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第壱章 おはよう、異世界
【第17話】とある結社の議事録
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真っ暗な部屋に巨大な丸テーブル。そして、椅子が7つ。
その椅子には異様な雰囲気を放つ7人が座り、ローブを纏った1人の人物が部屋の隅に佇んでいる。
暗さゆえ、お互いの顔を見ることは敵わず、声のみ聞き取ることが出来る。
ここはとある国の地下。『結社』と呼ばれる組織がアジトとしている場所である。
「それで、グラスゴー、例の面汚しはどうなった?」
上座に座る男が部屋の隅に向けて語りかけると、ローブの男──グラスゴーは気味の悪い声で返す。
「イッヒヒ、例の計画も放り出し、逃げ出しましてございます」
その言葉で場の空気がピリリと張り詰めた。
まるで、首筋に刃物を突きつけられたかのようなプレッシャーに、グラスゴーは冷や汗を流した。
「なんやぁ?まさか、失敗の方向をしにきただけやあらへんよな?グラスゴー?」
椅子に座る1人の男が、薄笑いを浮かべて問いかける。
「も、もちろんでございますです。かの面汚しの首はここに」
グラスゴーは、どこからか、布に包まれた物体を取り出してみせた。
「そういうことやあらへん。例の戦争に続き、今回も失敗。責任の取り方は考えとるんやろうなぁ?」
男が、バンっとテーブルを叩くと、そこを中心にして、亀裂が走った。
「まぁまぁ、グラスゴーも反省しているようですしぃ、今回は見逃してもいいんじゃないんですかぁ?」
甘ったるい声の女が宥めるように言う。
「は?お前さん、次席も低いくせにワイに口答えかいな。えろぉ偉くなったもんやな」
「あれぇ、この会議に七聖の次席は関係ないはずですよぉ。あれですかぁ?自分が万年3位なことにコンプレックスでも抱いているんですかぁ?」
「なんやと!もういっぺん、言うてみぃ!!」
男は立ち上がり、女に掴みかかろうとテーブルの上に乗り上げる。
対して、女も自分の傍に置いていた杖へと手をかける。
残った4人も各々が武器に手をかけた。
一瞬にして場は一触即発状態。あわや、戦闘になる寸前。
そんなところで、
「止めろ!七聖ともあろう者が見苦しい」
上座に座る男の一声で、全員の動きが止まった。
テーブルに乗り上げた男も、渋々自分の席へと戻る。
「血気盛んなのは結構だが、その怒りは我々の計画を邪魔する者へと向けて欲しい」
そう言う男の目には静かな怒りの炎が宿っていた。
「もしかして、覇王、なる人物のことですかぁ?その人は我々の調査で『いない』と結論づけられた筈ですがぁ」
「せやせや。数百年の間犬猿の仲だった、龍王と獣王を仲良ぉさせることの出来る人物なんて、存在するわけないやろ」
「…………その人物の検討がついたから、お前はここにいる。違うか、グラスゴー?」
上座に座る男に少し睨まれ、グラスゴーは震えながらテーブルの上に1枚の紙を差し出した。
「こ、この学園でございますです。ヴェイドを殺したのも、面汚しを逃がしたのもこの学園の生徒が絡んでいるとの諜報部からの報告でございますです」
震えるグラスゴーを見て、関西弁の男は鼻で笑った。
「ふんっ、たかだか学園の生徒にヴェイドが殺せるわけあらへんやろ。諜報部も耄碌したもんやなぁ」
「あらぁ、あなたのお気に入りのヴェイドも死んじゃったんですかぁ。『俺は次期七聖のヴェイドだ』とか言ってたのにすぐ死んじゃうなんて。ぷぷぷっ」
再び険悪なムードが漂い始めたので、上座の男は女を睨んでから発言する。
「それで、学園への侵入プランは?」
「第1席様のご命令通り、サーヴィス家の令嬢が決闘代理を募集しておりましたので、それに紛れ込む手筈でございますです」
「あらぁ?いいのぉ?確か、学園にはあまり手を出すな、って第1席様は言ってたわよねぇ?」
女がちらりと上座の方を見る。
「それについては解決済みだ。問題ない。それで……『第3席』ジュノー、その任務にはお前が行ってこい」
「はぁ!?なんで、ワイがわざわざそんなところに」
「これは命令だ。何より、この計画に失敗は許されん。ヴェイドを殺した犯人を殺すと共に、2回も失敗している『若き人々の血』も手に入れてこい」
「はぁ……まぁ、その学園の生徒を皆殺しにすればええっちゅうことやな?了解や、了解。ちゃちゃっと終わらせてきますわ」
その返事に、上座の男は満足気に頷いた。
「絶対に失敗するなよ?」
「誰に言うてんねん。あたりまえやろ」
「まかせたぞ。……では、これにて七聖会議は終了とする」
上座の男がパチンと指を鳴らすと、そこにいた人らの影は跡形もなく消え失せ、後に残ったのは椅子とテーブルのみ。
こうして、学園を揺るがす大事件の幕が切って落とされるのだった。
その椅子には異様な雰囲気を放つ7人が座り、ローブを纏った1人の人物が部屋の隅に佇んでいる。
暗さゆえ、お互いの顔を見ることは敵わず、声のみ聞き取ることが出来る。
ここはとある国の地下。『結社』と呼ばれる組織がアジトとしている場所である。
「それで、グラスゴー、例の面汚しはどうなった?」
上座に座る男が部屋の隅に向けて語りかけると、ローブの男──グラスゴーは気味の悪い声で返す。
「イッヒヒ、例の計画も放り出し、逃げ出しましてございます」
その言葉で場の空気がピリリと張り詰めた。
まるで、首筋に刃物を突きつけられたかのようなプレッシャーに、グラスゴーは冷や汗を流した。
「なんやぁ?まさか、失敗の方向をしにきただけやあらへんよな?グラスゴー?」
椅子に座る1人の男が、薄笑いを浮かべて問いかける。
「も、もちろんでございますです。かの面汚しの首はここに」
グラスゴーは、どこからか、布に包まれた物体を取り出してみせた。
「そういうことやあらへん。例の戦争に続き、今回も失敗。責任の取り方は考えとるんやろうなぁ?」
男が、バンっとテーブルを叩くと、そこを中心にして、亀裂が走った。
「まぁまぁ、グラスゴーも反省しているようですしぃ、今回は見逃してもいいんじゃないんですかぁ?」
甘ったるい声の女が宥めるように言う。
「は?お前さん、次席も低いくせにワイに口答えかいな。えろぉ偉くなったもんやな」
「あれぇ、この会議に七聖の次席は関係ないはずですよぉ。あれですかぁ?自分が万年3位なことにコンプレックスでも抱いているんですかぁ?」
「なんやと!もういっぺん、言うてみぃ!!」
男は立ち上がり、女に掴みかかろうとテーブルの上に乗り上げる。
対して、女も自分の傍に置いていた杖へと手をかける。
残った4人も各々が武器に手をかけた。
一瞬にして場は一触即発状態。あわや、戦闘になる寸前。
そんなところで、
「止めろ!七聖ともあろう者が見苦しい」
上座に座る男の一声で、全員の動きが止まった。
テーブルに乗り上げた男も、渋々自分の席へと戻る。
「血気盛んなのは結構だが、その怒りは我々の計画を邪魔する者へと向けて欲しい」
そう言う男の目には静かな怒りの炎が宿っていた。
「もしかして、覇王、なる人物のことですかぁ?その人は我々の調査で『いない』と結論づけられた筈ですがぁ」
「せやせや。数百年の間犬猿の仲だった、龍王と獣王を仲良ぉさせることの出来る人物なんて、存在するわけないやろ」
「…………その人物の検討がついたから、お前はここにいる。違うか、グラスゴー?」
上座に座る男に少し睨まれ、グラスゴーは震えながらテーブルの上に1枚の紙を差し出した。
「こ、この学園でございますです。ヴェイドを殺したのも、面汚しを逃がしたのもこの学園の生徒が絡んでいるとの諜報部からの報告でございますです」
震えるグラスゴーを見て、関西弁の男は鼻で笑った。
「ふんっ、たかだか学園の生徒にヴェイドが殺せるわけあらへんやろ。諜報部も耄碌したもんやなぁ」
「あらぁ、あなたのお気に入りのヴェイドも死んじゃったんですかぁ。『俺は次期七聖のヴェイドだ』とか言ってたのにすぐ死んじゃうなんて。ぷぷぷっ」
再び険悪なムードが漂い始めたので、上座の男は女を睨んでから発言する。
「それで、学園への侵入プランは?」
「第1席様のご命令通り、サーヴィス家の令嬢が決闘代理を募集しておりましたので、それに紛れ込む手筈でございますです」
「あらぁ?いいのぉ?確か、学園にはあまり手を出すな、って第1席様は言ってたわよねぇ?」
女がちらりと上座の方を見る。
「それについては解決済みだ。問題ない。それで……『第3席』ジュノー、その任務にはお前が行ってこい」
「はぁ!?なんで、ワイがわざわざそんなところに」
「これは命令だ。何より、この計画に失敗は許されん。ヴェイドを殺した犯人を殺すと共に、2回も失敗している『若き人々の血』も手に入れてこい」
「はぁ……まぁ、その学園の生徒を皆殺しにすればええっちゅうことやな?了解や、了解。ちゃちゃっと終わらせてきますわ」
その返事に、上座の男は満足気に頷いた。
「絶対に失敗するなよ?」
「誰に言うてんねん。あたりまえやろ」
「まかせたぞ。……では、これにて七聖会議は終了とする」
上座の男がパチンと指を鳴らすと、そこにいた人らの影は跡形もなく消え失せ、後に残ったのは椅子とテーブルのみ。
こうして、学園を揺るがす大事件の幕が切って落とされるのだった。
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