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ポッコチーヌ様のお世話係
旅立つヴードゥの鳥④
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未だ状況が呑み込めず、ただマクシミリアンに手を引かれ従うゲルダだったが、向かう先に停まる上等な馬車が目に入り、おずおずと訊ねる。
「あれに乗って行くのですか? ……勿体ない」
「王都まで五日はかかるからな、陛下から丁重に送り届けるよう仰せつかっている」
「でも……」
「断っても良いが、御者はせっかくの仕事をキャンセルされて当てにしていた収入を失うな」
ゲルダはぐっと言葉につまった。
「ちなみに宿もすべて手配済みだ」
「ど、どうしたんですか? やけに手際が良いですね?」
マクシミリアンは握った手に力を込めると、首を傾げてゲルダを覗き込む。ブロンドの髪がサラサラと流れた。
「当たり前です。俺は副団長の側近ですから。これからは全力でサポート致します」
「ひぃ……止めて、止めてください!」
「副団長のお傍を離れません。身の回りからすべて俺がお世話します」
吐息混じりの美声が耳元に囁く。ゲルダは縮こまりギュッと目を瞑った。
「お、恐れ多いですぅ~」
「ゲルダから貰ったものを返すだけだ……いや、俺がしたいからするだけだ」
「私には世話など必要ありません。団長の手を煩わす訳にはいきません」
「俺はもう団長ではない。側近だが、ただの騎士だ。俺のことはマクシミリアンと呼べばよい。呼んでほしい」
「わ、私に副団長など務まるとは思えません」
「何故だ?シャンピニだから?女だから?前例がないからか?」
「そ、それは……」
「俺はお前ほど美しく強い者を知らない。お前なら先駆者となれる。この国を変えて見せろ。俺にその様を見せてくれ」
ゲルダは呼吸を止め、至近距離にあるその顔を見つめた。相変わらず天使のように無垢な美しさだ。
けど、どこか違う。以前あった不安定さは消え去り、突き抜けたような清々しさと力強さを感じる。
そして、澄んだエメラルドの瞳に写るのは……
「もちろん、俺が常に傍に居てお前を支える。どんな障害も悪意も退けて見せよう」
マクシミリアンは握った手を口元に近づけ、サーモンピンクの可憐な唇で触れる。
ゲルダは跳ねる鼓動を抑えるべく、胸にもう片方の手を当てた。
「それが俺の望みで夢だ。俺と共に空を飛ぼう!ゲルダ!」
その瞳に写るのは真っ青な空。
どこまでも高く広く、希望に満ちた、自由な世界だ。
ゲルダは溢れる涙を止めない。
感情を解放し、愛する存在に抱きついた。
マクシミリアンの逞しくも優しい腕がしっかりと受け止め、甘やかすように髪を撫でる。
周囲の人々が囃し立てる。
オクトパール人もシャンピニもフィルド人も、道の真ん中で抱き合う二人を祝福した。
それは、とても美しく尊い光景で。
晴れ渡る空と共に、目にした人々の心に深く、長く、留まったという。
「あれに乗って行くのですか? ……勿体ない」
「王都まで五日はかかるからな、陛下から丁重に送り届けるよう仰せつかっている」
「でも……」
「断っても良いが、御者はせっかくの仕事をキャンセルされて当てにしていた収入を失うな」
ゲルダはぐっと言葉につまった。
「ちなみに宿もすべて手配済みだ」
「ど、どうしたんですか? やけに手際が良いですね?」
マクシミリアンは握った手に力を込めると、首を傾げてゲルダを覗き込む。ブロンドの髪がサラサラと流れた。
「当たり前です。俺は副団長の側近ですから。これからは全力でサポート致します」
「ひぃ……止めて、止めてください!」
「副団長のお傍を離れません。身の回りからすべて俺がお世話します」
吐息混じりの美声が耳元に囁く。ゲルダは縮こまりギュッと目を瞑った。
「お、恐れ多いですぅ~」
「ゲルダから貰ったものを返すだけだ……いや、俺がしたいからするだけだ」
「私には世話など必要ありません。団長の手を煩わす訳にはいきません」
「俺はもう団長ではない。側近だが、ただの騎士だ。俺のことはマクシミリアンと呼べばよい。呼んでほしい」
「わ、私に副団長など務まるとは思えません」
「何故だ?シャンピニだから?女だから?前例がないからか?」
「そ、それは……」
「俺はお前ほど美しく強い者を知らない。お前なら先駆者となれる。この国を変えて見せろ。俺にその様を見せてくれ」
ゲルダは呼吸を止め、至近距離にあるその顔を見つめた。相変わらず天使のように無垢な美しさだ。
けど、どこか違う。以前あった不安定さは消え去り、突き抜けたような清々しさと力強さを感じる。
そして、澄んだエメラルドの瞳に写るのは……
「もちろん、俺が常に傍に居てお前を支える。どんな障害も悪意も退けて見せよう」
マクシミリアンは握った手を口元に近づけ、サーモンピンクの可憐な唇で触れる。
ゲルダは跳ねる鼓動を抑えるべく、胸にもう片方の手を当てた。
「それが俺の望みで夢だ。俺と共に空を飛ぼう!ゲルダ!」
その瞳に写るのは真っ青な空。
どこまでも高く広く、希望に満ちた、自由な世界だ。
ゲルダは溢れる涙を止めない。
感情を解放し、愛する存在に抱きついた。
マクシミリアンの逞しくも優しい腕がしっかりと受け止め、甘やかすように髪を撫でる。
周囲の人々が囃し立てる。
オクトパール人もシャンピニもフィルド人も、道の真ん中で抱き合う二人を祝福した。
それは、とても美しく尊い光景で。
晴れ渡る空と共に、目にした人々の心に深く、長く、留まったという。
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