~assortment~

ゆうま

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屋敷の奥での秘め事

忍者の里

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ここは人が入ることのない森の奥深くにある小さな人里。
山々に囲まれ街道からは外れている所にとある大名に仕える忍者の里はあった。
本日は、新しい頭領が決まり頭領の屋敷では宴会が開かれていた。

夢は配膳をしながら本日の主役の男性に視線を向けた。
頭領となりこの忍者の里を引っ張っていく暁は遠くから見ても目立つ人物だった。
夕焼け色の髪と黒曜石に似た瞳。人懐っこい笑顔で昔から里の住人から慕われていた。
任務も失敗した事はない。素早い身の動きは敵に気付かれる事なく命を奪う。
仕事も的確で里の者に慕われている暁に夢淡い恋心を抱いていた。ただ見ているだけで良い淡く純粋な思い。


「夢、それが終わったら水を汲んできてくれ」

「はい」

夢は孤児だった。五歳の時、戦で荒れ果てた城の中で泣いていたのを前頭領の時雨に助けられた。何故城にいたのか記憶は全くなかった
年齢も推測でしかなかった。夢と名付けられてからはこの屋敷で下女として働かせてもらっていた。
周りの人は優しく、夢を虐げる事もなく何不自由なく暮らしていた。
忍者として身体を酷使する人達に少しでも恩返しが出来たらと夢は思っていた。

「よいしょ」

井戸から水を汲み上げ桶に入れていく。あまり重すぎると持てないので調整してはいたが、いざ持ってみるととても重かった。
夢は手と腰に力を入れゆっくりと歩いていると、手に持っていた桶が急に軽くなった。

「夢ちゃん」

「彬さま」

持って上げるね。と優しく微笑む男性は暁の補佐的存在だった。お互いを信頼し背中を預けられる頼もしい相方。暁と彬は歳も近く仕事やプライベートでも何時も一緒にいた。

「大丈夫です自分で持ちます」

彬から桶を奪おうとするが、交わされてしまい結局屋敷まで運んで貰った。

「ありがとうございます」

「ん、素直でよろしい」

頭を撫でられ、夢はとてもくすぐったかった。
孤児なので、兄妹とか家族とか分からないモノだったが、彼は常に優しくこんなお兄さんがいたら良いなと何度も思っていた。

「そういえば時雨さまの姿が見えないのですが」

「何処かで潰れてるかもしれないね、元頭領はお酒弱いから」

「確かに、探してきます」

パタパタと屋敷に向かい走る夢を見ながら、彬は冷たく笑っていた。夢が元頭領の名前を出した瞬間、彬の瞳は冷たく光ったのを夢は知らない。






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