというか。
「・・・・・うーむ」
ジェイドの表情が厳しくなった。
オレは聖魔法が発動した時のキラキラした感じをイメージしてみた。
──発動しない。
魔法には属性というものがあって、それは大まかに五つに分けられる。[火]・[風]・[土]・[水]・[雷]だ。
大体がその中の1から2種類の属性を持つ。
それとは別に、神官としての修行を積むと治癒魔法というものが使えるようになる。
聖魔法(光魔法)、闇魔法は観念として、そういう属性もある。といったゆるい捉え方だ。大昔にはあったらしいね、といった感じ。
「・・・特訓だ。闇魔法の攻撃には聖魔法でしか対抗出来ない!お前の魔力を聖魔法に全振りするんだ!」
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