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確認したら、どうやらオレ以外に妖精の言葉を理解している者はいなかった。レオたちには妖精は小鳥のようにピーピー囀っているように聴こえるらしい。
「なるほど・・・」
“出せー!コノヤロー!”
だから二人ともやけに妖精に同情的なんだな。
食後の紅茶を飲みつつ、足元の虫籠をテーブルに乗せた。
「ジェイド、君の言葉はオレしか理解できていないようだが、なんとかならない?」
いちいち間に入って伝えるのは面倒だ。
“軽く言うな。まぁ、俺様の能力を持ってすれば俺の言葉を周知させるのは簡単なことだがな”
「へぇー?すごい魔法だね!」
「フン、一瞬でできるさ」
チカリとジェイドの体が光を帯びた。なかなかにノリの良い妖精だった。
「わぁ!おかあさま、ぼくにもようせいさんのことばがわかるようになりました!」
レオが大喜びだ。
「レオ、俺はジェイド。よろしくな。俺の側にいると聖魔法が発現しやすくなるぜ」
「わぁー、よろしくです・・・?」
あまりにもイメージと違っていたんだろう、レオが固まった。
「俺はこの聖魔法使いの担当になった。よって、常に側にいるのが理想だ。
妖精のいる家は栄えるというからな。そこまで望むのなら一緒に暮らしてやろうじゃないか!」
「わ、わあ・・・?」
虫かごという檻の中で独善的に話を進めるジェイドに無邪気な我が子の反応が可愛い。多分頭の中は?でいっぱいなんだろうな。
「誰も望んでない。
・・・ジェイド、オレに聖魔法の能力があるというのは本当か?魔力は確かに高いと知ってはいるが・・・」
その魔力の高さのおかげで罠に掛けられ、王太子になれずここに未来の勇者の母としているわけだ。
「もともとの下地はあったのだろうが発現していなかったんだろうな。聖魔法は純粋な愛情からしか生まれないから」
「なるほど」
純粋な愛情といえば一つしかない。オレのレオへの愛情だろう。混じり気なしの純度の高い愛情だと言い切れる。
ふふーん。愛情という目に見えないものの数値を示され、オレは気分が良くなった。
虫かごの結界を解き、ジェイドを開放してやる。
ジェイドはレオの肩にとまったり、追いかけっこをしたり、あっという間にレオと仲良くなって遊んでいる。
そういえば、子どもの情操教育にペットを飼うことが良いと言われていたな。オレの理想とするペットとはかなり違うが。
元の世界ではカブト虫を飼うのも人気だった。
「レオ、ジェイドが気に入ったか?」
「はい!ジェイドさまとあそぶの、とってもたのしいです!」
「そうか、きちんと躾ができるのなら飼おうか」
「ゴラァ!ダーレが誰を飼うって言うんだ?俺は妖精様だぞ。尊い存在に、なに失礼なこと言ってんだ!」
「オレにとったらGに毛が生えたようなものだが・・・。レオのためだ。我が家で暮らすことを認めよう。
だが一つ。レオに害を為す事があれば命はないと思えよ」
「ジェイドさま!おかあさまがゆるしてくださいました!」
「いや、俺の話まるっと無視だがな」
「この虫かごが寝場所ということでいいか?」
「良いわけあるか!俺はお前のベッドで一緒に寝るぞ」
「はあ?」
Gと、・・・いやGではないが。虫と一緒に寝る?あ、虫じゃなかったな。
「あの、あの、ぼくといっしょにねてもいいですよ?」
う、可愛い!
しかも慈愛の心に満ちている。
「あーん?まぁ、たまになら寝てやらんこともない」
「ベル、殺虫剤だ!“レオに害を為す事があれば命はないと思えよ”──地獄へ堕ちろ」
「ひーーーっ!!魔王!?」
静かに立ち上がるオレにジェイドがぶんぶんと首を振る。
「ぼく、なにもされてまちぇん!」
レオがオレの足に抱きついてくる。噛んでる。可愛い!
それにしてもなんて優しい子なんだろう。わかったよ、ここはオレが引こう。
「ま、禍々しい。まさか、お前、闇魔法も使えるんじゃ?」
「闇魔法?使ったことはないが。──ああ、幼い頃の適性検査では全魔法に適性があると言われたから、聖魔法のようにこれから開花するかもな」
「ほわあ。おかあさますごい~」
「や、やべー奴だ、近寄らんどこ」
白い顔をさらに白くしたジェイドは自ら虫かごへと入った。わかってるじゃないか。
オレは虫かごごとレオに渡した。
「レオ、大事に育てようね」
「だから、ペットじゃないっつーの」
こうしてジェイドの同居が決まった。
「さて、レオ。午後は魔法の鍛錬だったな」
「はい。──あ、きょうはいつもよりおそくなってしまいました。せんせいがくるまえに、れんしゅうをがんばりたいのに」
妖精の乱入で時間を取られたからな。
「レオ、今日からは午後は1時間、一緒にお昼寝をしよう。魔法の鍛錬はそれからでも十分できるさ」
「ですが、ゆうしゃになるには・・・。い、いっしょに?」
「ん。オレと一緒は気まずいか?だったら一緒じゃなくてもいいんだ。ただ、レオの年頃は寝ることもとっても大切なことで、」
「ぼく、おかあさまといっしょがいいです!」
「そうか」
ああ、良かった。
ひどい母親だったのに、レオは一緒がいいと言ってくれた。
子供の持つ、天性の大きな愛情に心の底から感謝した。
「なるほど・・・」
“出せー!コノヤロー!”
だから二人ともやけに妖精に同情的なんだな。
食後の紅茶を飲みつつ、足元の虫籠をテーブルに乗せた。
「ジェイド、君の言葉はオレしか理解できていないようだが、なんとかならない?」
いちいち間に入って伝えるのは面倒だ。
“軽く言うな。まぁ、俺様の能力を持ってすれば俺の言葉を周知させるのは簡単なことだがな”
「へぇー?すごい魔法だね!」
「フン、一瞬でできるさ」
チカリとジェイドの体が光を帯びた。なかなかにノリの良い妖精だった。
「わぁ!おかあさま、ぼくにもようせいさんのことばがわかるようになりました!」
レオが大喜びだ。
「レオ、俺はジェイド。よろしくな。俺の側にいると聖魔法が発現しやすくなるぜ」
「わぁー、よろしくです・・・?」
あまりにもイメージと違っていたんだろう、レオが固まった。
「俺はこの聖魔法使いの担当になった。よって、常に側にいるのが理想だ。
妖精のいる家は栄えるというからな。そこまで望むのなら一緒に暮らしてやろうじゃないか!」
「わ、わあ・・・?」
虫かごという檻の中で独善的に話を進めるジェイドに無邪気な我が子の反応が可愛い。多分頭の中は?でいっぱいなんだろうな。
「誰も望んでない。
・・・ジェイド、オレに聖魔法の能力があるというのは本当か?魔力は確かに高いと知ってはいるが・・・」
その魔力の高さのおかげで罠に掛けられ、王太子になれずここに未来の勇者の母としているわけだ。
「もともとの下地はあったのだろうが発現していなかったんだろうな。聖魔法は純粋な愛情からしか生まれないから」
「なるほど」
純粋な愛情といえば一つしかない。オレのレオへの愛情だろう。混じり気なしの純度の高い愛情だと言い切れる。
ふふーん。愛情という目に見えないものの数値を示され、オレは気分が良くなった。
虫かごの結界を解き、ジェイドを開放してやる。
ジェイドはレオの肩にとまったり、追いかけっこをしたり、あっという間にレオと仲良くなって遊んでいる。
そういえば、子どもの情操教育にペットを飼うことが良いと言われていたな。オレの理想とするペットとはかなり違うが。
元の世界ではカブト虫を飼うのも人気だった。
「レオ、ジェイドが気に入ったか?」
「はい!ジェイドさまとあそぶの、とってもたのしいです!」
「そうか、きちんと躾ができるのなら飼おうか」
「ゴラァ!ダーレが誰を飼うって言うんだ?俺は妖精様だぞ。尊い存在に、なに失礼なこと言ってんだ!」
「オレにとったらGに毛が生えたようなものだが・・・。レオのためだ。我が家で暮らすことを認めよう。
だが一つ。レオに害を為す事があれば命はないと思えよ」
「ジェイドさま!おかあさまがゆるしてくださいました!」
「いや、俺の話まるっと無視だがな」
「この虫かごが寝場所ということでいいか?」
「良いわけあるか!俺はお前のベッドで一緒に寝るぞ」
「はあ?」
Gと、・・・いやGではないが。虫と一緒に寝る?あ、虫じゃなかったな。
「あの、あの、ぼくといっしょにねてもいいですよ?」
う、可愛い!
しかも慈愛の心に満ちている。
「あーん?まぁ、たまになら寝てやらんこともない」
「ベル、殺虫剤だ!“レオに害を為す事があれば命はないと思えよ”──地獄へ堕ちろ」
「ひーーーっ!!魔王!?」
静かに立ち上がるオレにジェイドがぶんぶんと首を振る。
「ぼく、なにもされてまちぇん!」
レオがオレの足に抱きついてくる。噛んでる。可愛い!
それにしてもなんて優しい子なんだろう。わかったよ、ここはオレが引こう。
「ま、禍々しい。まさか、お前、闇魔法も使えるんじゃ?」
「闇魔法?使ったことはないが。──ああ、幼い頃の適性検査では全魔法に適性があると言われたから、聖魔法のようにこれから開花するかもな」
「ほわあ。おかあさますごい~」
「や、やべー奴だ、近寄らんどこ」
白い顔をさらに白くしたジェイドは自ら虫かごへと入った。わかってるじゃないか。
オレは虫かごごとレオに渡した。
「レオ、大事に育てようね」
「だから、ペットじゃないっつーの」
こうしてジェイドの同居が決まった。
「さて、レオ。午後は魔法の鍛錬だったな」
「はい。──あ、きょうはいつもよりおそくなってしまいました。せんせいがくるまえに、れんしゅうをがんばりたいのに」
妖精の乱入で時間を取られたからな。
「レオ、今日からは午後は1時間、一緒にお昼寝をしよう。魔法の鍛錬はそれからでも十分できるさ」
「ですが、ゆうしゃになるには・・・。い、いっしょに?」
「ん。オレと一緒は気まずいか?だったら一緒じゃなくてもいいんだ。ただ、レオの年頃は寝ることもとっても大切なことで、」
「ぼく、おかあさまといっしょがいいです!」
「そうか」
ああ、良かった。
ひどい母親だったのに、レオは一緒がいいと言ってくれた。
子供の持つ、天性の大きな愛情に心の底から感謝した。
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