《完結》政略結婚で幸せになるとか

mm

文字の大きさ
上 下
23 / 26

番外編 2

しおりを挟む
 ギヴの押しの強さに、オレは一人で風呂に入り準備をすることを諦めた。そんなに一緒に入りたいなら入ろうじゃないか。アレはパジャマを着る際にでも挿入しておけばいいか、なんとかなるさ、と軽く考えていた。

 ──結論。
 オレの考えはとても甘かった。男同士の風呂がねちっこいものになるなんて思いもしなかったんだ。
 まず、男同士で風呂に入るのに緊張するなどと誰が思う?
 浴室に入り、湯船に真紅の薔薇の花びらが散っているのを見て、一瞬恥ずかしさで気が遠くなったが。
 時間差でシャワーを使いながら髪と体を洗い、湯船に浸かったのだが、ギヴの強い視線に気付いたのはそこから。
 
 向かい合わせに座って浸かっているのだが、猫足の洒落た浴槽はそこまで大きくはない。はっきり言って、二人で入るには狭い。
 ギヴに体が触れてしまわないよう、膝を抱える手にぎゅっと力を込めた。
 薔薇の花びらがいくつも浮かんでいるおかげで湯の中の体は見えていないはずだが落ち着かない。もっと水深が欲しい。トールと露天風呂に入った時は何も感じなかったのに。
 
 「ギヴ・・・、そんな、見ないで」
 
 「・・・じろじろ見てしまってすみません。驚いてしまって。貴方の裸が想像よりもずっと綺麗で。・・信じがたいほどに」

 え、なにそれ。小っ恥ずかしいー!裸が?オレの裸が?もしかしてシャワーを浴びてた時から見られてた?というか想像よりも、ってなに?ギヴはオレの裸を想像してたってこと?
 ぐああ。床を転げ回りたいほどの恥ずかしさ。

 顔に熱が集まり、・・・茹だった。もう上がりたい。でもここで立ち上がるわけにはいかない。

 「ラド、こっちに来て」

 それは、どういう意味ですか?そう問う間もなく、手首を軽く引っ張られ、体が湯の中で反転した。
 緊張がクライマックスに達した。

 只今、お湯の中で、後ろからギヴに抱きしめられている。
 な、なるほど。これならお互い足を伸ばせるね。さっきの向かい合ってるよりはのびのびと、のびのび・・・できるか!

 「花嫁衣装を纏った貴方は、とても美しかった。できれば誰の目にも映したくはなかった」

 アレは断じて“花嫁”衣装ではない。反論したいが、オレの上半身を後ろからやんわり拘束するギヴの両手がさっきからなにげに体を撫で撫でと這い回り、おまけに耳を何度もちゅっちゅと小鳥のように啄まれていて、うまく思考がまとまらない。

 「ギヴ・・・」

 「貴方に向けられる視線に私がどれだけ嫉妬したか、貴方は思いもしないのでしょうね」

 「・・・・あっ?!」

 ギヴの指先が責めるように両方の乳首をきゅっと摘み上げた。
 そのまま指は離れることなく揉みしだく。何を、って、オレの乳首を!

 「は、離せって。なんでそんなとこ・・・」

 「感じますか?」

 「男だぞ!んなわけ、・・・っ」

 「固くなってきましたよ?」

 「ギヴ、」

 振り返ると、そのまま口づけられた。優しく頭を固定され、ギヴの独占欲がそのまま表れたような深く長い口づけを受ける。片方の手は、まだ胸にあって、突起を揉んだり、かりかりと引っ掻いたり自由に遊んでる。

 ──気持ちいい。
 夢見心地で目を閉じ、いつしか口の中を這い回るギヴの舌に知らず、自分のそれを絡めていた。

 「・・・ギヴ、好き」

 「ラド、私はその3倍は貴方を思っています」

 「・・・それはすごいな」

 ぼんやりと微笑むと、ギヴの手がオレの股間に降りてきた。
 優しく握られて、自分のソレが上を向いていることに気付いた。

 「あ、・・・」

 慌てて体を起こそうとすると、お尻の辺りにぐり、と何か固くて熱いモノが当たった。
 これは、まさかのギヴのナニだろうか?
 ・・・え?え?
 始まってる?もう、始まってる感じ?
 初夜って、そういうものなのか?いや初夜に限らず───。
 オレは今更ながら、自分がこの方面に関して非常に無知なことに気が付いた。
 自慢じゃないが男も女も何一つ経験はない。これっぽっちも、ほんの少しもない。

 「ギヴ、手、離して・・・」

 恥ずかしさが戻ってきて全身が熱くなった。吐息まで熱い。
 ギヴの手はソコから離れ、さらに奥に潜った。

 「ここで、繫がるんです」

 「んあっ・・・」

 指先で締まっている穴の縁をそっと辿られる。

 「・・・怖いですか?」

 「・・・」

 ふるふると首を振る。
 
 「そろそろ上がりましょう」

 エスコートされて浴槽から出る。もう色々といっぱいいっぱいのオレはギヴのされるがままだ。
 ギヴはまるでオレのことを宝物だと言うように大切に体の水気を拭き、バスローブを着せ、髪の毛を丁寧に乾かした。
 お返しにオレも同じことをしようとしたのだが断られ、部屋で水を飲んで待つように言われた。「顔が真っ赤ですよ」と。
 
 寝室に戻るとひんやりとした空気がオレを包む。
 たしかにのぼせた感覚がある。ベッド脇のテーブルに置かれた水差しからグラスに水を注ぎ飲んだ。
 ふ、とベッドを見ると、

 「──やられた」

 ベッドの上にも薔薇の花びらが散らされていた。薔薇の香りが仄かに匂い立ち、ムードは満点だ。──小っ恥ずかしい~!

 「あ!」

 思い出した。ズボンのポケットにアレを入れたままだ。
 ど、どうしたら?脱衣所に戻ってギヴの見ている前でポケットから取り出す?
 ・・・で、できない。きっと、それは何だと聞かれるだろうし。

 人生において重要な場面でやらかしてしまっている自分に呆然とした。
 

 



 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚を夢見る伯爵令息の、眠れない初夜

西沢きさと
BL
天使と謳われるほど美しく可憐な伯爵令息モーリスは、見た目の印象を裏切らないよう中身のがさつさを隠して生きていた。 だが、その美貌のせいで身の安全が脅かされることも多く、いつしか自分に執着や欲を持たない相手との政略結婚を望むようになっていく。 そんなとき、騎士の仕事一筋と名高い王弟殿下から求婚され──。 ◆ 白い結婚を手に入れたと喜んでいた伯爵令息が、初夜、結婚相手にぺろりと食べられてしまう話です。 氷の騎士と呼ばれている王弟×可憐な容姿に反した性格の伯爵令息。 サブCPの軽い匂わせがあります。 ゆるゆるなーろっぱ設定ですので、細かいところにはあまりつっこまず、気軽に読んでもらえると助かります。

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

名もなき花は愛されて

朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。 太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。 姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。 火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。 断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。 そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく…… 全三話完結済+番外編 18禁シーンは予告なしで入ります。 ムーンライトノベルズでも同時投稿 1/30 番外編追加

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

わからないから、教えて ―恋知らずの天才魔術師は秀才教師に執着中

月灯
BL
【本編完結済・番外編更新中】魔術学院の真面目な新米教師・アーサーには秘密がある。かつての同級生、いまは天才魔術師として名を馳せるジルベルトに抱かれていることだ。 ……なぜジルベルトは僕なんかを相手に? 疑問は募るが、ジルベルトに想いを寄せるアーサーは、いまの関係を失いたくないあまり踏み込めずにいた。 しかしこの頃、ジルベルトの様子がどうもおかしいようで……。 気持ちに無自覚な執着攻め×真面目片想い受け イラストはキューさん(@kyu_manase3)に描いていただきました!

ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした

angel
BL
目に留めていただき有難うございます! 姿を見るだけで失禁するほどに恐ろしい真っ黒な獣人。 人々に嫌われ恐れられ山奥にただ一人住んでいた獣人のもとに突然現れた真っ白な小さな獣人の子供。 最初は警戒しながらも、次第に寄り添いあい幸せに暮らはじめた。 後悔しかなかった人生に次々と幸せをもたらしてくれる小さな獣人との平和な暮らしが、様々な事件に巻き込まれていき……。 最後はハッピーエンドです!

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

花に願う

BL
「三年に一度だけ、手に入れると絶対に恋が叶う花が出現する」という話を聞いた。僕はその花を手に入れたいと思ってしまった。もうすぐ卒業を控え、その前にこの恋を叶えたかったのだ。奔走しながらいよいよその日がやってきた。花は手に入るのか?無自覚受が恋に一生懸命になるお話です。■学園コメディー■なんちゃってファンタジー■家格のない貴族風 クリストファー・ランドルフ ジェラルド・エヴァーツ ★夏芽玉様企画参加作品2023 #恋が叶う花BL

処理中です...