【完結】オネエ騎士の執着溺愛

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 それからの毎日は、自室でスキップをするほど楽しい毎日だった。いやほら、この体格だからな、自室じゃないと何かと不気味だろうと。
 なんといっても、ココの笑顔が毎日見れるのだ。

 引きこもりのココは、どうも自分の美しさに気付いていないらしかった。そしてそれを鼻に掛けることもなく使用人にも礼儀正しく接し、助言を受ければ素直に聞き入れる、思慮深い、小さな淑女に育っていた。あの将軍と血がつながっているとは思えない。髪と瞳の色以外、似ていなくて本当に良かった。

 ココが女学園に入るまで、ココとコレットと俺の三人は毎日のように外出した。
 朝の散歩と鍛錬は日課だったし、午後からはココの勉強の合間を縫って、町に出たり、森に行ったり、今までココが行けなくて、行きたかったところ全てに連れて行った。
 当たり前のようにココを狙ってくる輩が多くいたが、そもそも、将軍を蹴落とそうと娘を狙ってくるような肝の小さい奴らは俺の敵ではない。
 物理だけではなく、用心深さにおいてもだ。ココの為に、そして俺のような若造を隊長に抜擢した将軍の顔を潰さない為に、戦略、戦術の知識も深め、外出時の俺たちにはさらに隠れたところで第6部隊の数人を護衛に付けた。
 その蜘蛛の巣のような護衛の網に引っ掛かる不審な奴らはどんどんひっ捕まえた。
 ただココに想いを寄せるヤローも、例外なくだ。
 
 そしていよいよ女学園入学にあたり、連れていける従者は1名だと告げられた。
 で、もちろんコレットが選ばれた。そりゃ、そうだろう。女の園に俺が行ってはダメだろう。俺は納得していたが、ココは申しわけなさそうにしていた。
 オネエ言葉を使う俺が、心までオネエだと信じ、気遣ってくれたのだ。そんな優しいココに俺の心はさらに大きく傾いたもんだ。
 ──さっきもそうだったな。
 自分の、素晴らしく魅惑的な体を謝っていた。
 ああ、一刻も早く俺はオネエではないと身を以て証明したい。

 そもそも、ココが申しわけなさそうにする必要は、本当は全くなかったんだ。なぜって、密かに俺も付いて行っていたからだ。護衛として。学園内には潜り込まなかったが(敵も潜り込まないだろうと思ったし、生徒間のいざこざであれば頼もしいコレットがココに付いていた)、寮内の天井裏や敷地内の藪の中にはよく潜んでいた。
 そうそう、学園在学中にココに“北の薔薇”とかいう陳腐な二つ名がついた。ココの美しさと赤い髪と瞳が薔薇を連想させたのだろう。ココは学園であっという間に人気者になった。
 それがどういうことになるのか俺もコレットもピンと来ず、なんならうちのお嬢様は美しかろう、とちょっと鼻高々になっていたら、休日や長い休みにご学友の女生徒たちから家へのお茶会の招待状が山のように届くようになった。
 何も考えず(主従共に)出掛けていき、実家の兄や弟を紹介される、といったことが何度か繰り返され、さらに王宮で開かれるお茶会への招待状が届き、ココは寝込んでしまった。
 遅まきながら、結婚を意識するような、そういうお年頃なのだと気付き、俺は大慌てで第6部隊は動かした。
 ココには悪いが、“北の薔薇”とは全くのデマだ、という噂を各地で流布させたのだ。
 ──第6部隊は隠密活動のスキルが上がった。



 ──静かだ。
 日の出にはまだ少し早い、闇が一番深い時間。
 ベッド脇の小さなランプが、ココの健やかな美しい寝顔を優しく照らしている。
 眠るココを見守る俺に、眠気はない。
 逆にビリビリと毛が逆立つのを感じていた。
 俺が敵ならそろそろだ。
 もう襲ってこないだろうと護衛が気を抜く時間帯。そこを狙う。
 二人一組で屋敷の外と内を見回らせている。そのうえで一階と二階の階段付近に一人ずつ配置。三階は俺だけ。夜通しというわけにもいかないから、交代制にして第6部隊の常時7人が護衛に付いている。

 この時間、俺の元に来る奴がいたら、誰であろうとそいつは敵だ。
 ココを起こすことなく終わればいいが。
 
 しかし、こうしてココの寝顔を見ていると、どうしても先程の戯れが思い起こされてしまうな。ココに請われても灯りを消さなかったので脳裏に鮮明にココのしなやかな肢体が蘇る。

 「・・・けしからん!」

 ココの、細いのに豊かに育った胸と尻。反して、きゅっとくびれた腰に文句が出た。いや、けしからんのはお前だ、って話だ。


 
 階段を早足で登って来る複数の足音を耳が捉えた。

 ──来た。

 コ、コ、コン。

 「隊長!こちらですか?」

 「ヨルか?」

 「はい!厨房から火が出ました!」

 ドアを開け、ヨルが入って来た、瞬間。ドアの近くまで来ていた俺は、ヨルを拘束し利き腕の関節を肩から外した。
 
 「──ッ、隊長!」
 
 そのままヨルを転がし、次に入って来た男の首元に手刀を入れ、態勢を崩した男の腕を取り、逆向きにひねり上げ折った。

 「なぜだ・・っ」

 「あー、煩い」

 二人の首根っこを掴みポイッ、と廊下に放る。
 ヨルは“なぜ俺が敵だと気付いたんだ、いつ知ったんだ”、と煩いし、腕を折った奴は痛みで呻いていて煩い。
 ココが起きてしまったらどうしてくれるんだ。

 「隊長、ご無事でしたか!」

 副隊長を任せているナインが階段を駆け上がってきた。転がってる二人にギョッとした後、厨房から火が、一階、二階に配置した隊員は気絶させられていたと報告してくれた。
 
 

 

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