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番外編②ロイヤル編☆王妃よ、花がほころぶように笑え

【 最終話】甘い刑罰

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 カトリーヌは目をぎゅっと瞑り、きつく唇を引き結んでいた。ロアンは見慣れた妻の身体を愛撫する。染みひとつない白い肌に、強く吸い付き跡を残していく。
 しかし、彼女は硬直を解かない。両手を握り締め、まるで磔にされたように自らの動きを封じていた。
 淡い桃色の蕾を指の腹で撫でれば、ぐぬっと色気のない唸り声が聞こえる。そればかりか眉間に深く皺を寄せ、奥歯をギリギリと鳴らした。

「おい、カトリーヌ、いつまでそうしているつもりだ。言っておくが抵抗しても無駄だぞ。却ってお前が辛いだけだ」
「ふぐっ、て、抵抗はしておりません。陛下のお好きなようにして下さいませ!」
「とても受け入れているようには見えないが。私とて無理やりするのは本意ではない。せめていつも通りにしてくれたら良いのだが」
「ですがっ……これは、罰でありますので!」

 ロアンは首を傾げる。そして、真面目すぎるために激しくズレてしまった彼女の思考を察した。

「快感を得ては駄目だと考えたわけか」
「だって、罰ですので……!」

 思わず吹き出し、硬い眉間を指で押さえる。

「真に面白い女だな、お前は」
「お、面白くなどありません!」
「私にとって、お前ほど面白く可愛い女はおらぬのだが。今更他の者を娶るのも面倒だしな」

 指の下の筋肉が緩み、深い翠の瞳が現れた。彼女はロアンを見つめ、唇を震わせながら訊ねる。

「そ、側室に降格では……」
「いや、私の妃は一生お前のみと定めた。神の御前でそう誓ったしな。お前もそうであろう。そもそも離縁の申し出も受理するつもりなどなかった」
「そ、そんな、私を見逃すなど、非難を受けることは必至、陛下の評判も下がってしまいます!」
「お前は私を見くびっているようだな。そのような事はどうとでもなるのだ。むしろ、これに乗じて国民人気を上げることだとて可能だ」

 カトリーヌはぽかんと口を開け、ロアンを見上げた。

「いいぞ、カトリーヌ。その調子で色んな顔を私に見せてくれ」

 頬を指で擦れば、彼女はくすぐったそうに目を細める。

「心のままに怒り、泣き、笑え。偽りない心を語り、甘えるのだ」
「……私には難しいです」
「分かっている。お前は長く心を凍らせてきたようだからな。ゆっくりでいい、時間はたっぷりある。死が分かつまで、私が傍にいてやろう」
「が、がんばりばずビッ」

 再び涙を流し鼻水をすすり始めた彼女の顔を、シーツで拭う。

「ぎ、ぎだないでず、へいかっ」
「別にいいだろう。どうせ今から色んな物に塗れるのだから」
「はっ?なんと?」

 戦慄く可憐な唇を舐め上げ、そっと囁く。

「いいから、まずは快楽に喘いで鳴け、カトリーヌ。期待しているぞ」


 力が抜けた太腿を押し上げ、顔を埋める。膨らんだ粒をチロチロと舌先で舐めれば、頭上から子猫のような鳴き声が聞こえた。

「ふん、にゃあっ、陛下っ、そこはもうやめてください」
「やめぬ。罰だと言っただろう。気をやるほど昂めてやるから覚悟しろ」
「はぁぁぁぁっ、この鬼畜っ」
「いいぞ、もっと言え」

 粒をデロデロと舐め回しながら、ヒクヒクと痙攣する蜜壷に指を入れ、浅いところを擽る。

「あ、あ、もうっ、ああっ」
「どうしたカトリーヌ、気持ち良くないか?」
「くそっ、この、腹黒仮面野郎ーーーーっ」
「口が悪すぎるな」
「あ、あなたが本音で語れと言ったんでしょうがっ」

 ロアンは身体を起こし、荒い息を吐く妻の額を撫でた。

「それは本音ではないだろう?」

 涙を滲ませる瞳を覗き込み、ゆっくりとした口調で促す。

「どうして欲しいのだ?カトリーヌ」

 カトリーヌはパチパチと瞬きすると、眉を寄せた。ロアンは形の良い胸を掴み、ゆっくりと愛撫する。半開きになった唇を啄みながら、そっと蕾を撫でた。ん……と声を漏らし、彼女が目を細めて顎を上げる。

「気持ち良いか」
「……」
「カトリーヌ答えよ」

 彼女は再び目を閉じると、躊躇いながらも聞き取れぬほどの小さな声で答えた。

「はい」
「で、どうして欲しい?」
「……お慈悲を下さい」
「よく分からんな。はっきり申せ」

 カッと目を見開いたカトリーヌは、真上にあるロアンの顔を睨みつけた。ロアンは眉を上げ、煽るように笑みを浮かべる。

「言えぬのか?」

 彼女はぐぬぬと唸った後、不貞腐れたように呟いた。

「……挿れてください」
「は?なんだって?聞こえんな」
「勃起した陰茎を穴に突っ込んでください!」
「実に直接的な表現だな」
「もう準備万端どころか疼いて苦しいんです!早く突っ込んで何度も出し入れして奥まで突いてください!」
「分かった分かった」

 ロアンは彼女の頭を抱き込み、宥めるように撫でる。

「そして、中に陛下の子種をください」

 腕の中から聞こえるくぐもった声に、動きを止めた。内側を覗けば、濡れて歪んだ顔がある。
 相変わらずの不器用。
 しかし、ロアンがこよなく愛する妻の笑顔だ。

「ああ、いっぱいやろう。涸れるまで付き合ってもらうぞ」
「は?え?涸れるまでとは……」

 ロアンは妻から放たれた疑問符を無視し、白い脚を肩に担ぎあげた。甘く香る蜜壷に狙いを定め、己の剛直を突き挿れる。浅い所まで一気に、後はゆっくりと腰を進めた。白い身体が艶めかしくよがる。それを食い入るように見つめながら奥を突いた。

「あっ、陛下っ」
「いいのか、カトリーヌ」
「はあっ、いいです!気持ちいい!」
「もっとか?激しくして欲しい?」
「はいっ、ナカを擦ってくださいっ、もっと、あああっ、いいっ、気持ちいいっ、陛下っ」

 柔らかくもきゅうきゅうと締め付ける膣を何度も突き、擦り上げれば、彼女が嬌声を上げながら乱れる。初めて晒すその淫らな姿に、ロアンは激しく興奮していた。

「いいぞ、カトリーヌ、もっと鳴け!」
「あ、あ、ああっ、いいっ、いやもうっ、好きっ、好きです陛下ぁっ」
「クッソ可愛いなこやつめ!」

 腰を盛んに振り、蜜を飛び散らせて打ち付ける。角度を変えグリグリと壁を擦れば、彼女は高く声を上げて手足を震わせた。極限まで膨張し滾る雄芯が、波打つ膣にきつく絞られる。ロアンもまた限界を迎え、自らに射精を許した。
 奥に差し込んだ陰茎の先から勢い良く子種が放たれ、愛しい妻の子宮へと注がれる。
 ロアンは恍惚としながら、大きく息を吐いた。

 そして、ふと、思う。
 あの復讐劇。してやられたと思ったが、お陰でカトリーヌと心を通わせることが叶った。
 反王制派を一網打尽にするきっかけも掴めたし。

 つまり……一石二鳥だな。

 ロアンはにんまりと笑う。


 己を引き抜き、蜜と白濁まみれのまま彼女の横に横たわった。しっとりと温かい身体を胸に抱き寄せれば、彼女はいつものように頬を擦り寄せる。

「陛下、大好きです。愛しています」

 素直に心を告げる妻の背中を撫でる。胸が締め付けられ、痛いほどだ。これほどの愛しさを誰かに感じるのは、初めての経験である。
 溢れ出る気持ちのまま、彼もまた妻に告げた。

「私も愛している」

 絶えず仮面を被る似た者同士の夫婦だが、お互いの前でだけは仮面を外そう。
 このかけがえのない時間があれば、きっと長く己を保っていられるだろう。

 この国を次代に引き継ぎ、共に白髪になる頃には、カトリーヌも上手く笑えるようになるだろうか。

 それはきっと、例える花が見当たらないほど美しいに違いない。


 ロアンは瞼を閉じる。

 そして、いつか訪れる未来を夢見るのだった。



『王妃よ、花がほころぶように笑え』
 おしまい
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感想 25

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みんなの感想(25件)

ぱら
2023.04.03 ぱら

やっぱりそっくりな姉弟だなぁ。
(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷̥́ ᵕ ᵒ̴̶̷̣̥̀⸝⸝⸝)

お姉ちゃんが真面目過ぎて可愛い。
(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷̥́ ᵕ ᵒ̴̶̷̣̥̀⸝⸝⸝)

すなぎ もりこ
2023.04.03 すなぎ もりこ

二人とも可愛いよねぇ
放っておけない、王様とゲルダ。
お互いの伴侶について語り合う場面もあったかもしれません。
惚気バトル。

解除
はらり𓃠
2023.04.02 はらり𓃠

番外編、カトリーヌに涙腺持ってかれちゃいました😭

陛下もカトリーヌ姉さんもお互いに素を出せるようになって良き夫婦になっていくんですねぇ( ˊ꒳ˋ ) ♪*・゚

すなぎ もりこ
2023.04.02 すなぎ もりこ

ありがとうございます!
カトリーヌはずーっと良い子の仮面を被り、復讐のために心を殺してきたんですね。彼女の中には、きっと小さな女の子が隠れているんだろうなぁ、と推測して作ったお話です。
お互いが良き理解者となり、生涯仲睦まじく過ごしていくでしょう!

解除
よしこちゃん

まさか、ボッコチーヌ様が代々語り継がれるとは‼️!!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚

すなぎ もりこ
2023.03.28 すなぎ もりこ

初代ですからね!
二世や三世もいたと思われます。
ポッコチーヌ家系図……見てみたい。

解除

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