上 下
6 / 11
怒の話

コンビニに棲む鬼

しおりを挟む
私がシングルマザーになったばかりの職場でムカついた話をします。

当時の子供たちの年齢は2歳と4歳。
保育園に入園したばかりでした。

私は某コンビニのパートをフルタイムで生計を立てていたのですが、
その勤務先の女性オーナーの人格が最悪だったので
吐き出さずにはいられません!

乗車利用客の多い、駅前の店舗。

オープニングスタッフからこの店舗で仕事をしていた私は
すぐにリーダーを任せられ、
店舗管理や新人の教育など
ほぼ全般を受け持つこととなりました。

ひとり親世帯ということもあり
子供はふたりともすぐ保育園に入園できたので
私は日々、業務に励みました。


……が。
17時半の定時に退勤出来るのは稀で
ほぼサービス残業。

保育園を延長してもらって19時半ギリギリのお迎えになってしまうことがしばしば…。

「いつもさいごで、かなしいよ」

子供たちの寂しそうな顔を見る度にやるせない気持ちで苛まれる日々…。


働きに見合わない給料で不満が爆発しそうな時、
いくつか本当に腹立たしい出来事がありました。

もちろんオーナーに対しての怒りです。


ひとつは従業員に店内で罵声を上げて平手打ちをしたこと。

ほんの些細なミスでした。
バックルームで注意すればいいものを
よりにもよってお昼の真っ只中!
店内は100人近くいたので、
お客さんもかなり驚いていました……。


もうひとつ。

レジの誤差が出た時はその時間帯に入っていた者たちが支払う。

罰金として例え1円だとしても、
一回につき当事者は500円。
ミスしやすい人はお給料がかなり少なくなっていてかわいそうでなりませんでした。

シフトに入る頻度が高いと罰金を払う率が高くなるのですから。


そして、さらにもうひとつ。

ある日の朝、私は胃腸の激痛に襲われ、
高熱もあったのと身動きとれないこともあり
救急車を呼ぶつもりでいました。

その前にオーナーへ電話をかけ、
休む旨を連絡したのですが…
予想もしなかった言葉を返されたのです。


「代わりのシフトに入る奴を探してから連絡してこい!」

……。

唖然として、時が止まった感覚になりました。
大丈夫?の一言もなかったのです。

その瞬間、痛みより怒りで腸が煮えくり返りました。


「ああ、そうですか。すぐ探して連絡し直します!」

ブチっと電話を切ってやりました。


そして、仲良くしているバイトくんに連絡すると……。


「腹立ちますね!あのババア!
僕、大学休んでシフト代わりますから、成瀬さんはすぐ救急車を呼んでくださいね!
お大事にしてください」

バイトくんの優しさに甘えて、
彼にシフトを頼みました。

再度、ババアオーナーへ電話します。

「おつかれさまです。代わりにAくんが入ってくれることになりましたので…」

もう意識が朦朧もうろうの中伝えると

「あ、そう」

その一言で電話を切られたのです。


私は救急車の中で悔し涙が止まりませんでした。


「鬼ババア!天罰くらえ!」

心の底から願いました!



数年が過ぎ、私は再婚するという嘘をつき、退職しました。

もちろん、労いの言葉もろくにありませんでしたよ。


なんで、こんな鬼ババの店に数年働いていたか
不思議に思うでしょう。


前記のAくんをはじめ、
私を慕って一緒に頑張ってくれていた仲間たちがいたからです。

特に大学生たちと仲良くさせてもらってたので、
彼らか卒業するのと合わせて退職しました。


常時、バイト募集はかけているのですが、
オーナーの評判の悪さは知れ渡っていたので応募も少なく、
採用されてもすぐ辞める子が多かったのです。

当たり前ですよね。

鬼ババにとっては痛手でした。
人手が一気に足りなくなったのですから。


近所にライバル店が3店舗できたのもオーナーの頭を抱える要因でした。

ざまあみろです。


でも、たったひとつだけ鬼ババに感謝していること。
それは…


「かけがえのない出逢いをくださり、ありがとうございました」




※この「コンビニに棲む鬼」は今後
加筆後、別作品として投稿する予定です。


しおりを挟む

処理中です...