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解くべしって、なに?
ガウンの紐を解かれたら、すっけすっけのほぼ局部しか隠していない夜着が見られてしまうじゃないの!
「そんな、・・・どういうこと?」
「それはこっちの台詞よ、お嬢様。でも私はそんなことしたくない。──さぁ、真実を話してちょうだい」
「・・・し、真実・・・」
と言われても。
ガレスとの間に緊張感が走る。
「──お嬢様、私を信頼して話してくれたなら、できる限りの協力をすると誓うわ。・・・でも、もし、相手の男がとんでもないクズヤローだったら、私は、私はっ・・・!」
「え、ガレス、それって・・」
握りしめた拳をぶるぶると震わせながら仁王立ちするガレスに、とんでもない勘違いをされていると気付き愕然とした。
「ガ、ガレスは私が男の人の元へ忍んで行こうとしていたと・・・?」
・・・あら、よくよく考えれば間違っていないわね。さすがガレス。素晴らしい推理だわ。ただ一つ、相手が自分だとまでは思いつかなかったようだけど。
「・・・違うと?」
「あ、いえ・・・」
「──やはり」
あまりにもガレスが悲壮な顔をしているので驚く。
ガレスは本来、明るい笑顔で周りを暖かくする、太陽のような人なのに。私の浅はかな行動が彼にこんな顔をさせてしまっている。
ガレスの元へ行こうとしていたと話せば、ガレスはどうするかしら。
夜這いをするようなはしたない女だと失望するかしら。
でも、話さなければ大事に守ってきたお嬢様が自分に内緒で不貞を働こうとした、と苦しむだろう。
──ちょっと待って。どちらにしても、私は“はしたない女”ということになるわね。
私は立ち上がり、ガウンの紐に手をかけた。
「お嬢様・・?」
ガレスには悲しい顔をしてほしくない。
私はこの計画を立てた時、貞淑なんて観念は捨てたはずだったのに、自分可愛さでいつまでもぐずぐずとしていたわ。
欲しいものをきちんと欲しいと言おう、と決めたはずだったのに。
私は大丈夫。ガレスにどんな言葉を言われたって、傷ついたって、──そう、修道院に入るという選択肢があるのだし。──神よ。
紐はあっけなく簡単に解けた。震える手で深緑色のガウンを左右に開きそのまま肩から落とした。
「なっっ!!」
その瞬間、ぎゅ、と目をつぶったからガレスの表情は見えないが、驚いているだろうことは叫び声でわかった。だが、その声に嫌悪感が含まれているかまではわからない。
長い沈黙が降りる。
金色に輝く、オーガンジーという透ける素材で仕立てられた、腰骨のあたりまでしか丈のないAラインのワンピース。いえ、胸元の同じ素材のリボンで結んであるだけだからワンピースとは言えないのかもしれない。動くたびにチラチラとおへそが見えてしまうもの。下は同じ素材で出来たパンティ。金糸の鳥と蔦の刺繍が、上手に胸の頂きや股間を小さく隠している。肩紐は細いフリルで、心もとないことに、その下に、コルセットは着けていない。
もう、ほぼ裸だ。
せめて透けて見える乳房を手のひらで隠したくなったが我慢した。
「わ、・・私っ、今夜、ガレスの元へ行こうとしていたの」
声が震える。ゆっくりと目を開けガレスを見た。
ガレスは両手で目元を覆っていた。そんなガレスが本当に愛おしくてさらに言い募る。
「ガレス、私、はしたなくて、ごめんなさい。でも、たった一度でいいから、好きな人にだ、抱かれたくて・・っ」
じわ、と目が勝手に潤んでくる。プライドにかけて泣き落としはしたくはないわ。
そっとガレスに近寄る。
緊張で強張る手を、ガレスの目を塞いでいる手に重ね、そっと外した。
「お嬢様、本気ですか?」
思っていたより強く見据えられどきん、と心臓が高鳴った。コクリとうなずく。
「もう、後戻りはさせませんよ?」
いつもとは違う低い声で言われ、あごを掴まれた。もう一方の手は後頭部に回される。
近づいてくる顔に、自然と瞼が閉じた。
啄むように下唇を何度もガレスの唇に挟まれ、少しずつ開いていった唇に、ガレスの舌が歯を割って入って来た。
「・・・ッ!」
舌に舌で触れられて、背筋を電流のようなものが、走った。足から力が抜ける私の腰をたくましい腕が支える。
さっきよりも密着した体に、心臓が痛いくらいドキドキして、しかも舌で口の中のあらゆるところを舐め回され、息が整わない。
こんなこと、夢みたい。ガレスと口付けをしている。気が遠くなりそう。──あら、現実的に、私ってば酸欠なのでは?
くたっ、と体を預けた私を、ガレスは軽々と抱き上げた。
「私の為にこんな装いを?」
私をそっとベッドに寝かせ、上にのしかかりながら聞いてくる。こんな装い、──そう言われ、ぼんやりしていた頭の中が、がつんと殴られたようにはっきりした。
「あ、これは、・・・変、だよね・・・?」
体がかあっ、と熱くなった。
「いいえ。とても似合っています。女神のように美しい。」
「ガレス・・・」
そういうガレスは神話に出てくる男神のように雄雄しく美しい。さっきからオネエ言葉があまり出てこないせいかしら。
胸がキュンキュンして、胸の頂きがツンと固くなった。
逞しく美しいガレスという男性に抱かれ、一つになりたいと強く思った。
ガウンの紐を解かれたら、すっけすっけのほぼ局部しか隠していない夜着が見られてしまうじゃないの!
「そんな、・・・どういうこと?」
「それはこっちの台詞よ、お嬢様。でも私はそんなことしたくない。──さぁ、真実を話してちょうだい」
「・・・し、真実・・・」
と言われても。
ガレスとの間に緊張感が走る。
「──お嬢様、私を信頼して話してくれたなら、できる限りの協力をすると誓うわ。・・・でも、もし、相手の男がとんでもないクズヤローだったら、私は、私はっ・・・!」
「え、ガレス、それって・・」
握りしめた拳をぶるぶると震わせながら仁王立ちするガレスに、とんでもない勘違いをされていると気付き愕然とした。
「ガ、ガレスは私が男の人の元へ忍んで行こうとしていたと・・・?」
・・・あら、よくよく考えれば間違っていないわね。さすがガレス。素晴らしい推理だわ。ただ一つ、相手が自分だとまでは思いつかなかったようだけど。
「・・・違うと?」
「あ、いえ・・・」
「──やはり」
あまりにもガレスが悲壮な顔をしているので驚く。
ガレスは本来、明るい笑顔で周りを暖かくする、太陽のような人なのに。私の浅はかな行動が彼にこんな顔をさせてしまっている。
ガレスの元へ行こうとしていたと話せば、ガレスはどうするかしら。
夜這いをするようなはしたない女だと失望するかしら。
でも、話さなければ大事に守ってきたお嬢様が自分に内緒で不貞を働こうとした、と苦しむだろう。
──ちょっと待って。どちらにしても、私は“はしたない女”ということになるわね。
私は立ち上がり、ガウンの紐に手をかけた。
「お嬢様・・?」
ガレスには悲しい顔をしてほしくない。
私はこの計画を立てた時、貞淑なんて観念は捨てたはずだったのに、自分可愛さでいつまでもぐずぐずとしていたわ。
欲しいものをきちんと欲しいと言おう、と決めたはずだったのに。
私は大丈夫。ガレスにどんな言葉を言われたって、傷ついたって、──そう、修道院に入るという選択肢があるのだし。──神よ。
紐はあっけなく簡単に解けた。震える手で深緑色のガウンを左右に開きそのまま肩から落とした。
「なっっ!!」
その瞬間、ぎゅ、と目をつぶったからガレスの表情は見えないが、驚いているだろうことは叫び声でわかった。だが、その声に嫌悪感が含まれているかまではわからない。
長い沈黙が降りる。
金色に輝く、オーガンジーという透ける素材で仕立てられた、腰骨のあたりまでしか丈のないAラインのワンピース。いえ、胸元の同じ素材のリボンで結んであるだけだからワンピースとは言えないのかもしれない。動くたびにチラチラとおへそが見えてしまうもの。下は同じ素材で出来たパンティ。金糸の鳥と蔦の刺繍が、上手に胸の頂きや股間を小さく隠している。肩紐は細いフリルで、心もとないことに、その下に、コルセットは着けていない。
もう、ほぼ裸だ。
せめて透けて見える乳房を手のひらで隠したくなったが我慢した。
「わ、・・私っ、今夜、ガレスの元へ行こうとしていたの」
声が震える。ゆっくりと目を開けガレスを見た。
ガレスは両手で目元を覆っていた。そんなガレスが本当に愛おしくてさらに言い募る。
「ガレス、私、はしたなくて、ごめんなさい。でも、たった一度でいいから、好きな人にだ、抱かれたくて・・っ」
じわ、と目が勝手に潤んでくる。プライドにかけて泣き落としはしたくはないわ。
そっとガレスに近寄る。
緊張で強張る手を、ガレスの目を塞いでいる手に重ね、そっと外した。
「お嬢様、本気ですか?」
思っていたより強く見据えられどきん、と心臓が高鳴った。コクリとうなずく。
「もう、後戻りはさせませんよ?」
いつもとは違う低い声で言われ、あごを掴まれた。もう一方の手は後頭部に回される。
近づいてくる顔に、自然と瞼が閉じた。
啄むように下唇を何度もガレスの唇に挟まれ、少しずつ開いていった唇に、ガレスの舌が歯を割って入って来た。
「・・・ッ!」
舌に舌で触れられて、背筋を電流のようなものが、走った。足から力が抜ける私の腰をたくましい腕が支える。
さっきよりも密着した体に、心臓が痛いくらいドキドキして、しかも舌で口の中のあらゆるところを舐め回され、息が整わない。
こんなこと、夢みたい。ガレスと口付けをしている。気が遠くなりそう。──あら、現実的に、私ってば酸欠なのでは?
くたっ、と体を預けた私を、ガレスは軽々と抱き上げた。
「私の為にこんな装いを?」
私をそっとベッドに寝かせ、上にのしかかりながら聞いてくる。こんな装い、──そう言われ、ぼんやりしていた頭の中が、がつんと殴られたようにはっきりした。
「あ、これは、・・・変、だよね・・・?」
体がかあっ、と熱くなった。
「いいえ。とても似合っています。女神のように美しい。」
「ガレス・・・」
そういうガレスは神話に出てくる男神のように雄雄しく美しい。さっきからオネエ言葉があまり出てこないせいかしら。
胸がキュンキュンして、胸の頂きがツンと固くなった。
逞しく美しいガレスという男性に抱かれ、一つになりたいと強く思った。
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