銀髪の乙女は性別を偽ります

学園の日常

「少しは慣れたか？」

「はいオリバーさんのおかげで校舎内は迷わないと思います」

オリバーは普通科も魔法科も行き来するため、全てではないが主要となる教室は把握出来るようになった。
門番の人にも顔を覚えて貰う事も出来た。教師2日目の日にオリバーに頼まれた書類を魔法科から普通科に届けに行く際、通行証を持ってるにも関わらず止められてしまった。
教師専用の制服も着ていたのにも関わらず門番はルカを学生に見えたと言っていたのが懐かしい。

「オリバー少し良いか？」

本を数冊抱えて現れた男性にルカは目が釘付けになった。
白い長上着に身を包み、肩に流していた青色の髪がさらりと背中に落ちた。
オリバーと同じ長身の彼の頭の上に獣の耳がついていた。
獣人と呼ばれる種族だ。
見た目は人間と変わらないが能力は人とは違っていた。
筋力に優れている者、嗅覚に優れているもの、耳が優れている者、元となる動物により能力が変わる。
ルカは始めてみる獣人の耳が気になってしまい耳に視線が固定していた。
眼鏡の奥にある、黒曜石色をした瞳と視線が合う。
じっと見ていた事に気まずさを感じたルカだったが、ふわりと笑う彼に思わず見とれてしまった。

「君が新人教師のルカさん？」

「はい。ルカと申します。宜しくお願いいたします」

「私はジェームズと申します。基本は魔法を研究しながら生徒に魔法学を教えてるが、薬草にも詳しいから何か困った事があったら聞いて下さい」

「はい、ありがとうございます」

差し出された手を握ると、ふわりと良い香りがした。
香水なのか爽やかな香りはジェームズに合っていた。

「これから飯に行くが、ジェームズも一緒にどうだ？」

「では、お言葉に甘えて」

三人で食堂に来ると、学生もお昼時とあり混雑していた。
ちょうど空いていた奥の窓際に席を確保する。
この食堂は軽食から本格的なフレンチまで品揃えが豊富で、生徒、教師からも人気だった。

「ルカそれで足りるのか？」

「普通だと思いますが？」

オリバーのトレイには大きなステーキが2枚に山盛りのサラダとスープ、バケットは二本乗っている。自分のはサーモンとクリームチーズサンドイッチとスープだった。
確かにオリバーのと比べると少なく感じるが、彼が規格外なだけだと思った。

「オリバーが規格外なだけだよ」

同じ事を思っていたジェームズに親近感がわいた。
ジェームズのトレイも魚のムニエルとパンとスープが乗っていて、オリバーのと差が目立つ。
オリバーは身体を動かすのが仕事の為、身体を維持するためにもエネルギーが必要なのが分かるが自分の量が適正と思っている節があった。

「そうか？」

三人での昼はとても楽しかった。
オリバーからは学園の事、ジェームズからは学園から徒歩10分位にある森について説明して貰った。
学園はイリクが学園長となってから10年が経過していた。10年前には普通科はなかったが、普通科を創立させ一般市民、貴族を分け隔てなく教育する場を作ったイリクは生徒や教師から慕われているそうだ。ただ、時々問題行動があり周りを驚かせるらしい。
ジェームズからは森には色々な薬草があり、学園が管理しているので安全かつ種類が豊富らしく珍しい薬草も生えてると聞いたので、ルカは休みになったら行ってみようと決めた。