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「あ~、ラド、彼は私の友人であり仕事仲間でもある、テムだ。村長の息子でもある。──あ~、テム、こちらはラブラドライト=ポーラ、私の婚約者だよ」
「え?友人?」
「テ、テムです。はンじめまして」
「──今、この石から出てきましたよね?」
「そ、それはっ」
「・・・ラド、そんなことあるわけないだろう?何かの見間違いじゃないのかな。私には石の後ろからテムが出てきたように見えたよ」
「んだ、んだ。向こうから来たんだ、俺」
見間違い?うーん、石の後ろから出てきて、石を調べていたオレにぶつかったってこと?
「そう、でしたか・・?」
そんな訳はない、とは思うが、ここは引くべきだと判断した。友人だとギヴが言うのだ。失礼な真似はできない。
「失礼しました。ラブラドライトと申します。この度はお世話になります」
軽く胸に手を当て挨拶をした。
「いや~、よろしくな。ギヴの奥方になる方なら大歓迎だ。いっくらでも滞在していってくれな。親父が会いたがっているから早速行こう」
「ありがとうございます」
とは言ったが、奥方?便宜上そう言ったんだろうけど、どちらかというとギヴが奥方なのではないだろうか。うちに嫁いでくるわけだし。同性婚は色々難しいな。
そんなことを考えつつ、テムとギヴの後に続こうとしたら。
ガツン!
背中に衝撃が走った。
「おわっ!」
驚いて振り向けば、──・・人が石から上半身を出していた。
オレの背中にぶつかったのは頭か?オレを含め、固まる四人。・・・やっぱり、見間違いじゃなかったんだ。
「ラド、これは・・・」
この石は、つまり門のような役割をしているということだと思う。でも、オレにはただの石だ。──ということは、人ではない者達の門ということになる。
やっぱり、ドワーフ・・・。
しかし、この状況をどうしたらいいのか。
狼狽えるこの村の二人と同じ位挙動不審なギヴを見て、ギヴは二人の正体を知っているのだ、と察した。三人の秘密の為にも気付かなかった振りをしたいのだけど。
「・・・え、と。──ギヴ、オレ実は目がすごく悪くて、ギヴの顔もすごく近づかないと見えなかったりするんだ」
ゆっくりギヴに近付く。わざとらしいけど、仕方がない。
「──ああ、このくらいでようやくはっきり見えるよ」
オレが石から離れた隙に抜け出てくれてるといいけど。
近くでギヴを見上げると、ギヴが理解したよ、と優しい顔で見下ろしてくれた。ついでに背中に腕を回され、軽くハグされる。嬉しいけど、身長差が悲しすぎる。
「・・や、やあ」
少しして、後ろから声を掛けられた。
「──俺は、トール。君がギベオンの奥方だね?」
「奥方、ではないですけども、婚約者です。はじめまして、ラブラドライト=ポーラです。急な訪問ですいません。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼むよ。ギベオンにするように、楽に話して欲しい」
「ありがとうございます」
今、石から抜け出てきたトールは、テムに比べるとちょっと気取った印象だ。冷や汗をかきながらも余裕の笑顔を見せてくる。
「俺たち、ギベオンとは近くの町に行商に出た時に出会ったんだよ」
ホッとした表情のテムが、三人の出会いを話し始めた。
まだ子供のギヴに全ての商品を買い取る、と言われたのだそうな。
「ギベオンはまだ小さくて可愛かったが、生意気なガキだったな。──まあ、子供ながらになかなかの目利きだと、俺たちの間では評判になったが」
トールも愉快そうに話す。
その頃からだとすると、ギヴは自分で店を構える前からの付き合いだということになるな。
貴族は貴族同士で固まってしまう傾向があるけど、ギヴみたいに身分抜きで、さらに歳上の(さらに、この場合、種族も超えて)、でも、お互い対等な仲間を持っているというのは、とても貴重だと思う。
どうしよう、旅に出てからのギヴへの好感度が爆上がりなのだが。うう、照れる。
「ラド、そんなに緊張しなくても大丈夫。村長は大らかな人だよ」
歩きながら一人照れてるオレを、人見知りが発動しているのか、と気遣ってくれるギヴが尊い。
「親父はちょっと怖いところもあるけど、ラブラドライトのことは気に入ると思うべ。いいヤツだからな」
「かなり気難しくて恐ろしい方だが、その瞳があれば大丈夫だろう。俺たちは宝石に目がないからな」
童話の中でだが、ドワーフが宝石好きだというのは有名な話だ。そんなふうに不用意にオレに話してしまっていいのかな。
──でも、確かなのは、
村長はかなり怖い、要注意人物だということだな。
そんなふうに聞くと、逆に緊張してしまうではないか。
そう思い、硬くなりながらも村長に挨拶をしたら、めちゃくちゃ好々爺でしかも大歓迎された。テムとトールが側で笑いを抑えられず吹き出している。ギヴは困ったような苦笑いだ。
──やられた。
その場で文句を言う事もできず、微笑みを貼り付けていたオレだった。
こんなふうに、テムとトールという友人ができた。
「え?友人?」
「テ、テムです。はンじめまして」
「──今、この石から出てきましたよね?」
「そ、それはっ」
「・・・ラド、そんなことあるわけないだろう?何かの見間違いじゃないのかな。私には石の後ろからテムが出てきたように見えたよ」
「んだ、んだ。向こうから来たんだ、俺」
見間違い?うーん、石の後ろから出てきて、石を調べていたオレにぶつかったってこと?
「そう、でしたか・・?」
そんな訳はない、とは思うが、ここは引くべきだと判断した。友人だとギヴが言うのだ。失礼な真似はできない。
「失礼しました。ラブラドライトと申します。この度はお世話になります」
軽く胸に手を当て挨拶をした。
「いや~、よろしくな。ギヴの奥方になる方なら大歓迎だ。いっくらでも滞在していってくれな。親父が会いたがっているから早速行こう」
「ありがとうございます」
とは言ったが、奥方?便宜上そう言ったんだろうけど、どちらかというとギヴが奥方なのではないだろうか。うちに嫁いでくるわけだし。同性婚は色々難しいな。
そんなことを考えつつ、テムとギヴの後に続こうとしたら。
ガツン!
背中に衝撃が走った。
「おわっ!」
驚いて振り向けば、──・・人が石から上半身を出していた。
オレの背中にぶつかったのは頭か?オレを含め、固まる四人。・・・やっぱり、見間違いじゃなかったんだ。
「ラド、これは・・・」
この石は、つまり門のような役割をしているということだと思う。でも、オレにはただの石だ。──ということは、人ではない者達の門ということになる。
やっぱり、ドワーフ・・・。
しかし、この状況をどうしたらいいのか。
狼狽えるこの村の二人と同じ位挙動不審なギヴを見て、ギヴは二人の正体を知っているのだ、と察した。三人の秘密の為にも気付かなかった振りをしたいのだけど。
「・・・え、と。──ギヴ、オレ実は目がすごく悪くて、ギヴの顔もすごく近づかないと見えなかったりするんだ」
ゆっくりギヴに近付く。わざとらしいけど、仕方がない。
「──ああ、このくらいでようやくはっきり見えるよ」
オレが石から離れた隙に抜け出てくれてるといいけど。
近くでギヴを見上げると、ギヴが理解したよ、と優しい顔で見下ろしてくれた。ついでに背中に腕を回され、軽くハグされる。嬉しいけど、身長差が悲しすぎる。
「・・や、やあ」
少しして、後ろから声を掛けられた。
「──俺は、トール。君がギベオンの奥方だね?」
「奥方、ではないですけども、婚約者です。はじめまして、ラブラドライト=ポーラです。急な訪問ですいません。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼むよ。ギベオンにするように、楽に話して欲しい」
「ありがとうございます」
今、石から抜け出てきたトールは、テムに比べるとちょっと気取った印象だ。冷や汗をかきながらも余裕の笑顔を見せてくる。
「俺たち、ギベオンとは近くの町に行商に出た時に出会ったんだよ」
ホッとした表情のテムが、三人の出会いを話し始めた。
まだ子供のギヴに全ての商品を買い取る、と言われたのだそうな。
「ギベオンはまだ小さくて可愛かったが、生意気なガキだったな。──まあ、子供ながらになかなかの目利きだと、俺たちの間では評判になったが」
トールも愉快そうに話す。
その頃からだとすると、ギヴは自分で店を構える前からの付き合いだということになるな。
貴族は貴族同士で固まってしまう傾向があるけど、ギヴみたいに身分抜きで、さらに歳上の(さらに、この場合、種族も超えて)、でも、お互い対等な仲間を持っているというのは、とても貴重だと思う。
どうしよう、旅に出てからのギヴへの好感度が爆上がりなのだが。うう、照れる。
「ラド、そんなに緊張しなくても大丈夫。村長は大らかな人だよ」
歩きながら一人照れてるオレを、人見知りが発動しているのか、と気遣ってくれるギヴが尊い。
「親父はちょっと怖いところもあるけど、ラブラドライトのことは気に入ると思うべ。いいヤツだからな」
「かなり気難しくて恐ろしい方だが、その瞳があれば大丈夫だろう。俺たちは宝石に目がないからな」
童話の中でだが、ドワーフが宝石好きだというのは有名な話だ。そんなふうに不用意にオレに話してしまっていいのかな。
──でも、確かなのは、
村長はかなり怖い、要注意人物だということだな。
そんなふうに聞くと、逆に緊張してしまうではないか。
そう思い、硬くなりながらも村長に挨拶をしたら、めちゃくちゃ好々爺でしかも大歓迎された。テムとトールが側で笑いを抑えられず吹き出している。ギヴは困ったような苦笑いだ。
──やられた。
その場で文句を言う事もできず、微笑みを貼り付けていたオレだった。
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