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夕食後、何故か不機嫌なギヴを連れ、4人で露天風呂を目指し、放牧地の急な坂をてくてく行く。さすがに夜の寒さが王都とは違う。吐く息が白い。
「わ、──星が、すごい」
夜空一面にたくさんの星。手を伸ばせば掴み取れそうだ。
「ええ。私もここまで美しい星空は初めてです。ラド、足元も見ないと」
「ギベオンが来るのはいつも暖かい時期だからな~。本当は冬が一番綺麗なんだべ」
冬はそれだけ空気が澄んでいるということか。
テムがカンテラを持って、行く先を照らしてくれているが、それさえ必要ないほど星空は明るかった。
放牧地の中ほどに立つ、山小屋とは名ばかりのおしゃれなログハウスに着くと、トールがギヴとテムに先に風呂に入るように勧めた。
「俺とラブラドライトで藁のベッドを作っておくよ」
「え、4人で入らないの?」
「4人で入れなくもないけどなぁ・・」
テムが口を濁す。
そうか、そんなに広くはないのかも。ギヴも納得したようで、頷いていた。
「ラド、すいません。お先に失礼します」
「了解!いってらっしゃーい」
山小屋のドア(このドアにもすごい彫りが施されている。王都ならすごい値打ちものだと思う)付近で二人と別れ、トールと中に入った。
「先ずは灯りをつけて、暖炉に火を入れよう」
「うん」
火打ち石はどこだろう。
入口脇の棚に目星を付けたが、探す前に一気に部屋が明るくなった。暖炉にも火が入ってる。
──魔法だ。
はるか昔は人も魔法を当たり前のように使っていたという。
でも今は、おとぎ話の世界にしか魔法は存在しない。妖精やドラゴン、ドワーフ達の存在も。だが。
「・・・すごい。──いいの?」
魔法を見せるということは、自分が人ではない、と証明しているようなものだ。
「はは、いいのさ。っていうか、あんな登場の仕方で誤魔化そうとするほうが無理がある」
「・・・確かに」
体の半分、石の中だったもんね。
「でも、このことはギベオン以外には話さないでくれよ?」
「もちろんだよ!・・あの、オレを信じてくれてありがとう。信頼にかけて誰にも話さないと誓うよ」
「ありがとう。──俺も、信頼できる友であるラブラドライトの力になりたいと思っているんだ」
「──ん?ありがとう・・?」
どういう意味だろう・・・。
「ふふ、ラブラドライト、そんな暢気にしてると、初夜で泣くハメになるぞ」
「・・・え、初夜!」
壁や仕切りが何もない広い室内の、左手にあるキッチンに向かうトールを追いかけた。
「ト、トールは、・・あの、男同士の、その、ね、閨ごとを知ってるの?ど、どこまでするのか、とか」
「もちろん」
やかんを火にかけながらトールはあっさり応えた。
なんてことだ。帰ってからエンにこっそり聞こうと思っていたが、ここにいるではないか!先生が!
「トール様!どうかオレにご教授下さい!」
「はぁ、そんなことだろうと思った。その為にここに連れてきたし、ギベオンとラブラドライトを離したんだ。ギベオンはテムにラブラドライトの裸を見せたくないだろうからちょうど怪しまれずにすんだ」
「テム?そうなの?・・でも、オレに教えてくれようと計画してくれてたんだね、ありがとう」
「ほら、わかっていない。・・まぁ、仕方ないか、ラブラドライトは純粋無垢な宝石の精霊だからね、そして俺たちは宝石の下僕だから。
──ふふ、泊まりにしたのもラブラドライトの貞操を守るためだよ」
「──貞操・・?」
「さすがに俺たちのいるところでは手を出さないだろうと思ってな。ギベオンはもう我慢の限界みたいだぞ」
「えーと、オレは男だよ?」
貞操なんてないだろ、男に。
それともトールにはオレが本当に精霊に見えているのかな?・・・精霊にも貞操なんてなさそうだけど。
「あまり時間がないから手短に話すぞ」
「あ、ベッド作りは?」
「ああ、それは大丈夫。もう、作ってある。あれはお前たちを離すための、まあ、嘘も方便ってやつだ」
トールが指差す右奥には、白い布の掛かった、こんもりと盛り上がった一画がある。
「あれが・・・!」
一気にテンションが上がった。だって、めちゃくちゃ大きいんだ。大人が4人で寝てもまだ余りそうだ
「・・・アアッ!」
わくわくしていると、急にトールが体をくねくねし始めた。「可愛い。抱っこしたい。ぎゅうってしたい」そんな声が漏れてる。
「ど、どこ?可愛いのどこ?」
実はオレも可愛いのが大好きだ。犬も猫もどっちも好き派だ。うちの家計があんなじゃなければ二、三匹飼っていたと思う。
きょろきょろと探していると、トールは耐えきれないとばかりに床に崩れ落ちた。
「どこなんだよ、もうっ!──ねえ、もう、いなくなっちゃった?」
「・・・かはっ」
トールは初めて会った時から、どこか気取った感じで、いつも理性的で自分を見失わないタイプだと思ったけど、そうでもないらしい。
やかんのお湯が湧いたので、トールが準備してた紅茶を淹れる。
「・・・ああ、早くしないとギベオンが戻って来てしまうのに!俺まで惑わせるんじゃないよ!」
ようやく立ち上がったトールに怒られた。
「・・・・・」
オレって、なんで怒られたの???
「わ、──星が、すごい」
夜空一面にたくさんの星。手を伸ばせば掴み取れそうだ。
「ええ。私もここまで美しい星空は初めてです。ラド、足元も見ないと」
「ギベオンが来るのはいつも暖かい時期だからな~。本当は冬が一番綺麗なんだべ」
冬はそれだけ空気が澄んでいるということか。
テムがカンテラを持って、行く先を照らしてくれているが、それさえ必要ないほど星空は明るかった。
放牧地の中ほどに立つ、山小屋とは名ばかりのおしゃれなログハウスに着くと、トールがギヴとテムに先に風呂に入るように勧めた。
「俺とラブラドライトで藁のベッドを作っておくよ」
「え、4人で入らないの?」
「4人で入れなくもないけどなぁ・・」
テムが口を濁す。
そうか、そんなに広くはないのかも。ギヴも納得したようで、頷いていた。
「ラド、すいません。お先に失礼します」
「了解!いってらっしゃーい」
山小屋のドア(このドアにもすごい彫りが施されている。王都ならすごい値打ちものだと思う)付近で二人と別れ、トールと中に入った。
「先ずは灯りをつけて、暖炉に火を入れよう」
「うん」
火打ち石はどこだろう。
入口脇の棚に目星を付けたが、探す前に一気に部屋が明るくなった。暖炉にも火が入ってる。
──魔法だ。
はるか昔は人も魔法を当たり前のように使っていたという。
でも今は、おとぎ話の世界にしか魔法は存在しない。妖精やドラゴン、ドワーフ達の存在も。だが。
「・・・すごい。──いいの?」
魔法を見せるということは、自分が人ではない、と証明しているようなものだ。
「はは、いいのさ。っていうか、あんな登場の仕方で誤魔化そうとするほうが無理がある」
「・・・確かに」
体の半分、石の中だったもんね。
「でも、このことはギベオン以外には話さないでくれよ?」
「もちろんだよ!・・あの、オレを信じてくれてありがとう。信頼にかけて誰にも話さないと誓うよ」
「ありがとう。──俺も、信頼できる友であるラブラドライトの力になりたいと思っているんだ」
「──ん?ありがとう・・?」
どういう意味だろう・・・。
「ふふ、ラブラドライト、そんな暢気にしてると、初夜で泣くハメになるぞ」
「・・・え、初夜!」
壁や仕切りが何もない広い室内の、左手にあるキッチンに向かうトールを追いかけた。
「ト、トールは、・・あの、男同士の、その、ね、閨ごとを知ってるの?ど、どこまでするのか、とか」
「もちろん」
やかんを火にかけながらトールはあっさり応えた。
なんてことだ。帰ってからエンにこっそり聞こうと思っていたが、ここにいるではないか!先生が!
「トール様!どうかオレにご教授下さい!」
「はぁ、そんなことだろうと思った。その為にここに連れてきたし、ギベオンとラブラドライトを離したんだ。ギベオンはテムにラブラドライトの裸を見せたくないだろうからちょうど怪しまれずにすんだ」
「テム?そうなの?・・でも、オレに教えてくれようと計画してくれてたんだね、ありがとう」
「ほら、わかっていない。・・まぁ、仕方ないか、ラブラドライトは純粋無垢な宝石の精霊だからね、そして俺たちは宝石の下僕だから。
──ふふ、泊まりにしたのもラブラドライトの貞操を守るためだよ」
「──貞操・・?」
「さすがに俺たちのいるところでは手を出さないだろうと思ってな。ギベオンはもう我慢の限界みたいだぞ」
「えーと、オレは男だよ?」
貞操なんてないだろ、男に。
それともトールにはオレが本当に精霊に見えているのかな?・・・精霊にも貞操なんてなさそうだけど。
「あまり時間がないから手短に話すぞ」
「あ、ベッド作りは?」
「ああ、それは大丈夫。もう、作ってある。あれはお前たちを離すための、まあ、嘘も方便ってやつだ」
トールが指差す右奥には、白い布の掛かった、こんもりと盛り上がった一画がある。
「あれが・・・!」
一気にテンションが上がった。だって、めちゃくちゃ大きいんだ。大人が4人で寝てもまだ余りそうだ
「・・・アアッ!」
わくわくしていると、急にトールが体をくねくねし始めた。「可愛い。抱っこしたい。ぎゅうってしたい」そんな声が漏れてる。
「ど、どこ?可愛いのどこ?」
実はオレも可愛いのが大好きだ。犬も猫もどっちも好き派だ。うちの家計があんなじゃなければ二、三匹飼っていたと思う。
きょろきょろと探していると、トールは耐えきれないとばかりに床に崩れ落ちた。
「どこなんだよ、もうっ!──ねえ、もう、いなくなっちゃった?」
「・・・かはっ」
トールは初めて会った時から、どこか気取った感じで、いつも理性的で自分を見失わないタイプだと思ったけど、そうでもないらしい。
やかんのお湯が湧いたので、トールが準備してた紅茶を淹れる。
「・・・ああ、早くしないとギベオンが戻って来てしまうのに!俺まで惑わせるんじゃないよ!」
ようやく立ち上がったトールに怒られた。
「・・・・・」
オレって、なんで怒られたの???
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