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「ぐはっ!!」
鏡に映った美麗な自分の姿に血反吐を吐きそうになった。
和洋折衷の部屋のソファでちょっと寝転んだのが悪かった。鳥居たち(橙色に発光してる丸い奴ら)をお腹に抱っこしながら、ここの神社の成り立ちが書かれた冊子を読んでいたオレ。ちょっと疲れて寝転んだだけなのに。なんの罰なのこれ。
家具に嵌め込まれた細長い鏡に映るオレ。小作りの顔にまん丸のルビーの様な紅い瞳がきょんと見開かれてて可愛い。ぐは。
“ぐはー”
“ぐはー”
鳥居たちに真似されてる。
あやかしの世界へ来てから一週間。自分の美麗な姿には慣れる気が全くしない。
目が覚めて、初めて鏡を見た時の衝撃といったら!3Dのアニメかな、絶叫して頬をつねった。人外ですよ、マジで。いや、あやかしだから人外だけども!儚い美しさが泣ける。
この世の綺麗でキラキラしているものだけを集めてできているような美しさ。トイレ行かないでしょあなた、的な。
いや、行くからね、オレ。小も大もするから!
まるで呪いが解けるかのように姿が変わり、あれだけ人違いだと言い張っていたオレは、やはり皆が言うようにこっちの兎の真白さんだった。
──ようなのだ。
というのも、姿は変わったが、実は記憶が戻っていないからだ。こうして鳥居たちとくつろいでいる今も、人間の日向真白の記憶しかない。あと、どんな事ができるのかわからんが、力も戻ってはいない。
オレが姿を隠すことになった元凶が解決されないとダメなのかも、と女中頭のマリリンさんは言っていたが、元凶って?と聞くとわかりやすく目を逸らすからそれ以上聞けずにいる。
風雅も何か隠しているみたいだし。
ああ、もやもやする。
そしてこんなに綺麗なのにオレってば男だった。恋女房の真白は男だった。ぐは。
「お母様!入っていいですか?」
「うん。どうぞ」
廊下からお蝶ちゃんの声がかかった。
「というか、ここは、お蝶ちゃんの部屋なんだから自由に入ってきてよ」
そう、現在のオレはお蝶ちゃんの部屋で過ごさせてもらっている。
当初、風雅は腕の中で眠ってしまったオレをそのまま自室のベッド、つまり夫婦のベッドに寝かせたのだが、(その時に起きたことに関する記憶は抹消した)あやかしとしての記憶が戻っていないことが判明してからは、ここ、お蝶ちゃんの部屋で過ごさせてもらっている。やっぱりね、夫婦の部屋で過ごすのはちょっと。オレ的には夫婦でも何でもない初対面の人なので。
マリリンさんが客間を用意してくれようとしたのは白狐親子が秒で断った。オレを離れた場所には置きたくないそうだ。
風雅の部屋とお蝶ちゃんの部屋。二択ならもうこちらしかないだろう。悔しそうな風雅をフフンと見下したお蝶ちゃんが忘れられない。
まあ、そんなこんなで只今お蝶ちゃんと一週間ほど同居中なのだ。
18歳男子大学生と、二十歳の美少女、妙齢の男女が一つ同じ部屋。
ま~やらしいわね~、とはならない。
なぜなら美少女は男子大学生の娘だから。オレのほうが二つ歳下だがそうなのだ。
外見で言っても仲良し姉妹に見えるらしい(オレが妹側らしい。ぐは)から問題はないようだ。
相変わらずのカオス具合だがもう慣れた。慣れないのは鏡の中の自分と、──風雅への態度。
体の記憶、というものがあるのか、自然とやってしまうからよくわからないんだけど、困ったことに、夫婦だったからなのか、風雅にぴとっとくっつきたくなってしまうのだ。そして風雅はその流れで俺を抱っこする、と。うむ。非常にこっ恥ずかしい流れだ。
「お母様、お父様がお呼びです。神殿まで来てほしいとのことなので一緒に行きましょ」
「うん」
お蝶ちゃんはオレに母親としての記憶がないことはあまり気にならないのか、出会ってからずっと変わらずオレを母と慕ってくれてる。というかこの世界に慣れないオレのお世話をしてくれてる。
今も浴衣姿のオレにもう一枚浴衣を肩に掛けてくれている。これは袖を通すだけで前は開けておくらしい。というか、浴衣と思ってるけど浴衣ではないのだろうな、生地の肌触りが良すぎる。薄いピンク色のやけにつるんとした肌触りのものに透けてる素材の薄いピンク色のものを羽織る。なんか、こういう格好歴史の教科書に載っていたような。何時代だったかな、女性の服装で。お蝶ちゃんは普通にワンピースなんだけどね。オレも普通にズボンが動きやすいんだけどな。まぁ、深くは考えまい。
「神殿に小豆のたなかさんが来てるんです。きっとお母様に紹介したいのだと思います」
「そうなんだ」
「はい。とてもいいおじ様なんです」
オレの左腕に腕を絡ませ楽しそうに歩くお蝶ちゃん。記憶はないが、この笑顔を守らねばと強く思う。これが母の愛というものか。ちなみに鳥居たちはまたオレの髪をつたってロッククライミング中だ。たまに落ちてくるから右手は鳥居たちの為にお腹のあたりで待機している。
母は忙しい。
いや記憶ないけど。
鏡に映った美麗な自分の姿に血反吐を吐きそうになった。
和洋折衷の部屋のソファでちょっと寝転んだのが悪かった。鳥居たち(橙色に発光してる丸い奴ら)をお腹に抱っこしながら、ここの神社の成り立ちが書かれた冊子を読んでいたオレ。ちょっと疲れて寝転んだだけなのに。なんの罰なのこれ。
家具に嵌め込まれた細長い鏡に映るオレ。小作りの顔にまん丸のルビーの様な紅い瞳がきょんと見開かれてて可愛い。ぐは。
“ぐはー”
“ぐはー”
鳥居たちに真似されてる。
あやかしの世界へ来てから一週間。自分の美麗な姿には慣れる気が全くしない。
目が覚めて、初めて鏡を見た時の衝撃といったら!3Dのアニメかな、絶叫して頬をつねった。人外ですよ、マジで。いや、あやかしだから人外だけども!儚い美しさが泣ける。
この世の綺麗でキラキラしているものだけを集めてできているような美しさ。トイレ行かないでしょあなた、的な。
いや、行くからね、オレ。小も大もするから!
まるで呪いが解けるかのように姿が変わり、あれだけ人違いだと言い張っていたオレは、やはり皆が言うようにこっちの兎の真白さんだった。
──ようなのだ。
というのも、姿は変わったが、実は記憶が戻っていないからだ。こうして鳥居たちとくつろいでいる今も、人間の日向真白の記憶しかない。あと、どんな事ができるのかわからんが、力も戻ってはいない。
オレが姿を隠すことになった元凶が解決されないとダメなのかも、と女中頭のマリリンさんは言っていたが、元凶って?と聞くとわかりやすく目を逸らすからそれ以上聞けずにいる。
風雅も何か隠しているみたいだし。
ああ、もやもやする。
そしてこんなに綺麗なのにオレってば男だった。恋女房の真白は男だった。ぐは。
「お母様!入っていいですか?」
「うん。どうぞ」
廊下からお蝶ちゃんの声がかかった。
「というか、ここは、お蝶ちゃんの部屋なんだから自由に入ってきてよ」
そう、現在のオレはお蝶ちゃんの部屋で過ごさせてもらっている。
当初、風雅は腕の中で眠ってしまったオレをそのまま自室のベッド、つまり夫婦のベッドに寝かせたのだが、(その時に起きたことに関する記憶は抹消した)あやかしとしての記憶が戻っていないことが判明してからは、ここ、お蝶ちゃんの部屋で過ごさせてもらっている。やっぱりね、夫婦の部屋で過ごすのはちょっと。オレ的には夫婦でも何でもない初対面の人なので。
マリリンさんが客間を用意してくれようとしたのは白狐親子が秒で断った。オレを離れた場所には置きたくないそうだ。
風雅の部屋とお蝶ちゃんの部屋。二択ならもうこちらしかないだろう。悔しそうな風雅をフフンと見下したお蝶ちゃんが忘れられない。
まあ、そんなこんなで只今お蝶ちゃんと一週間ほど同居中なのだ。
18歳男子大学生と、二十歳の美少女、妙齢の男女が一つ同じ部屋。
ま~やらしいわね~、とはならない。
なぜなら美少女は男子大学生の娘だから。オレのほうが二つ歳下だがそうなのだ。
外見で言っても仲良し姉妹に見えるらしい(オレが妹側らしい。ぐは)から問題はないようだ。
相変わらずのカオス具合だがもう慣れた。慣れないのは鏡の中の自分と、──風雅への態度。
体の記憶、というものがあるのか、自然とやってしまうからよくわからないんだけど、困ったことに、夫婦だったからなのか、風雅にぴとっとくっつきたくなってしまうのだ。そして風雅はその流れで俺を抱っこする、と。うむ。非常にこっ恥ずかしい流れだ。
「お母様、お父様がお呼びです。神殿まで来てほしいとのことなので一緒に行きましょ」
「うん」
お蝶ちゃんはオレに母親としての記憶がないことはあまり気にならないのか、出会ってからずっと変わらずオレを母と慕ってくれてる。というかこの世界に慣れないオレのお世話をしてくれてる。
今も浴衣姿のオレにもう一枚浴衣を肩に掛けてくれている。これは袖を通すだけで前は開けておくらしい。というか、浴衣と思ってるけど浴衣ではないのだろうな、生地の肌触りが良すぎる。薄いピンク色のやけにつるんとした肌触りのものに透けてる素材の薄いピンク色のものを羽織る。なんか、こういう格好歴史の教科書に載っていたような。何時代だったかな、女性の服装で。お蝶ちゃんは普通にワンピースなんだけどね。オレも普通にズボンが動きやすいんだけどな。まぁ、深くは考えまい。
「神殿に小豆のたなかさんが来てるんです。きっとお母様に紹介したいのだと思います」
「そうなんだ」
「はい。とてもいいおじ様なんです」
オレの左腕に腕を絡ませ楽しそうに歩くお蝶ちゃん。記憶はないが、この笑顔を守らねばと強く思う。これが母の愛というものか。ちなみに鳥居たちはまたオレの髪をつたってロッククライミング中だ。たまに落ちてくるから右手は鳥居たちの為にお腹のあたりで待機している。
母は忙しい。
いや記憶ないけど。
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