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しおりを挟む“ちょ”
“ちょー”
「ん?今しゃべった?」
正座したオレの膝のあたりに集まってる鳥居たち。大きさにばらつきはあるけど大体がゴルフボール大で、たまに縦長になったり形を変えながら柔らかくオレンジ色に光ってる。
「お母様、どうしました?」
「今、鳥居たちがちょうだい、って言ったような気がする。クッキー食べたいの?」
「私には何も聞こえませんでしたけど」
「・・・だが、真白の言う通りみたいだぜ。頷いてねえか?」
確かにオレの言葉にカクカクと鳥居たちの球体の上半分が揺れている。これは肯定の合図だともうオレにはわかっていた。
「うーん、食べさせていいものか・・」
鳥居たちが何かを食べてるのを見たことがないのだ。
「こいつらは鳥居から生まれたあやかしだ。つまり俺らと一緒なんだから食べれないこともあるめえ」
うーん、それもそうかと思うけど、この子達には口がない。というか、顔がない。どうやって食べるんだろ。
「大丈夫かな・・」
クッキーを小さく割って鳥居たちに近付けた。
“くっき”
“きっ”
「そうだよ。クッキーっていうお菓子だよ」
「お母様には鳥居たちの声が聞こえるんですね」
お蝶ちゃんが感心したように言った。
「鈴が鳴るようなかわいい声なんだ」
いいなあ~、私も鳥居たちとおしゃべりしたい!とお蝶ちゃんは羨ましがった。
おしゃべり、というほど鳥居たちと意思疎通ができているわけではないのだけど。鳥居たちはけっこう好き勝手に生きてる。というか俺で遊んでる。
と、一人の鳥居がぽっと両手を生やし、クッキーを受け取った。
と、ぱかん、と球体が半分に割れ、クッキーを一気に飲み込んだ。
「わ、良く噛まないと!」
驚いて声を掛けると、クッキーを食べた子が、ぽん、と弾けた。
「うわわ」
「・・うさぎしゃま。おいし、もっと」
一回り大きくなって、ついでに球体から二頭身のキューピー人形みたいになった鳥居がオレの指にしがみついて、可愛いくおねだりしてくる。
「「「・・おお!(まあ!)」」」
テッテレー《鳥居ハ進化ヲ遂ゲタ》
オレンジ色に発光しているのは変わらないが、顔には目鼻もちゃんとある。声もオレだけじゃなく、風雅とお蝶ちゃんにも届いているようだ。
「お母様!私もあげてみたいです!」
鼻息荒くお蝶ちゃんが近付いてきた。他の鳥居たちは姿の変わった仲間に動揺したのか、オレの膝の上で点滅しながら、縦に伸びたり横に伸びたりしている。
だが、お蝶ちゃんがクッキーを割ると、わらわら、コロコロとお蝶ちゃんの膝へと大移動を始めた。おい、待て。オレにしか懐かないんじゃなかったんかーい。
「はい、どうぞ」
一列に並んで順番待ちをしている良い子の鳥居たちに、お蝶ちゃんがクッキーを渡すと、
ぽん。「おいち」
ぽん。「もっとでちゅ」
などと、どんどんオレンジに光る手のひらサイズのキューピーたちが生まれ、可愛いらしくお蝶ちゃんのスカートをつまんでおねだりをする。
お蝶ちゃんはそんな鳥居たちにめろめろだ。
「──ふうむ。鳥居たちがお蝶に懐けば真白は一人になるな。そりゃいい。もう邪魔が入らねえってこった。フフ」
不穏に笑う風雅。その呟き、聞こえてるけどな。
それに──
「お前も食べる?」
左手の薬指に嵌まる指輪に声を掛けると、答えるように朱い石が瞬いた。
最強の鳥居がここにいるのだ。
「どうやって食べる?出てこれる?」
クッキーの欠片をかざすと、ぽうっとオレンジの光がクッキーを包み、消えた。
「食べたの?」
反応はない。無口な質だな。
──と。
指輪が強い光を部屋中に放った。
光は数秒で消え、指輪を嵌めていた左手を見ると、
「あれ?色が変わった?」
テッテレー《鳥居ハ進化ヲ遂ゲタ》
指輪に嵌まっていた朱色の石は、蜂蜜のようなとろりとした金色に変わっていた。
「おう、お前さん、いつまでそこに居座る気なんだい?」
風雅が形相を変えて指輪に向かい因縁を付け始めた。
指輪はうんともすんとも言わず。
「おめえには真白を連れてきてもらった恩がある。心底ありがてえと思ってる。だが、こっから真白を守るのは俺の仕事だ。おめえは仲間のとこに帰った帰った」
「・・・」
「だんまりかい?んじゃ、実力行使で行かせてもらうぜ!」
風雅がオレの左手を掴み、指輪を外そうとした途端、
ひゅ、ひゅん。
「──は?」
指輪から光線が何本か飛び、風雅の頬や服を浅く切り裂いた。
「か・・・!」
・・・っこいい!!
男の子なら絶対憧れるって、この攻撃!だが、風雅に悪いと思い、途中でセリフを呑み込んだ。
風雅はまさかの攻撃にぽかんとしている。
しかし、このクールさ、圧倒的な有無を言わせぬ攻撃。
“ゴルゴ”
指輪の鳥居の名前が決まった瞬間だった。
その後、鳥居たちはあげればなんでも食べるが、オレの手作りのものを食べた時だけ何かしらの成長をすることが判明。
ちょいちょい食べさせていたら言葉もしっかりし、徐々に体格も風雅に並ぶほど大きくなり。
そうして後の世で、白丸の九十九人衆(つくもしゅう)と、戦闘力で一目置かれるようになる。
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