指輪は鳥居でした

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 頬と頬を擦り合わせてくる風雅が、自分の欲と闘っているのがわかる。フウッ、フウッ、と荒い息を吐く風雅の背中から一瞬、真っ赤な光が立ち昇った。
 風雅の体の下で動かない体をなんとか動かし、自分の膝を抱え込み、開いた。

 「──風雅、オレの中に、・・・きて」

 そんな言葉が始まりだったと思う。
 風雅への罪悪感も、真白への罪悪感も、風雅が綺麗に流し去ってくれた。あとはもう、自分の欲望に忠実になるだけだった。

 ──障子を通して入ってくる外からの光が徐々に弱まり、宵闇が降りてくる。灯りの灯らない部屋は、急速に暗くなり始めたが、ベッドの上で獣のように絡み合いながら上になったり下になったりして、荒い息で喘ぎ合うオレたちにはあまり関係のないことだった。

 今、オレの中には、ずっぷりと風雅のイチモツがハマっている。風雅のそれは、あやかしだからなのか見たことがないほどに長大で、恐怖すら覚えたが、香油で少し解されただけでオレのそこは難なくその長大なものを受け入れた。

 「真白・・・っ!」

 風雅が、今までの飢えを満たすかのようにオレの名前を何度も呼び、腰を打ち付ける。その度に腹の中の奥の奥まで風雅が入ってくる。

 「あっ、あっ、・・そんなの、だめぇ、しんじゃうぅ」

 その度に体が勝手に中で暴れる風雅を締め付け、自分もたまらない快感を味わう。
 何度も閉じた瞼の裏に七色の光がスパークする。
 もう何度果てたのかわからないオレのモノは、媚薬の効果なのかまた固く起ち上がり、オレと風雅の腹の間で主張していたが、風雅が最奥で精を放った直後、ぴゅっ、と弾けた。
 
 「真白、・・・」

 体を抱き起こされ、ベッドに座る風雅に正面から抱えられる。荒い息が整わないオレを風雅は優しく抱きとめていた。

 「・・・真白」

 人界でのオレの18年はあっという間だった。だけど、風雅にとってはどうだっただろう。
 
 「・・・風雅、大好き」

 一途に真白を想い続けてくれた風雅に、たくさんの感謝と愛情を伝えたいのに、シンプルな言葉しか知らない自分がもどかしい。これが花束なら特大のものを作って贈れるのに。

 「──ありがとう、・・・大好き、だよ」

 そんなことを考えながらオレの意識はゆったりと沈んだ。




 目が覚めた。──が、目が開かない。抱かれながら、かなり泣いていた覚えがある。
 
 「ごめんな、久しぶりだったのに飛ばしすぎたな」

 風雅は謝りながら濡らした手ぬぐいを目の上にのせてくれた。
 
 “ううん、大丈夫”

 喉も痛めてしまったらしい。かすれ声だった。

 「これを」
 
 優しく抱き起こされ、コップを唇に当てられた。角度をつけられ少しずつ流れ込んでくる液体を、んく、んく、と飲む。蜂蜜水だった。

 “・・美味しい”
 
 呟くオレの髪を風雅がゆっくりと、何度も撫でる。
 あまりに気持ち良くて、風雅の胸にもたれてじっとしていた。

 「もう少し寝るか?」

 “──うん。風雅と一緒に”

 もう離れない。オレの愛しい大切な人。
 ぬくもりを感じながらオレはもう一度満ち足りた眠りに落ちていった。

 次に目覚めたら、美味しそうな匂いがしていて、自分がかなりお腹が減っていることに気付いた。

 「おう、起きたか。腹減っただろ?」

 風雅が、浴衣を羽織らせてくれて、しかも抱っこで食事の用意がされているテーブルまで運んでくれた。そのまま当たり前のように膝に乗せられている。

 「ふ、が、、だい、じょぶ、オレ、ひとり、で、すわれ、る、から」
 
 目も開くし、かすれ声も治っていたが、全身筋肉痛で、声を出すのも辛かった。

 「ははっ、大丈夫じゃなさそうだな」

 時間的に朝食なのか昼食なのかはわからないが、メニューは中華粥のようなものに小鉢が5品ほどあって、どれも体に良さそうだった。

 風雅が蓮華で粥をすくい、ふうふう、と冷ましたものを口もとに運んでくれる。それを雛のように口に含む。食べている間、風雅はそんなオレを愛しそうに見て、おでこに、ちゅ、とかするのだ。
 なんだこれは!!

 (あ、まーーい!!)

 風雅が、身悶えするほど甘甘だった。筋肉痛で悶えられないけど。

 「ふ、が、・・も、食べ、て」

 「ああ」

 やっと自分の口にも運んでくれたが、やっぱりオレ優先だ。

 「少し休んだら風呂に入るか?あの後、体を拭いただけだからな」

 「う、うん」

 あの後、とは“あの”後か。
 改めてオレはなんか、すごいことをイタしてしまったのでは、と思う。望んでしたことだけど、あまりにも急展開で、恥ずか死ぬ。

 「──真白、おめえの気持ちが定まるまで待とうと思っていたのに、こんなことになっちまってすまねえ。だが、このまま俺を受け入れてくれねえか。この先も、夫婦として一緒に在って欲しいんだ」

 「ふう、が」

 「愛してる。愛してる、真白。おめえがいなけりゃ、この世は闇よ。生きている意味なんてありゃしねぇ」

 昏い瞳でそんなことを言う風雅に抱き着いた。

 「オレ、も、離れない、からっ、そんな、っこと、言わないで。大、好き。愛してる。ずっと一緒、・・いるっ」

 筋肉痛にかまってる場合ではない。今、伝えないと!そう思い、懸命に話したが、やはり体にピシリと何度も走る痛みに言葉も跳ねてしまう。
 伝わったかな、と風雅を覗き込むと、赤みがかった茶色の瞳が潤んでいた。 
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