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センス良く、ものがあるべき場所に収まっている、居心地の良さそうなギヴの部屋に入ると、ティーテーブルに所狭しと軽食が並べられていた。
「もう遅いので簡単なものを用意させました」
「ありがとう。美味しそうだね」
サンドイッチやスープ、手でつまめる、小さくて綺麗なオードブル的なものが多い。
夜着で食べるなんて、なんだか楽しい。
ギヴの部屋にはそんな喧騒は届いてこないけれど、1階では、夜も更けた今も多くの人たちが思い思いにカードやダンスを楽しんでいる、というのも楽しさに拍車をかける。
向かいには穏やかな表情のギヴがいて、暖かな部屋、綺麗で美味しそうな料理。
神に祈りを捧げたいほど満ち足りていて幸せだった。
「ありがとう、ギヴ」
また言ってしまった。
それを受けて、何度も聞きましたよ、という風にギヴが微笑う。
「──オレを幸せにしてくれて」
ギヴと出会ってから少しずつ何かが変わっていった。もちろん、それはギヴの資金援助という形での色々な恩恵がもたらしてくれたものも多いけど、それよりもガチガチに固くなっていた心をギヴがほぐしてくれたな、と思う。少し前までのオレは、綺麗なものとか暖かいものとか、きちんと感じられていなかったんじゃないかな。
なかなか口に出して説明するのは難しいんだけど。
「好き・・・」
「え?」
「あ・・・ギ、ギヴは鴨肉って好き?大丈夫?」
何を口走っているのだオレは!
「ええ、大丈夫ですが。ラドは?苦手でしたか?」
大皿に、ローストされ、薄くスライスされた鴨肉が他の料理とともに何枚かのっていた。
「いや、オレも大丈夫」
「そうですか。──はい」
フォークに刺さった鴨肉を目の前に出された。
食べろと?オレにあーんして食べろと?
オレは、──あーん、した。
「美味しいですか?」
咀嚼しながら、こくんと頷く。
「好きですか?」
・・・こくん。
「大好きですか?」
「・・・・・」
いや、こればれてるよな?鴨肉の話じゃないって。
顔に血が上る。耳が熱い。
こくん、ともう一度、頷いた。
「私も大好きです」
「!!」
こ、この男を黙らせねば恥ずか死ぬ!
「──はいっ、あーん」
オレも鴨肉をフォークで刺して、ギヴの顔の前に差し出した。
「──いただきます」
行儀良く口に入れたが、一瞬、びっくりして目を丸くしたのを見逃さなかったぞ、オレは。
「ぷっ、」
楽しくなって吹き出してしまう。ギヴも一緒になって笑った。
「うー、眠い・・・」
食べ終えて、歯磨きをする頃には、オレはもうかなりふらふらで、ギヴにエスコートされるままベッドに寝転がった。
「あ、ギヴの匂い・・・好き」
正しくは、ギヴの服を洗う洗濯石鹸の匂いなんだろうけど。言い足す間もなく、ストンと眠りに落ちた。
ギヴのベッドは、良い匂いと相まって、とても安心できて、気持ちが良かった。
快眠できたオレは、朝、スッキリと目覚めたのだった。
もともとバイトで早起きは鍛えられている、ということもある。
ギヴのベッドは大きくて、二人で寝ても余るぐらいだ。
それなのに、ぴったりオレに身を寄せて眠るギヴが可愛かった。
まだ成人したばかりなのに、オレを助けて、堂々とあのクセのある三じじに渡り合っていたな。
「カッコいいぞ」
そっとギヴの頬にかかる髪を払い、キスを贈った。
今日からは本格的に“ドワーフの村”へ向かうため、早朝に出発だ。昨日の様子ではリゲル家の朝は遅いだろうと思っていたが、ギヴのご両親が見送りに出てきてくれた。
「ラブラドライト、結婚式でまた会おう」
「式の前に会えて嬉しかったわ」
そんな言葉に送られて、オレ達は出発した。
ここから2日、道の状態では3日かけて村へ向かうという。村での滞在を延ばしたいからホテルには泊まらず馬車泊でも良いかと問われ、オレは大きく頷いた。だって、ホテルに泊まるのも楽しいだろうが、ワイルドなこともやってみたい年頃なのだ。町を抜けた道の所々に専用のエリアがあり、そこでテントを張って泊まるらしい。焚き火を囲み、自分達で煮炊きをしたりするのだという。
「わくわく」
今から楽しみ過ぎる。
馬車は順調に王都の門を抜け、石畳の道をひた走る。ちなみに2頭立ての馬車を難なく操るのはベテランの御者、ルーさん。控えの御者はいないので、旅の安全はひとえにルーさんの手捌きにかかっている。
窓からの風景がレンガ造りの建物から木造の建物が多く見られるようになってきて、その分、緑も多くなってきた。
物珍しさも手伝ってオレは窓から見える景色に夢中だが、ギヴはさっきから欠伸をかいて眠そうにしてる。
「昨夜、よく眠れなかった?もしかして、オレ、寝相悪かったかな?」
「いえ、そんなことは。ただ、思ったより貴方が早く寝付いてしまったので、残念だっただけです」
「?」
よくわからない。オレが寝ないから付き合わされて寝不足、ならわかるのだが。
「えーと、寝る?」
今はお互いに進行方向に向かうソファに腰掛けているが、ギヴが横になるならオレは向かいの席に移動しようと思った。
「ありがとうございます。では、遠慮なく」
ギヴがオレの膝に倒れ込んできた。──こ、これは、膝枕というやつでは?
「ああ、気持ちいい」
そんな言葉を漏らし、固まるオレの腹に顔を埋め、あっという間にギヴは眠ってしまったようだった。
「もう遅いので簡単なものを用意させました」
「ありがとう。美味しそうだね」
サンドイッチやスープ、手でつまめる、小さくて綺麗なオードブル的なものが多い。
夜着で食べるなんて、なんだか楽しい。
ギヴの部屋にはそんな喧騒は届いてこないけれど、1階では、夜も更けた今も多くの人たちが思い思いにカードやダンスを楽しんでいる、というのも楽しさに拍車をかける。
向かいには穏やかな表情のギヴがいて、暖かな部屋、綺麗で美味しそうな料理。
神に祈りを捧げたいほど満ち足りていて幸せだった。
「ありがとう、ギヴ」
また言ってしまった。
それを受けて、何度も聞きましたよ、という風にギヴが微笑う。
「──オレを幸せにしてくれて」
ギヴと出会ってから少しずつ何かが変わっていった。もちろん、それはギヴの資金援助という形での色々な恩恵がもたらしてくれたものも多いけど、それよりもガチガチに固くなっていた心をギヴがほぐしてくれたな、と思う。少し前までのオレは、綺麗なものとか暖かいものとか、きちんと感じられていなかったんじゃないかな。
なかなか口に出して説明するのは難しいんだけど。
「好き・・・」
「え?」
「あ・・・ギ、ギヴは鴨肉って好き?大丈夫?」
何を口走っているのだオレは!
「ええ、大丈夫ですが。ラドは?苦手でしたか?」
大皿に、ローストされ、薄くスライスされた鴨肉が他の料理とともに何枚かのっていた。
「いや、オレも大丈夫」
「そうですか。──はい」
フォークに刺さった鴨肉を目の前に出された。
食べろと?オレにあーんして食べろと?
オレは、──あーん、した。
「美味しいですか?」
咀嚼しながら、こくんと頷く。
「好きですか?」
・・・こくん。
「大好きですか?」
「・・・・・」
いや、こればれてるよな?鴨肉の話じゃないって。
顔に血が上る。耳が熱い。
こくん、ともう一度、頷いた。
「私も大好きです」
「!!」
こ、この男を黙らせねば恥ずか死ぬ!
「──はいっ、あーん」
オレも鴨肉をフォークで刺して、ギヴの顔の前に差し出した。
「──いただきます」
行儀良く口に入れたが、一瞬、びっくりして目を丸くしたのを見逃さなかったぞ、オレは。
「ぷっ、」
楽しくなって吹き出してしまう。ギヴも一緒になって笑った。
「うー、眠い・・・」
食べ終えて、歯磨きをする頃には、オレはもうかなりふらふらで、ギヴにエスコートされるままベッドに寝転がった。
「あ、ギヴの匂い・・・好き」
正しくは、ギヴの服を洗う洗濯石鹸の匂いなんだろうけど。言い足す間もなく、ストンと眠りに落ちた。
ギヴのベッドは、良い匂いと相まって、とても安心できて、気持ちが良かった。
快眠できたオレは、朝、スッキリと目覚めたのだった。
もともとバイトで早起きは鍛えられている、ということもある。
ギヴのベッドは大きくて、二人で寝ても余るぐらいだ。
それなのに、ぴったりオレに身を寄せて眠るギヴが可愛かった。
まだ成人したばかりなのに、オレを助けて、堂々とあのクセのある三じじに渡り合っていたな。
「カッコいいぞ」
そっとギヴの頬にかかる髪を払い、キスを贈った。
今日からは本格的に“ドワーフの村”へ向かうため、早朝に出発だ。昨日の様子ではリゲル家の朝は遅いだろうと思っていたが、ギヴのご両親が見送りに出てきてくれた。
「ラブラドライト、結婚式でまた会おう」
「式の前に会えて嬉しかったわ」
そんな言葉に送られて、オレ達は出発した。
ここから2日、道の状態では3日かけて村へ向かうという。村での滞在を延ばしたいからホテルには泊まらず馬車泊でも良いかと問われ、オレは大きく頷いた。だって、ホテルに泊まるのも楽しいだろうが、ワイルドなこともやってみたい年頃なのだ。町を抜けた道の所々に専用のエリアがあり、そこでテントを張って泊まるらしい。焚き火を囲み、自分達で煮炊きをしたりするのだという。
「わくわく」
今から楽しみ過ぎる。
馬車は順調に王都の門を抜け、石畳の道をひた走る。ちなみに2頭立ての馬車を難なく操るのはベテランの御者、ルーさん。控えの御者はいないので、旅の安全はひとえにルーさんの手捌きにかかっている。
窓からの風景がレンガ造りの建物から木造の建物が多く見られるようになってきて、その分、緑も多くなってきた。
物珍しさも手伝ってオレは窓から見える景色に夢中だが、ギヴはさっきから欠伸をかいて眠そうにしてる。
「昨夜、よく眠れなかった?もしかして、オレ、寝相悪かったかな?」
「いえ、そんなことは。ただ、思ったより貴方が早く寝付いてしまったので、残念だっただけです」
「?」
よくわからない。オレが寝ないから付き合わされて寝不足、ならわかるのだが。
「えーと、寝る?」
今はお互いに進行方向に向かうソファに腰掛けているが、ギヴが横になるならオレは向かいの席に移動しようと思った。
「ありがとうございます。では、遠慮なく」
ギヴがオレの膝に倒れ込んできた。──こ、これは、膝枕というやつでは?
「ああ、気持ちいい」
そんな言葉を漏らし、固まるオレの腹に顔を埋め、あっという間にギヴは眠ってしまったようだった。
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