指輪は鳥居でした

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 ふわりと着地。
 赤い鳥居が幾つも連なっているのが見える。

 「すごいね、風雅!ひとっ飛びでここまで来た!」

 喜ぶオレに、風雅はちゅっ、と軽く頭にキスを落とした。
 途端、胸がきゅ、としてまだ抱きついていた身を起こした。
 
 「──わ、わぁ、鳥居がいっぱい。九十八あるか数えようかな」

 恥ずかしくて先に進む。──と、躓いた。
 後ろから風雅が受け止めてくれて、転びはしなかったけど、ようやくオレは自分の体調に違和感を感じた。
 なんか、熱っぽい?くらくらする?でも風邪とか、そんなんじゃなくて。

 「段差があるから気をつけろ」

 心配してくれる風雅にそのままぴとっ、と抱きついた。
 大柄な風雅を下から見上げる。

 「真白?」

 「・・・オレ、真白じゃない」

 「・・・真白?」

 「風雅の真白じゃない。──でもオレ、風雅が好き」

 はあ、吐息が熱い。
 やっと言えた。風雅の胸に体重を預けた。何故だろう、体の力が抜けていく。
 ──あれ?オレ今何を風雅に言ったんだっけ?
 頭に靄がかかったようにはっきりしなかった。

 「風雅ぁ、好きぃ」

 「真白、おめえ、体が熱くないか?」

 体?うん、熱い。中でも体の中心の、あそこが、・・・熱い。

 「──んぁっ、なにこれぇ」

 形を変え、固くなった自分の体の一部に気付き、密着した風雅の体から離そうと躍起になった。

 「あの娘っ子共、やりやがったな」

 「風雅ぁ・・・」

 考えがまとまらない。娘っ子共、って?のぞみちゃん、かなえちゃん、たまえちゃん、達のこと?よく、わからない。
 そんなことよりも。

 「んんっ・・、離してっ」

 風雅に抱かれているだけなのに、体がおかしかった。

 「んあっ、・・あっ、何ぃ?ぞくぞくするぅ」

 「大方、媚薬の類だろうよ。あの娘っ子共は御山で薬草を育てていたらしいからな。薬に精通しているのさ」

 変な気をまわしやがって、と言い放った。

 「び、やく?」

 左側がぽうっと光って、目をやると指輪が光っていた。

 「おう、ゴルゴ、余計な真似はするんじゃねえぞ。真白を鎮めるのは俺だけのお役目よ。おめえの役目は、皆に俺達が帰らないってことを伝えることだ」

 行け、と鋭く言い放った風雅にゴルゴの光はふっ、と消えた。指輪ごといなくなっていた。

 「・・あれぇ?」

 ずっと薬指に嵌っていた指輪がなくなると違和感がある。
 ぼーっと左手を見てたらその手を風雅に掴まれた。
 見上げると驚くほど風雅の顔が近くて、そのまま口づけられた。

 「・・・っ、んんっ」

 深い口づけ。
 口の中を丹念に肉厚の舌で撫でられ、体がびくびくと跳ねる。そんな体をしっかりと抱き上げられた。

 「もう少し辛抱してくれよ」

 そして、また跳躍。
 酔っぱらいのように思考も体も覚束ないオレを連れ、町へ戻った風雅は一軒のビルに入った。

 「緊急事態だ。部屋を貸してくれ」
 
 「おや、白丸のダンナ。って、真白様!」

 呼ばれて、薄っすらと目を開けて辺りを見回す。

 「わ、わ、真白様のイキ顔!?」

 ゴクリ、と生唾を飲み込む大きな音がそこかしこでしたような。

 「忘れろ。目を潰すぞ」

 「ヒイィィィ~!!」

 顔を風雅の首元に押し付けられた。痛い。
 ホテル、なのか。
 風雅は部屋の鍵を受け取るや、疾風のようにぐったりするオレを抱いたまま部屋に入り、オレをベッドにそっと下ろした。
 その時にはなぜか帯が解けていたようで、下ろされたと同時に着物が左右にはだけた。

 「──ぐうっ」

 風雅が変な声を出し、オレの体の上で身悶えする。

 「・・あっ!見ちゃダメ」

 思い当たるのはオレの股間。きっと紐パンを見たのだろう。手で覆い隠したいが体が思うように動かない。

 「これは、だって、オレ褌が上手くできなくて、だからノムさんが・・・」

 家令のノムさんが気を利かせて紐パンを買ってきてくれたのだ。

 「そうかい。ノムさんがおめえの股を見たってのかい。帰ったらじっくり話し合わねえとな」

 風雅の形相が鬼のようになる。

 「・・へっ?見てない、見てないよ!?」

 「いいや、頭の中で想像したにちげえねえ。万死に値する!──んだが、今はおめえとの時間だ。
 さんざん俺を煽った覚悟はいいかい?」

 つ、と指で紐パン越しにオレのムスコをなぞる。

 「ああっ!」

 「こんなに濡らして、もう達っちまったのか?」

 「・・・あ、だって、風雅が、」

 すごいキスをするから。
 それは言葉にできなかった。
 体がぞくぞくしっぱなしで、一度イッてしまった後もオレのそこは固く立ち上がっている。小さな紐パンから顔を出してしまっているのが恥ずかしすぎる。耐えがたい!

 「真白・・・」

 しゅる、と自分の帯も解き、風雅がゆっくりとオレに重なってきた。触れる肌と肌が、少しずつかかってくる重みが、愛しい。

 「風雅ぁ、好きぃ。・・・ごめんなさい」

 「何を謝るんだ」

 「風雅にも真白にも。・・・オレ、思い出せたら良いのに」

 そうしたら、なんの憂いもなく風雅と愛し合えるのに。

 「謝るな。おめえは真白だ。真白自身だ。おめえの姿が変わらなくても、人のままでも、俺はおめえを離さなかったさ」

 「風雅・・・」

 オレの姿がこんなに美しくなくても?人のままだとしても?

 ゆっくりと口づけが降りてくる。それはそのまま深くなる。

 ──そうだった。出会いは人の姿の真白だった。なのに風雅はオレを真白だと言って、抱っこしたのだった。

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