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プリプリ怒るトールと紅茶のカップを持って、暖炉の前のソファに移動する。
「先に言っとくけど、俺は既婚者だからな。誘惑禁止」
「き、既婚者!?」
「そ、相手はテムだ」
「テ、テム!?」
「なんでそんなに驚く?一緒に夕食にまで同席したんだ、身内だとは思っていただろう?」
「・・・う、面目ない」
好々爺の村長だから、息子の友達の同席もありだったのかと。
だけど、言われてみれば、テムとトールはとても仲良しだったな。
ここでオレは、はっとした。
つまり、実体験に基づいた閨ごとの話が聞けるのだと。
「せ、先生・・・」
「うむ」
そして、トールから赤裸々に男同士の閨ごとの“いろは”を語られた。
「・・・・・」
オレは撃沈した。
「まぁ、何事も慣れだ。──というか、慣れてしまえばかなり気持ちいいぞ」
慣れ、の一言で片付けるか・・・。後半は小声過ぎて聞こえなかった。
「・・・先生、掘るのも掘られるのもどちらも出来そうにありません」
ちなみに、掘る掘らないの言い回しはトールから教わったのだ。オレにそんな知識はない。ドワーフは採掘好きだからそこから来てるのだろうか。
「ラブラドライトは掘られる方なんだから、そんなに心配しなくてもいいだろ。ギベオンに任せて寝転がってればそれでいいよ」
「だけど、オレのほうが年上だし、ギヴは嫁なんだから・・・」
「ギベオンが嫁なのか?」
「うん。うちに嫁いで来るんだ」
「ん~~、形式上はあまり関係ないと思うが。それに、嫁ぐというか、婿入りする感じなんじゃないか?」
「・・・・・」
「そんなに考え込むな。みんなやってることだ。
ただ、お前があまりにも無知そうなのが気になってな。心構えがあったほうがいいだろう?」
「・・・うん。色々教えてくれてありがとう、トール。──・・・全部冗談でしたー、とかある?」
ダメ元で聞いたら、トールは、ぷーーーっ、と盛大に吹き出した。その後は大爆笑がギヴたちが帰ってくるまで続いた。
「お、楽しそうだべ」
テムとギヴが露天風呂から帰ってきて、笑い転げるトールに声を掛けてきた。
テムはそのまま歩み寄ってくるとソファに座るトールの頭にキスを落とした。
「お待たせ。温まっておいで~」
うーむ、夫婦だと思えば夫婦に見えてくるなあ。
「ああ、テム。ラブラドライトに俺たちが人じゃないって話したよ。俺たちが結婚してることも」
「うん、ラブラドライトなら安心だ。ギベオンの奥方だし、その瞳を持つ者に悪い奴はいないべ。改めて、ドワーフの俺たちをよろしくな」
微笑むテムの瞳には親しいものに向ける好意があった。
「ありがとう、テム。オレは必ず秘密を守るよ」
まだ奥方ではないけどな。
ん?オレが奥方でいいのか?
ギヴは何も言わず微笑んでいた。
交代で山小屋のすぐ隣にある大きな岩で囲まれた露天風呂に入って。
「・・・星が、すごい!あ、月を発見」
登ってくる時は見つけられなかった月が、夜空の高い位置に登っていた。細い三日月だ。
「ふふ、さっきと同じこと言ってる」
「今日は動物は来ないのかな」
「あいつらは昼間に入りに来るのさ」
そうなのか。夜はちゃんと眠るのか。少し残念だ。
「・・・トール、その、テムとトールってどっちが、その、掘る側とか掘られる側とか決まっているの?」
「ああ、俺が下。掘られる方。夫婦によってはその都度上下が入れ替わるところもあるそうだけど。俺たちは固定だな。
俺が下だとわかっているからギベオンは俺とラブラドライトが一緒に風呂に入るのを許したのさ」
「そう、なのか・・・」
ということは、だ。ギヴの中で、オレが掘られる側だともう決まってる?
うーーむ。
嫌だ、という気持ちには不思議とならなかった。男同士で、というのには少し抵抗があるが。
・・・だって、まさかお尻の穴で繋がるとは思いもしなかったからさ。
「ラブラドライト、安心しろ!俺の自作のラブグッズを土産に大量に持たせてやるから」
考え込むオレにトールがとんでもないことを言い出した。
「人族は魔法が使えないからな~。準備が大変だろ?だから、そんな人族のために俺自らが実験台となり、試行錯誤の結果、浄化と潤滑、それにちょっぴり媚薬の効果をつけたモノを開発したんだ」
「・・・・・」
「な、大丈夫だからな」
──浄化と潤滑、ちょっぴり媚薬。
トールの言葉が頭の中をぐるぐる回るが、意味を理解するのが難しい。
トールがそんなオレに、大丈夫、大丈夫としきりに言うので、その度、何度も頷いた。
そしてしばらくして、なぜ浄化が必要なのか、なぜ潤滑が必要なのか、なぜちょっぴり媚薬が必要なのか、ようやく理解が追いついた。
「卜、トール、・・・ソレ、すご、いよ」
力が抜けて、隣りに座るトールの肩に頭突きした。
──湯当たりしていた。
「先に言っとくけど、俺は既婚者だからな。誘惑禁止」
「き、既婚者!?」
「そ、相手はテムだ」
「テ、テム!?」
「なんでそんなに驚く?一緒に夕食にまで同席したんだ、身内だとは思っていただろう?」
「・・・う、面目ない」
好々爺の村長だから、息子の友達の同席もありだったのかと。
だけど、言われてみれば、テムとトールはとても仲良しだったな。
ここでオレは、はっとした。
つまり、実体験に基づいた閨ごとの話が聞けるのだと。
「せ、先生・・・」
「うむ」
そして、トールから赤裸々に男同士の閨ごとの“いろは”を語られた。
「・・・・・」
オレは撃沈した。
「まぁ、何事も慣れだ。──というか、慣れてしまえばかなり気持ちいいぞ」
慣れ、の一言で片付けるか・・・。後半は小声過ぎて聞こえなかった。
「・・・先生、掘るのも掘られるのもどちらも出来そうにありません」
ちなみに、掘る掘らないの言い回しはトールから教わったのだ。オレにそんな知識はない。ドワーフは採掘好きだからそこから来てるのだろうか。
「ラブラドライトは掘られる方なんだから、そんなに心配しなくてもいいだろ。ギベオンに任せて寝転がってればそれでいいよ」
「だけど、オレのほうが年上だし、ギヴは嫁なんだから・・・」
「ギベオンが嫁なのか?」
「うん。うちに嫁いで来るんだ」
「ん~~、形式上はあまり関係ないと思うが。それに、嫁ぐというか、婿入りする感じなんじゃないか?」
「・・・・・」
「そんなに考え込むな。みんなやってることだ。
ただ、お前があまりにも無知そうなのが気になってな。心構えがあったほうがいいだろう?」
「・・・うん。色々教えてくれてありがとう、トール。──・・・全部冗談でしたー、とかある?」
ダメ元で聞いたら、トールは、ぷーーーっ、と盛大に吹き出した。その後は大爆笑がギヴたちが帰ってくるまで続いた。
「お、楽しそうだべ」
テムとギヴが露天風呂から帰ってきて、笑い転げるトールに声を掛けてきた。
テムはそのまま歩み寄ってくるとソファに座るトールの頭にキスを落とした。
「お待たせ。温まっておいで~」
うーむ、夫婦だと思えば夫婦に見えてくるなあ。
「ああ、テム。ラブラドライトに俺たちが人じゃないって話したよ。俺たちが結婚してることも」
「うん、ラブラドライトなら安心だ。ギベオンの奥方だし、その瞳を持つ者に悪い奴はいないべ。改めて、ドワーフの俺たちをよろしくな」
微笑むテムの瞳には親しいものに向ける好意があった。
「ありがとう、テム。オレは必ず秘密を守るよ」
まだ奥方ではないけどな。
ん?オレが奥方でいいのか?
ギヴは何も言わず微笑んでいた。
交代で山小屋のすぐ隣にある大きな岩で囲まれた露天風呂に入って。
「・・・星が、すごい!あ、月を発見」
登ってくる時は見つけられなかった月が、夜空の高い位置に登っていた。細い三日月だ。
「ふふ、さっきと同じこと言ってる」
「今日は動物は来ないのかな」
「あいつらは昼間に入りに来るのさ」
そうなのか。夜はちゃんと眠るのか。少し残念だ。
「・・・トール、その、テムとトールってどっちが、その、掘る側とか掘られる側とか決まっているの?」
「ああ、俺が下。掘られる方。夫婦によってはその都度上下が入れ替わるところもあるそうだけど。俺たちは固定だな。
俺が下だとわかっているからギベオンは俺とラブラドライトが一緒に風呂に入るのを許したのさ」
「そう、なのか・・・」
ということは、だ。ギヴの中で、オレが掘られる側だともう決まってる?
うーーむ。
嫌だ、という気持ちには不思議とならなかった。男同士で、というのには少し抵抗があるが。
・・・だって、まさかお尻の穴で繋がるとは思いもしなかったからさ。
「ラブラドライト、安心しろ!俺の自作のラブグッズを土産に大量に持たせてやるから」
考え込むオレにトールがとんでもないことを言い出した。
「人族は魔法が使えないからな~。準備が大変だろ?だから、そんな人族のために俺自らが実験台となり、試行錯誤の結果、浄化と潤滑、それにちょっぴり媚薬の効果をつけたモノを開発したんだ」
「・・・・・」
「な、大丈夫だからな」
──浄化と潤滑、ちょっぴり媚薬。
トールの言葉が頭の中をぐるぐる回るが、意味を理解するのが難しい。
トールがそんなオレに、大丈夫、大丈夫としきりに言うので、その度、何度も頷いた。
そしてしばらくして、なぜ浄化が必要なのか、なぜ潤滑が必要なのか、なぜちょっぴり媚薬が必要なのか、ようやく理解が追いついた。
「卜、トール、・・・ソレ、すご、いよ」
力が抜けて、隣りに座るトールの肩に頭突きした。
──湯当たりしていた。
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